『麗と隷』
       第十二話       

第十二話

 法子は川瀬の粗末な小屋で朝を迎えた。昨夜、大勢の浮浪者達に嬲られながら川瀬に貫かれた法子は、そのまま気を失ったが、法子への陵辱はそれだけでは済まなかった。 見物して貰った礼をしろと、その場に居合わせた全員へ、口での奉仕を強制されたのだ。セックスは川瀬以外禁じられているのか、輪姦される事は免れたが、法子は顎が外れるかと思われるほど、皆の男根をくわえまくった。そして、法子の口中に白濁を放つ者や、法子の顔や身体、挙げ句の果てに鼻の穴にまでぶちまける者までいて、法子の全身は、浮浪者達の白濁にまみれ猥雑な臭いが漂った。
 その後、皆の見守る中で自慰を強制され、法子は羞恥と屈辱と快楽にまみれながら、異次元の絶頂感を味わいながら果てた。そしてようやく解放されたのは深夜であった。
 連夜の狂おしいまでの陵辱は法子の身体を蝕み、川瀬の胸に抱かれながら、死んだように眠りに入った。

「おいっ、いつまで寝てんだっ。いい加減起きろっ」
 川瀬の怒声に法子は過剰な反応を見せたが、その身体はまるで鉛のように、重い。寝ぼけ眼で川瀬を見つめると、自分が全裸であることに気付き、たおやかな裸身を縮め羞恥に震えた。しかし、改めて自分の裸を見ると、昨夜の陵辱の跡である白濁が全身にこびり付き、強い臭いを放っていた。法子は小さな溜息を漏らす。
「これを、着ろ」
 川瀬は法子によれよれのコートを放った。法子は項垂れながらも、身に纏うものを与えられた嬉しさに礼を言うと、素早く羽織った。ぼろぼろであった。至る所に穴が開いており、そこから法子の透き通るような肌が覗く。
(裸より…まし、か…)
 法子にとって綻びだらけのコートでも、全裸を晒すよりよっぽど救われる。帽子も与えられた。法子がその帽子を目深に被ると、川瀬は「付いてこい」と法子に言い小屋を出ていってしまった。
(何処へ…行くの?)
 法子は不安に訝しげな表情を浮かべたまま、川瀬に続き小屋を出た。嫌というほど太陽が眩しい。
 表に出ると、昨夜、法子を嬲り物にした浮浪者達が法子に近づいてきては揶揄し、囃し立てる。
「おっ、奴隷の癖に、裸じゃぁねぇんだな」
「お前は、素っ裸が一番似合ってるぜ」
 法子は、そんな中を羞恥と恐怖に俯いたまま掻き分けていこうとするが、浮浪者達は法子に群がり、コートに包まれた法子の身体を厭らしく触ってきた。法子が小さな悲鳴を上げると、
「触ってやってんのに、何が、きゃっ…だ」
「白々しい、ど淫乱の変態の癖に」
 まるで社会から摘み出された腹いせを、法子にぶつけるかのように、法子を罵り、蔑んだ。法子は固く目を閉ざすと、哀愁と苦渋に満ちた表情を浮かべたまま浮浪者達のされるがままに委ねていた。大人しくなった法子をいいことに、浮浪者達はコートの綻びから無遠慮な手を伸ばす。
「おいっ、奴隷っ。早くしろっ」
 川瀬の怒声が響く。他の浮浪者達は川瀬には逆らえないのであろうか、その声に法子を解放した。法子は、救われたかのように小走りで川瀬の後を追う。

