『世界は時折、嘘をつく』
   壊れかけの人形    
 
 2.壊れかけの人形

 ひとみは一人、狭い部屋でソファーに
腰を掛け、窓の外を眺めていた。
(あぁ〜、なんであんな約束したのかな?)

 5分程前に鈴木の提示した弟の解放の
条件は、少女にとって全く予想もしないもの
だった。

「条件?」
「あぁ〜条件だ。それは・・・この部屋から
あと2時間、絶対に一歩も出るんじゃない」

 正直に言って、ひとみは笑ってしまった。 
(なぁ〜んだ、それくらい簡単よ)
 もっとイヤで理不尽なことを言われると
思っていた身からすると、お安い御用だ。
「分かったわ、2時間ここに座ってれば・・
いいのね?」

「ただし、一歩も出るんじゃないぞ。俺は
ドアの外で見張っとくからな!」
 そう捨てゼリフを残して、鈴木はドアの
外に消えた。

(私を子供だと思ってバカにしないでよ)
冗談まじりに唇を尖らせ、そう思いながら、
ひとみは、いつしか額に汗を感じていた。
 2月半ばで少し暖かくなったにしても、
妙に暑苦しい。空気を入れようと窓に手を
かけたが鍵が堅くて開かない。しかたない、
着ていたクリーム色のチョッキを脱ぎ、
白いブラウスとチェックのスカートだけに
なった。

(・・・・・それでも暑い!!)
 もうそれ以上、脱ぐことは出来なかった。
(それに喉も渇く・・。)目の前にあった
ペットボトルのお茶を無造作に一気にグイッ
と飲み干した。

 少女は知らなかった。それに何が入って
いたのかを・・・・。そう彼女に少しでも、
人を疑う心があれば・・・・。

 
 異変は突然、訪れた。
(なんか、おなかの下が重いなぁ〜)
 そして、急にモジモジと太股を擦り合わせ
周囲を落ち着きなく見回した。

(こまったなぁ〜どうしょう、こんな時に)
 息遣いもしだいに荒くなり、座ったりまた
立ったり、ソファーの周りをグルグルと廻り
始めた。

(ハァ〜・・ほんとにどうしよう、困ったな
おトイレに行きたくなってきちゃった・・・。
・・まぁ、トイレくらい行かせてくれるよね)

 ひとみは静かに決心した。

 入り口のドアを軽く叩き、
「あの〜・・・・トイレに行きたいだけど
いいでしょ?」と聞いてみた。

 しかし、返事は思いがけず冷く、
「だめだ、約束しただろう?その部屋を
絶対に一歩も出ないって。」

「そ、それとこれとは話は別よ。なによ
トイレくらい、いいじゃない!」

 しばらく、不毛な押し問答が続いたが
まったくらちが開かず、その間も少女は
自分の限界と戦い続けていた。

「ハ〜〜ハァ〜・・もぉ〜いい加減にしてよ
あぁ〜・・あ・・も、漏れちゃうよぉ〜」

 涙声で叫ぶ少女の言葉に、待ってましたと
「いいじゃないか、そこでしろよ。」
男はつっぱねた。

(この男、頭おかしいんじゃない。)
少女には男の言葉が全く理解できなかった。

「もぉ〜〜冗談は止めてよ・・・お願い」

 なおも食い下がる少女に、
「あのさぁ〜人にもの頼むんだったらな、
まず、そのタメ口やめろや。」

 もう口から何かが出そうなくらい限界を
感じてる少女は、作戦変更で取り合えずは、
この男の言いなりになった振りをしようと
考えた。

 少し大げさ気味に、
「お、お願いもう許して・・・、あなたの
言うことは何でも聞きます、だから、
ここから出して下さい。」
 そう言うしかなかった。

 鈴木は「分かればいいんだ、分かれば。」
と言いながら勢いよくドアを開けた。
 歯を食いしばり無言で傍らを、トイレに
向かって走り抜けていく少女に満身の笑みを
男は隠せなかった。

 廊下にトイレの水音だけが長く響く。

 少女は知っていたのだろうか?
このトイレに隠しカメラがあったことを。
それも頭上と正面に合わせて2台も・・・。

 そして、知るだろう。その映像にどんな
利用価値があるか、ということを・・・。

 時計の針は午後4時を指していた。

 


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