『若草を濡らす少女たち』
第九話 福沢由紀子の巻(第三部)
    第一章 女子大生・由紀子・二十歳    

第一章 女子大生・由紀子・二十歳

 すっかり遅くなっちゃった。
 福沢由紀子は歩きながらチラリと腕時計に目をやった。時刻は既に午前二時近くになっている。
由紀子は三ヶ月ほど前から駅前にある『マジック』というゲームセンターでアルバイトをしている。今日は本来なら八時で上がる予定だったが、交替で入るはずの男性が体調を崩して来られなくなってしまったため延長を頼まれ、閉店まで仕事をするはめになってしまったのだ。
 由紀子は千葉県にある聖泉女子学院大学の学生で、今月から三年生になったばかり。大学では日本文学を専攻している。東京の実家から通うには何かと不便なので、ワンルームのアパートを借り一人暮らしをしている。
 明日が休講になって良かったわ。
 そんな事を考えながら由紀子は家路を急いでいた。
 シャッターの降りている商店街を通り抜け、住宅の立ち並ぶ路地へと入る。さすがにこの時間では人の姿はほとんど見られない。ひっそりと静まり返った空間に、カッカッというやや早いテンポのヒールの音が吸い込まれていく。
 由紀子の歩く速度が次第にゆっくりになり、やがて止まった。
 どうしよう、トイレ.....。
 仕事中に飲んでいたコーヒーのせいだろうか。ゲームセンターを出た頃から少し感じてはいたのだが、ここへ来て急速に尿意が強くなってきた。四月に入り夜の風にも春の匂いが感じられるようになってきたが、今夜は冬に逆戻りしたかのように風が冷たく、身体が冷えた事もあるかも知れない。
 アパートまでは後四、五分といったところだが、とてもそこまで我慢出来る感じではなかった。
 由紀子はふと、すぐ近くの公園に公衆トイレがあるのを思い出した。そこなら目の前の十字路を左に曲がればすぐである。
 由紀子は再び歩き始めた。一刻も早くトイレに着きたかったが、あえて走る事はしなかった。走ると身体に振動が伝わり、刺激で余計に尿意が辛くなるからだ。
 程無く左手に公衆トイレの建物が見えてきた。真っ暗な中に蛍光灯の光が煌々と光っている。
 ようやく個室に入るとドアを閉め、便器を跨ぐ。慌ててパンティとパンストを引き下ろし、しゃがみ込むとほぼ同時に股間から黄金色の奔流が勢い良く迸った。
 フーッ、助かったわ。
 ようやく緊迫した状況から解放され、思わずため息が口をついて出る。後一分遅かったら手遅れになっていたかも知れない。
用を足し終わり、バッグから取りだしたティッシュで股間を拭う。身支度を終えて水を流そうとして由紀子は思わず手を止めた。人の声が聞こえたような気がしたのだ。
 気のせいかしら.....。
 水を流してから由紀子は外に出てみた。女子トイレには入り口を挟んで二つ個室があったがもう一方の個室にはやはり誰もいない。
 やっぱり気のせいだったのかな.....。
 そう思いながら公園の出口へ戻るため、男子トイレの前を通りかかった時、
 「お願い.....もう.....」
 再び同じ声が、今度は少しはっきり聞こえてきた。
 どうして男子トイレの中から?.....
 由紀子は驚いた。女性の声だったからだ。そっと近づいてみると確かに個室の中から人の気配がしてくる。
 「フフ...お前のここはそう言っていないぞ、ほら聞こえるか」
 今度はかなりはっきり聞こえた。しかも今度は男の声だ。
 関わらない方がいい.....。
 由紀子は思った。中で何が行われているか、おおよそ見当がついたからだ。
 しかし立ち去ろうとする気持ちとは逆に、その場から動く事が出来ない。関わってはならないと分かっていても、中の事が気になって仕方ないのだ。寒さを感じないほど身体が熱くなり、胸の鼓動が高鳴っているのが分かる。
 「い、いやっ、あっ、あっ.....」
 断続的な女性の喘ぎ声が聞こえると、もうダメだった。由紀子は通風窓の下に回り、水洗用のポンプが入っている箱に乗ろうとしていた。ここに乗れば由紀子の身長なら充分目が窓の所まで届く。
 箱上に登ってからもまだためらいはあったが、ついには見たい欲求が勝った。
 由紀子はおそるおそる中を覗き込んだ。
 あっ!.....。
 由紀子は叫びそうになるのを慌てて呑み込んだ。予想した光景ではあったがやはり実際に見ると驚かずにはいられなかった。
 女性はスカートをめくられ、パンティは膝の所まで引き降ろされている。壁に手を付き剥き出しの下半身を男に向かって突き出している。そして男がその女性の股間に手を差し入れ、前後に動かしている所だった。
 「ああっ、い、いやですっ.....」
 女性が泣きそうな顔で振り向き、男に訴える。
 男は眼鏡をかけていて、髪の毛を七三に分けている。歳は三十くらいだろうか。細身で一見学者風だが、半袖のワイシャツから伸びている腕は逞しく、身体に似合わず力は強そうな感じだ。
 女性の方は栗色のボブヘアで、振り向いたその顔立ちはまだ幼く、女性と言うより少女という形容の方が当てはまる。剥き出しにされたお尻もまだ大人のそれではなく、どう見ても十代半ば、高校生、いやひょっとしたら中学生かも知れない。
 「ああっ....せ、先生っ、ダメェ.....」
 「見ろ、どんどんおツユが溢れてくるぜ」
 「い、いや...恥ずかしいっ」
 先生と呼ばれた男は少女を蔑むように笑うと、手の動きを激しくした。クチュクチュという音が由紀子の耳にまで聞こえてくる。
 「ああっ...ゆ、許してっ...」
 少女は羞恥に耐えているのか顔を真っ赤に染めている。二人の言葉からするとどうやら男は学校の教師で、少女はやはりその生徒のようだ。
 「よし、そろそろ行くぞ」
 男はズボンを降ろし勃起した肉棒を取り出すと、少女の尻の割れ目へと当てがう。
 「あっ、い、いやっ」
 少女が悲しそうな表情で振り返る。しかし男は構わず、ゆっくりと腰を前へ突き出し、少女の中へと押し入った。
 「ああっ.....」
 少女が苦しげに呻いた。
 「おお...この締まり具合、この感触、いつ入れてもたまらないぜ」
 男は少女の細い腰を抱え、ゆっくりと抜き差しを始める。
 「いやっ...あっ、あっ、あっ.....」
 徐々にピストンのスピードが上がっていく。パンパンと腰を打ち付ける音に合わせて、少女の唇から切なげな喘ぎ声が断続的に発せられる。
 もう、これ以上見てはダメよ.....。
 由紀子は何度も自分に言い聞かせていた。しかし男が腰を動かすたびに少女の花蜜にぬめり光る肉茎が見え隠れする様から、目を離す事が出来ない。
 「ああっ....あっ、あっ、あっ」
 鼻にかかった甘ったるいその声から、少女が感じているのが分かる。実際先ほどの悲しげな表情が、いつしか恍惚の表情に変化している。自らも悩ましく腰を振り、男に後ろから唇を求められれば、自ら腰をひねって積極的にキスに応じる。
 「ああっ...もう、もうダメェ.....」
 少女が切なげな声を上げる。絶頂が間近に迫っているらしい。男も放出が近いのか小刻みに腰を動かしている。
 「ようし、たっぷりぶちまけてやるぞ。おおっ...」
 男は少女の尻にグリグリと腰を押しつける。
 「あっ...ああっ.....」
 男の放出に少女がピクピクと身体を震わせる。
 一部始終を見届け、由紀子は足音を立てないように台を下りた。そして公園の外に出ると一目散に走りだした。

