『世界は時折、嘘をつく』
   プロローグ    
 
 1.プロローグ(∂)

 壊れかけの薄汚れた廃ビル、タバコの紫煙
くわえタバコの男。

「あなたの目的は何なの!」
少女は吐き捨てるように目の前に座っている
男に問いかけた。

「おいおいそんな恐い顔するなよ、
ひ・と・み・ちゃん。」
 男はうすら笑いを浮かべタバコを灰皿で
消しながら、煙の中の少女に思いを巡らせ
ていた。
 ーーー藤原ひとみ12才、小学6年。
兄弟は一つ違いの弟が一人、あとは父と母の
四人家族・・・。
 髪は肩より少し長いから・・とセミロング
ってやつか。まだまだガキだと思って嘗めて
かかると、今みたいに大人のような口をきき
やがる。
 それにこんな低めのソファーに座ってると
かわいい生足がよ〜く見える。へへっとぉ〜
そんなもん見せられたんじゃ、思わず手を
延ばしたって罰は当たんねぇよなぁ〜ーーー

 そんな男の悪意に満ちた嘗めるような視線
を感じながら、ひとみはもう一度問いかけた
「それにあなたはいったい誰?名前だって
まだ聞かさ・・・」
「あっこれは失礼、えーと・・まぁ〜鈴木と
でも呼んでくれ。」
(どうせそんなものウソに決まってる。)
そう思いながらも、ひとみは質問を続けた。
「では鈴木・・・さん、あなたの目的は一体
何?。それに弟の康太はどこにいるの、無事
なんでしょうね。」
 鈴木はやけにあっさりした口調で答えた。
「安心しな弟は無事だ。お前が変な気さえ
起こさなきゃ今すぐ返してやる。」
「だったら早く康太に会わせて!あなたの
ことは警察に言ったりしないから。」
「まぁまぁそんな焦るな。もう少し俺の話を
聞けよ。」
 一瞬の沈黙のあと、鈴木は楽しい悪戯を
思いついた子供のように、
「た・だ・し・それには一つ条件がある。」
「条件?」
「あぁ〜条件だ。それは・・・」

 壁の柱時計が三時の時報を告げた。

         @ 

 同じころ、ひとみの家の隣に建つアパート
通称「あけぼの荘」からいかにも眠たげな男
が一人出てきた。
「いやぁ〜管理人さん。どうもおはようござ
います。」
「おはようございますって・・いま何時だと
思ってるんですか鳴海さん。」
 藤原幸恵は半ば呆れ顔でその若者、
鳴海幸太郎に挨拶を返した。 
 より堅実なこれからを考えてアパート経営
を始めてみた彼女も、変人ぞろいの住人の中
でも一番の変人に頭を抱えていた。
 でもあまりに人の良さそうなその笑顔を
見ていると、いつも何も言えなくなった。
「いや、あんまり明るいから目を覚ましたら
こんな時間になっちゃって参ったなぁ〜。」
 大家である彼女も鳴海の正しい職業をよく
知らなかった。でもとりあえず毎月の家賃を
ちゃんと払ってくれてるので文句も言えず、
人当たりも良いこの若者を何となく放っては
置けないのであった。

「そんなことより、うちのひとみと康太を
見かけなかった?」
 幸恵は鳴海なんかより、もっと気がかりな
ことを思い出した。 
「えっ二人ですか・・・さぁ〜見かけません
でしたけど、どうかしたんですか?」
「う〜ん、お昼から家族で出かけるって約束
だったのに、ちょっと私が目を離したら急に
姿が見えなくなったのよ。」
「お母さんを驚かそうと思って、どっかに
隠れてるんじゃないですか?そのうち出て
きますよ。」
「そうー、そうだといいんだけど・・・。」
 そう言いながらも彼女は、得体の知れない
胸騒ぎを覚えていた。
(まぁ携帯電話もあるし大丈夫よね。)

 ラジオが3時のニュースを告げた。
「・・東京近郊で発生しております小学生
連続失踪事件ですが・・・組織的犯行・・・
関係者からの・・による・・怨恨との・・」

 その日は2月には珍しく暖かい小春日和の
一日で、何もかもが幸せに包まれているよう
に思われた。

 


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