 川瀬は階段を上がると、そのまま街をぶらついた。法子は、小汚い装いを恥じ入るかのように、川瀬の影に隠れる。幾度となく通行人とすれ違う。まるで川瀬と法子をゴミでも見るような蔑んだ視線を向ける者や、眼を向けるだけで穢れるとでも思っているのか、全く無視する者もいる。法子はそれらの反応に深い憂いを帯びた表情のまま俯き、靴を与えられていない裸足の足に視線を落とす。
 暫く歩くと、公園に着いた。川瀬はつかつかとその公園に入っていく。日曜日ということで、家族連れや若いカップルなどが、芝生やベンチに座っていた。何気ない光景である。しかし、法子には既に奪われた安息の様子であった。法子は、軽く唇を噛むとそれらの人々から、逃れるように川瀬の後に続く。
 川瀬はふと立ち止まり、一つのベンチに腰掛け、凭れた。法子は、どうして良いか分からず、その前で立ち竦み、上目遣いで川瀬を仰ぎ見る。
 川瀬は、法子に射るような視線を向けると、背筋の凍るような笑みを浮かべた。そして、ズボンのファスナーを下ろすと、隆起した一物を晒した。昨夜、法子に二度も射精したにもかかわらず、何という精力であろう。衰えを知らない川瀬の男根は、逞しく脈打ち天を突いている。法子は思わず顔を赤らめ俯いた。この公衆の面前で、どんな屈辱を与えられるのであろう…、法子の胸に重い物が落ちる。
「入れてやる…」
 川瀬は呟くように言うと、俯く法子の手を掴み法子を反転させると、華奢な腰を掴み、コートの綻びから一気に貫いた。
 何の前戯も与えられていなかった法子の身体であったが、惨めな装いを視姦されたことに刺激を受けていたのか、何の抵抗もなく体内に埋没させてしまう。
「どうだ…、やつらを見ながらヤルのも、なかなかオツなもんだろ」
 上気しだした法子の耳に、息とともに囁く。法子は湿った瞳をゆっくりと上げた。そこには家族団欒の光景やカップル達の幸福そうに語らう姿が映った。コートを着ているので、彼らには只単に浮浪者が重なり座っているようにしか見えないはずだ。しかし、法子の体内には太く逞しい一物が埋没している。法子は潤んだ瞳を公園に彷徨わせた。
 川瀬は、法子を貫いたものの、それきり動かない。法子の胸中は、次第に淫靡な想いに包まれ、呼吸も荒くなり、その表情もとろけそうだ。法子はねだるような湿った視線を川瀬に向けた。
「なんだ、そのスケベな顔は…」
 川瀬が軽く嘲笑する。法子は、震える唇を強く噛みしめ真っ赤になり俯く。法子の耳に、足音が聞こえた。法子は、この淫靡な状況に顔を上げられないが、その足音がだんだんと法子達に近寄ってくると、法子の心臓が狂ったように暴れ出した。
 ふいに川瀬の手が、コートの綻びから法子の乳房に伸びる。
「ぁあ…ん」
 法子は思わず小さな嬌声を上げてしまった。うっすらと瞼を開けると家族連れのようだが、彼らは法子達のことなど意に介さず、通り過ぎてしまう。
「ふふ…、感じてんだな。この変態が…」
 川瀬の侮蔑する言葉に、法子の身体の温度が一気に上昇する。
 暫くすると、また足音が近づいてきた。やはり川瀬は法子を貫いたまま微動だにしない。狂おしいまでの焦燥感が、法子の強引に開発された身体を苦しめた。
「よっ、川ちゃん」
 法子の身体がピクリと反応した。法子は震える身体を縮ませ、熱い吐息を漏らす。
「ちょっと、公園借りてるぞ」
「あぁ…かまわんよ」
 その男は、法子に好奇の視線を向ける。
「預かった、奴隷だ。よかったら、どうぞ」
 男は、下品に唇を歪ませ、目深に被った法子の帽子を乱暴に奪うと、法子の顎に手を掛け、法子を上向かせる。法子は苦悩に満ちた表情を、その男に晒す。
「ほぉ〜、別嬪だし、若いな。歳は幾つだ」
 法子は眉間に深い皺を刻んだまま、荒い呼吸をしていた。
「ふっ、奴隷に歳なんて関係ねぇだろ」
 川瀬が吐き捨てるように言うと、法子の頭を小突いた。
「なに、ぼさっとしてんだ。尊い人間様が、卑しい奴隷に精液を恵んで下さるんだ。とっとと、御奉仕しろっ」
 法子は、その大きな怒声に更に身体を縮ませるが、震える声で、
「は…い。あ…の、どうぞ…卑しい奴隷に、精液を…恵んで下さい。お願い…します」
 男は羞恥と淫靡な狭間に揺れる法子の何ともいえない表情を覗き込むと、更に唇を歪ませ、一物を法子の面前に差し出す。法子は、公衆の面前で通りすがりの浮浪者にまで奉仕させられる屈辱と、そんな自分にうっとりと浸り被虐に溺れる自分がいるのを自覚する。そして、小さく熱い溜息を吐くと、法子はその男の臭く不潔な棹を口に含んだ。
 だらんとしていた一物は、法子の口中で甦り、血液を凝集していく。法子の耳に周囲の雑音が入るが、法子は深く目を閉ざし、愛おしげに奉仕を続けていった。
 