 由紀子のアパートは最寄りの駅から徒歩十五分ほどの閑静な住宅街の中にある、八畳のワンルームである。建築後まだ二年と新しく、普通のワンルームより若干広い。床はフローリングでトイレとバスが別々というのが由紀子のお気に入りだった。大学までも四十分程度と通学にも便利なところである。
 公園のトイレで男と少女の淫靡な交わりを覗き見していたため、部屋に戻ったときにはすでに午前三時近くになろうとしていた。
 息を落ち着かせてから、シャワーを浴びようと裸になった由紀子は、パンティの、ちょうど布が二重になっている部分がしっとりと濡れているのに気づき、改めて己の行動を恥じた。
 洗面の鏡に映った二十歳の裸体は、眩いばかりの輝きを見せていた。小学校の高学年くらいから急速に身体が発育を始め、中学生の頃にはもう大人に引けを取らないプロポーションだったが、二十歳を迎えた今は、身長も五センチほど伸び、個々の部分もグッと成熟の度合いを増している。バストは八十七センチと数字的には僅かな増加だが、当時のCカップからEカップへとサイズは確実にアップしている。重みで垂れるようなこともなく、美しい釣り鐘型を保っている。その頂点は変わらず可憐な薄いピンクに色づき、先端の突起をツンと上向かせている。
 ウェストはさらに細くなり、大胆な曲線を描いて張り出したヒップラインを更に艶めかしく見せている。余分な肉など一切付いていない、美の究極とも言える身体たった。
 シャワーを浴び終わった由紀子は、髪をブローしてからネグリジェに着替え、ベッドに入った。
 壁に架けられた時計は既に午前四時を過ぎている。
 明日は大学行かなくて良くなったし、ゆっくり寝よう。
 しかし目を閉じると、つい先ほどの刺激的な光景が瞼の裏に浮かんで来てなかなか寝付く事が出来ない。
 あの子、きっと私と同じように.....
 由紀子はいつしか、長い間思い出すまいと努めていた過去の忌まわしい出来事を思い浮かべていた。