 川瀬に貫かれてから、一体何分経過したのであろうか、まだ今し方のような気もするし、とてつもなく長い気もする。相変わらず動かない川瀬の男根は、驚異の持続力を保ち、法子の体内に深く埋没したままだ。あれから何人もの浮浪者が法子を訪れ、その度に法子は口の奉仕をさせられた。彼らは、法子の口中に白濁をぶちまけ、法子はその全てを飲み干した。
 周囲も、次第に法子達の異様な雰囲気を感じ、足早に公園を後にするが、次から次へと訪問者が訪れ、人の絶えることは無かった。
 法子の満たされない淫靡な想いは、既に溢れそうなほど一杯で、いたたまれなくねっとりとした視線を川瀬に向けるが、川瀬は卑下た笑みを浮かべたまま、動かない。
 悶々とした時間が過ぎ、また法子の耳に足音が近づいてくる。法子は、熱い吐息をまた一つ漏らした。
「此処にいたの?探したわよ」
 陽子の声だ。法子は肩すかしをくったような表情を向けた。
「あんた…、呆れた、何そのスケベな顔はぁ…」
 陽子は、とろけそうなほどの表情を浮かべる法子を見て、侮蔑の混じった嘲笑をする。法子は、震える唇を軽く噛み、熱い呼吸を押し殺す。
「川瀬さん…。そろそろ時間よ。返して貰うわね」
 冷酷な陽子の声に、川瀬も冷たい微笑を返した。
「おいっ、奴隷…。時間だとさ…帰りてぇか」
(私の身体を、熱くさせるだけさせといて…、このままじゃぁ…嫌……)
 法子は縋るような甘ったるい視線を陽子に向けた。
「なぁに、その盛りのついた牝みたいな顔は…、お前、帰りたくないの?」
 法子は肩を震わせ、小さく頭を振る。しかし、法子の身体は川瀬の一物を深くくわえこんだまま、離れない。
「いきてぇのか?」
 川瀬が法子の耳元で熱く囁く。法子は、戸惑ったような苦渋に満ちた表情で陽子に救いを求めた。
「いきたいの?」
 陽子もぞっとするほど優しい声を出す。法子は、堪らなく淫猥な吐息を漏らし歯に噛むと、眉間に深い皺を刻ませたまま小さく頷く。陽子は、そんな法子に柔和な笑みを向けると、法子の頬を優しく撫でた。
「私の命令を聞かないんだから、後で厳しい罰を与えるけど、それでも…いきたい?」
 法子は焦点の合わない視線を陽子に向けると、少しの躊躇いを見せながらも再び頷いた。淫靡な想いに崩壊寸前の法子の身体は、制動を失い、淫獄の坂を転がり落ちていく。
「それじゃぁ、いかせてやるから、立って、素っ裸になれ」
 法子は、まるで催眠術にでも掛かったかのように従順になり、それまで動けなかった身体が嘘のように川瀬の一物から離れると、ふらふらと立ち上がり、綻びだらけのコートを脱いだ。白昼である。公衆の面前でもある。しかし、満たされぬ淫靡な想いが、法子の理性を蝕んでいく。心臓が壊れそうで、熱い呼吸も荒い。
「ベンチに手を付いて、脚を広げろ」
 法子は、虚ろな瞳を川瀬に向けると、よろけながらもベンチに手を付き、小刻みに震える裸身を開いた。
「いくぞ、奴隷」
 川瀬は、音が立つほど法子の秘部に突き刺した。そして、激しく淫靡な抽送を始める。法子は、今までに感じ得なかった享楽に浸りながら、川瀬の揺さぶりに身を委ねた。漏れる吐息も揺れている。まるで宙に浮いているような甘美なる想いは、瞬く間に法子の体内に吸い込まれ、貪欲に吸収されていく。
 公園の隅に位置するベンチとはいえ、その狂態は他の衆人に漏れ、みな驚きと軽蔑の視線を向け、立ち去っていく。しかし、法子の淫靡に開発された幼い肉体は、法子の理性を完全に打ち負かし、一気に頂上へと昇り詰めていく。
「いっ…、いき…、いきます」
 法子の昇り詰める淫靡な頂は、その度に高くなり、まるで天にまで届きそうだ。法子は、小さな痙攣を起こすと、その頂きで大きく手を広げた。それに呼応し、川瀬も法子の体内に陵辱の証をぶちまけた。
 川瀬は、満足げな荒い吐息を吐くと、法子から離れた。法子も熱い吐息を漏らすと、未だ痙攣の治まらぬ膝が崩れ、その場に倒れる。ひんやりとした土が、法子の火照った裸身を心地よく冷ました。

 夢見心地の余韻に浸る法子の裸身を、陽子が思いきり蹴飛ばした。法子は、はっとすると、弾かれたようにその場に土下座し、頭を垂れた額を土に付ける。
「ご…御免なさい」
 何故謝罪するのか、自分でも驚くほど卑屈だ。
「ほんと、信じられないほど変態ね。この奴隷は」
 陽子の嘲る言葉が、法子のか弱い心を掻きむしる。陽子は膝を折ると、平伏する法子の髪の毛を鷲掴みし、強引に顔を起こさせた。
「満足したの?淫乱奴隷さん…」
 法子は頼りなく哀愁に満ちた表情を浮かべると、小さく頷いた。
「じゃぁ、帰るから…川瀬さんに、御礼をいいな」
 法子は川瀬に向き直ると、再び深々と頭を垂れた。
「卑しい…奴隷の、お世話を…して頂き、有り難う…御座いました」
 その声は小さく震えていた。川瀬は大仰に頷くと、
「しっかし、おめぇみたいな変態…初めてだったぞ。お前、立派な奴隷になれるわ」
 川瀬は半ば呆れたような口調で法子を嘲笑する。法子の伏せた顔は、羞恥で赤味を帯びた。顔を起こした法子を、陽子がしたり顔で覗き込む。法子は、思わず身を縮めた。
「じゃぁ、これから車まで行くけど…お前、奴隷に服って、必要だと思う?」
 法子は息を飲むと、唇を強く噛んだ。急に全裸で公園に土下座していることに強い羞恥を覚える。法子の裸身が小刻みに震えだした。
「どうなの…、奴隷としてのお前の意見を聞いてるの」
 陽子の口調が厳しくなる。ようやく静まり掛けた心拍数も、再び激しくなる。
「は…い。あの…必要…ありません」
 法子はようやく口を開いた。しかし、白昼だし公園には人もいる。法子は不安と羞恥に追い込まれていく。
「やっぱり、そうよね。奴隷には、服なんて要らないよね。お前みたいな、身分の卑しい奴隷に着られたら、服が可愛そうよね。…それに、こんなに人が沢山いるとこでもヤっちゃうんだから、露出狂なんだもん、裸のほうが、嬉しいってもんね。…いいわ、ご褒美に、素っ裸で、車まで歩かせてあげる。お前の淫乱な裸、みんなに見て貰いなさい。その代わり、警察に捕まったら、全部自分の責任にしなさいよ。お前の変態性癖に付き合って上げてるんだから、私達にこれ以上迷惑は掛けないでね」
 法子の身体に、強い戦慄が走る。
「ふふ、でも、お前の場合、存在自体が、猥褻罪だものね」
 陽子が嬉しそうに嗤い声を上げた。つられて川瀬も笑い出す。法子は、身体の奥底から湧き出てくる、侮蔑な言葉に対する被虐への甘美な想いを覆いきれず、戸惑ったような表情を浮かべ俯いた。
「じゃ、行くよ」
 陽子が、踵を返した。法子は、急ぎ立ち上がると、自らの裸身を抱き陽子の影に寄り添う。公園は、先程の淫猥な光景といい、全裸で歩く美少女といい、一気に猥雑な雰囲気が漂う。法子は、痛いほど突き刺さる視線にまともに顔を上げることが出来ず、出来るだけ身を縮め、陽子に寄り添う。心臓が、壊れそうだ。
 急に陽子が立ち止まり、法子を振り返った。法子は縋るような力無い視線を陽子に向ける。
「お前、何隠してんだい?お前が裸で行きたいって言ったんだろ。まだ分からないの?それに、その身体は私達のものなんだから、みんなに見せろって言ったら、お前なんかにそれを隠す権利なんてないのよ」
 法子の表情は深い哀愁と苦悩に満ちた。しかし法子は強く唇を噛むと、それまで自らを抱いていた震える腕を、徐々に下ろしていく。公園は益々猥雑とした雰囲気に飲まれ、騒然とした静寂に包まれる。法子の口から、熱い吐息が漏れる。
「じゃぁ、私が先行くから、合図してから、歩き出しなさい。いい、俯いても駄目よ」