 中学二年の夏休み、由紀子は家に帰る途中で道に迷っていた貴弘という大学生を駅まで案内する途中でレイプされ、処女を奪われた。それ以来レイプ願望に取り憑かれ、疼く身体を鎮めるために毎日のように自慰に耽るようになってしまった。
 そんなある日偶然に貴弘と再会、再びレイプされてしまう。その後は毎日のように貴弘に呼び出され、犯され続けた。当時から早熟だった由紀子の身体はいつしか被虐的な性の喜びに目覚めさせられ、麻薬のような肉の悦楽に溺れる日々が続いた。
 しかし避妊もされず毎回のように膣内射精されていた由紀子はやがて妊娠。一時は自殺も考えた。
 しかし憧れていた体育教師の加藤に中絶を援助された事を機会に、加藤の助けを得て由紀子は貴弘の魔の手から逃れる事が出来た。こうして今普通の生活が送れるのも加藤のおかげと言っていい。
 あれから早いものでもう六年、事件をきっかけに由紀子は自分の気持ちを加藤に打ち明け、身体を開いた。その関係はその後もしばらく続いていたが、受験勉強で忙しくなりだした位から少しずつ会う回数が減り、何となく疎遠になっていった。そして高校入学後少しして、風の便りに加藤が都内のよその中学に転任して行った事を聞いた。
 今思えば一時の熱病に浮かされたような物だったのかも知れない。いくら肉体的に大人でも、由紀子はまだ当時十四歳、恋に恋する年頃の少女が三十歳を過ぎた教師への憧れを愛と錯覚しても仕方の無い事だ。加藤もそのあたりを承知であえて自分からは連絡をして来なかったのだろう。しかし決して嫌いになって別れたわけではないし、今でも加藤への感謝の念は消えていない。
 高校に進学してからの由紀子の生活は模範的な学生のそれだった。テストの成績は常にクラスで五番以内、授業でも積極的に発言する優等生だった。放課後は水泳部に所属し、インターハイの予選でもかなりいいところまでいった事もあった。
 異性関係も高校生ともなれば、肉体関係のあるボーイフレンドがいてもおかしくない今の世の中、由紀子はセックスは無論、特定の男性と付き合う事すらしなかった。それは今に至るまで続いている。むろん近づいてくる男性がいなかった訳ではないし、好感を抱いた相手がいた時期もあった。
 しかしそういう誘いや想いを由紀子は全て断ってきた。加藤と比べると同年代の男の子がどうしても子供っぽく思えてしまうという事も少しはあったが、それ以上にそんな彼らでも付き合う以上セックスが避けて通れない道である事を充分過ぎるほど分かっていたからだ。まだ加藤以外の男性に心を許す気持ちにはなれなかったし、一度性の悦びを知った身体にまた火が付いてしまったらと思うと恐かったのだ。
 だから男性からはしばらく遠ざかりたくて、高校、大学と女子校に進んだのだ。
 その一方、性の悦びを知った由紀子の身体は更に成熟味を増しつつあった。透き通るような白い肌はきめ細かく、輝くような光沢さえたたえている。悩ましい胸の膨らみ、引き締まったウエストライン、それに続くムッチリした下半身の肉付き、いずれも眩しいほどの官能美に満ちている。
 しかしもう六年近く男性と接触していない。そればかりか自分で慰める事すら慎んでいた。そのせいかたまに気分が欝になったり、訳もなくイライラしたりする、特に生理の前にその傾向が著しい。不自然に性欲を抑える事が由紀子の身体のメカニズムに微妙な狂いを生じさせているようだった。
 由紀子自身、そのことを薄々感じてはいた。それでもそれが忌まわしい過去を断ち切ると信じ、じっと堪え忍んでいた。
 しかし無理に抑えられていたものはいつか必ず堰を切って溢れ出す。その時が間近に迫っている事に由紀子はまだ気付いていなかった。

 


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