 法子が力無く頷いた。陽子は、全裸できょうつけの姿勢のまま佇む法子を置いて歩き出した。法子は、焦点の合わない視線を必死で合わせ、陽子の背中を見つめる。周囲の視線が、法子の裸身に針のような刺激を与えた。呼吸することさえ忘れるほど、極限の羞恥が法子を襲う。自然に自ら裸身を隠そうと、腕が上がってくるのを、法子は必死で押さえた。
 ようやく陽子が法子を振り返り、合図したのは50mも離れてからだ。法子は、強い羞恥に強ばった四肢を動かし、ぎごちなく歩き出した。その歩は、雲の上を歩くかのように頼りなく、不自然になる。しかし、法子の裸身は熱く火照り、その表情も潤んでいる。
(私…私は…奴隷…露出狂…)
 法子は、声にならない悲鳴を上げ、俯きそうになる自分を何度も言い聞かせた。公園を出て通りに出ると、それまでの羞恥とは比べ者にならない程往来があった。嫌になるほど太陽が法子の裸身を照らし出し、法子の頭の中は真っ白になった。通行人は全裸の法子を見つけ、小さな悲鳴を上げる者や、好奇に満ちた視線を浴びせる者など反応は様々だ。自然に道が空いた。法子は、極端に狭くなった視線を陽子の背中に注ぎ、火照る裸身を晒し、自分のために空いた道をぎごちなく歩いていく。
 法子の視線の先には、陽子が車に乗り込む姿が見えた。そこまでが、とてつもない距離に思える。昨夜の陵辱の跡も生々しく、白濁が法子の裸身にこびり付き、泥で法子の裸身は汚されている。しかし、それでもその身体は瑞々しさを保ち、官能的な美のオーラを放っている。大衆に視姦されることで、法子の裸身は益々妖しい輝きを得て、その表情も多くの視線から愛撫を受けているがごとく妖艶さを増していった。
 ようやく車まで辿り着いた時には、法子の呼吸は喘いでいるかのように荒く、裸身からは熱を放っていた。何人もの通行人が足を止め、法子の美しい裸身を痴呆のように見つめている。
「気持ち良かった?」
 陽子がパワーウィンドウを開け、法子に冷たい微笑みを向けた。
「は…い」
 短い言葉を発するのでさえ苦痛に感じるほど、法子の肩は激しく上下していた。
「乗りなさい」
 法子は、淫猥な吐息を一つ漏らすと、極限の淫獄から解放され、後部座席に滑り込んだ。車は周囲のざわめきを無視し、何事も無かったかのように加速していく。法子はシートに凭れながら、治まらない妖しく激しい動悸に、苦悶の表情を浮かべていた。
「私も、いろんな奴隷を見てきたけど、こんな短期間であんな事までしちゃうのって、法子が始めてよ。お前って、本物の変態なのね」
 陽子が法子のつやのある髪の毛を、愛おしげに梳きながら言った。法子は、戸惑ったような表情を浮かべ、陽子に縋るような視線を向けた。
「でも、良いのよ、それで…。お前は、もっともっと変態になって、本物のマゾになって、そしてもっともっと恥ずかしいこと、沢山させて上げる。そうして、お前のどう仕様もない淫乱な血を満足させてあげるわ。もうお前は人間じゃぁ無いんだもん、遠慮なんてする事無いのよ」
 法子は潤んだ瞳を更に濡らせて、陽子を見つめた。陽子の妖しい言葉に吸い込まれそうになりながら、微かに開いた震える唇から淫猥な吐息を漏らし、掠れた声で、
「は…い。宜しく…お願い…します」
 陽子は優しい微笑みを法子に向けると、数枚の紙を法子に渡した。
「以前、事務所と契約書、交わしたでしょ。それに似てるんだけど…、ちょっと、目を通しなさい」
 唄うような陽子の口調に、法子は恐る恐る渡された紙片に眼を落とした。円らな瞳に飛び込んできたのは゛奴隷宣誓書゛の文字であった。

奴隷宣誓書
 私、倉木法子は、淫乱で露出狂であり、マゾで変態という性癖を持った、欲深き許すべからざる存在で御座います。それらの性癖は、私、倉木法子の強い欲望を満たそうとする余り、人間としての理性を失い、有した性癖であります。その性癖の強さは、既に人間として存在する範疇を越えており、私、倉木法子が人間として存在することは、神や他の方々に対する冒涜であることと自覚します。依って、私、倉木法子は、その人間性の全てを剥奪されることを願い、今後、人間性の全てを否定された奴隷として生かして頂きたく、この宣誓書により宣言させて頂きたいと願います。

一つ、私、倉木法子は、この世に存在する全ての物より、その
   存在が低く穢れていることを自覚し、全ての物に対して、
   尊敬と畏怖を抱き、全ての物より、侮蔑と屈辱と苦痛を
   与えて頂けるよう努めることを誓います。

一つ、私、倉木法子は、加虐者様より頂いた御命令は、侵され
   ざる神聖な御言葉であることを深く認識し、その御命令
   の完遂に如何なる犠牲をも惜しまず全身全霊を以て努め
   ることを誓います。
   下された御命令の完遂性の判断は、全て時の加虐者様に
   委ねられ、御満足頂けるまで誠心誠意お仕えすることを
   誓いますが、その過程において御不満を生じた場合は、
   如何なる理由も問わず、私自身の奴隷としての成長の為、
   厳罰を科して頂くことを願います。

一つ、私、倉木法子は、人間としての権利や尊厳、感情、人格、
   理性、意志等、一切の人間性を放棄致します。
 
   権利……憲法、法律等により定められている人権は、全
       て人間様の為のものであり、人間ではない、奴
       隷として生かされる事を願う私には該当せず、
       依ってそれら全ての権利を放棄させて頂きます。
   尊厳……人間としての尊厳やプライドは、奴隷としての
       私には、全く不必要なものであり、それらを抱
       くことを奴隷として恥と自覚し、奴隷として卑
       屈で卑しいさのみを身につけるよう、努めます。
   感情……私、倉木法子は、羞恥や屈辱、痛みを感じる等、
       人間としての一切の感情を持つことを放棄し、
       唯一の例外として加虐者様より虐待等を受ける
       ことに対してのみ、謝罪と御礼の感情を抱かせ
       て頂くことをお許し願います。
   人格……私、倉木法子は、今までの人格の全てを放棄し、
       恭順で忠誠心のみを身につけた奴隷としての徹
       底した性格を、新たに加虐者様よりの御教育と
       御協力のもと、成形させて頂きたく願います。
   理性……もとより浅ましい性癖を有した私に、理性など
       という高貴なものは存在せず、今後も、そのよ
       うな高貴なものを身につけないことを誓います。
   意志……私、倉木法子は、自ら思考することを放棄し、
       その意志は加虐者様の意志であり、全て加虐者
       様の意志に完全に添うことを誓います。

一つ、私、倉木法子の身体は不浄で穢れに満ちており、私自身
   の多淫な性癖によって、その存在自体が猥褻罪であるこ
   とを自覚し、依って、私、倉木法子の身体の所有権を放
   棄し、この身体の所有権を加虐者様に移項させて頂くこ
   とで、少しでも自らの罪を償いたいと願います。

   身体……私、倉木法子の身体の扱いに於いては、加虐者
       様の方々の自由な意志に委ね、この身体は、私
       自身がその所有権を放棄したことにより、加虐
       者様から拝借させて頂いていることを自覚し、
       私、倉木法子が、自らの身体を自由に扱う権利
       を放棄致します。又、加虐者様の如何なる御命
       令をも従えるよう、この肉体の鍛錬と手入れに
       努めます。
   懲罰……罰をお与え頂ける際には、私の身体及び精神の
       極限を超える罰を与えて頂けるよう努め、加虐
       者様に手心が加えられた場合は、私の怠慢であ
       ることを認識し、より一層の厳罰を享受するこ
       とを誓います。懲罰を頂ける際は、何方でも、
       何時でも、如何なる場所に於いてでも実行して
       頂きたく願います。そして、懲罰の方法は、全
       て加虐者様に委ねられ、罰を頂けることに最大
       限の謝礼をし、手間を煩わせたことへの謝罪を
       誓います。又、存在していることにより、深い
       罪を犯し続ける私に、加虐者様が罰を与えるこ
       との理由は要らず、世の中の全ての悪事に対し、
       謝罪の義務を負い、罪の贖罪と、罰の享受に努
       めます。
    傷……懲罰を頂くことで生じた傷跡は、私の特異な性
       癖によりつけられたものであることを自覚し、
       又、加虐者様より拝借頂いている身体を傷付け
       たことに対して、謝罪の意を著し、その治癒に
       全力を尽くします。尚、その治癒に際し、生じ
       た費用は全額、私、倉木法子が負担致しますの
       で、御遠慮なさらず虐待を施して頂くことを願
       います。
   身体……私、倉木法子は、加虐者様の所有物であるこの
   改造  肉体に、刺青、豊胸手術、四肢の切断等、如何
       なる肉体の改造を施されても、それに対し異議
       を唱える権利を放棄し、その事に最大限の謝礼
       を著します。尚、その改造等に際し、生じた費
       用は全額、私、倉木法子が負担致しますので、
       加虐者の自由な意志で、この肉体を改造して頂
       きたいと願います。

一つ、私、倉木法子の人間性を帯びた全ての行動は、加虐者様
   により完全な制限と支配を受けたいと願います。

   着衣……衣類は、人間様が、人間様の為に作られた高貴
       な物であり、奴隷である私が、それらを着衣す
       る権利を放棄し、特別な御命令が無い限り、全
       裸で過ごさせて頂きたく願います。尚、着衣の
       御命令を下される場合には、出来る限り露出度
       の高い衣類を与えて頂き、私の特異な性癖が万
       人に認めて頂けるよう願います。
   排泄……排泄、排尿行為は、全て加虐者様の御命令を仰
   排尿  ぎ、排泄、排尿を自由に行う権利を放棄し、何
   行為  時でも、如何なる場所に於いてでも、御命令が
       下され次第、躊躇わずに従うことを誓います。
       又、それらの行為を行う場合には、特別な指示
       の無い限り、原則として全裸で、より多くの方
       々にそのあさましい行為を見て頂けるよう願い
       ます。又、私の排泄物を、人間様の御使用にな
       る便器に処理することにより、その便器が穢れ
       ることを自覚し、その処理方法の御指示を仰ぎ
       ます。
    餌……私に下された餌は、それが如何なる物であって
       も、全て完食することを誓います。残飯、加虐
       者様の排泄、排尿物等、奴隷の私にとっては、
       最上の御馳走であることを自覚し、深い謝礼の
       意を表します。又、それらを食するに当たり、
       原則として全裸で、手を使わず、口で頂かせて
       頂きます。
   性 ……私、倉木法子に対しての性行為は、全て加虐者
   行為  様の管理下に置かれ、何方とでも、何時でも、
       如何なる場所に於いてでも、この拝借頂いてい
       る肢体を開き、そして、人間様と性行為を結ば
       せて頂くことを、この上無い名誉と自覚し、感
       謝と謝礼の意を表します。尚、不浄で穢れた私
       の身体を御使用頂いた場合、加虐者様の身体を
       も穢れることを恐れ、行為後のお清めに全力を
       尽くします。又、御命令が下されれば、加虐者
       様の愛犬様、家畜様等にも、同様の御奉仕をさ
       せて頂くことを誓います。
   自慰……私、倉木法子は、暇さえ有れば自らを慰めてし
   行為  まう、常に満たされない欲望を抱いている淫乱
       ゆえ、その両手両脚に許される限りの拘束して
       頂きたく願います。しかし、自慰の御命令を頂
       ければ、何時でも、如何なる場所に於いてでも、
       そのあさましい行為を堪能させて頂きますが、
       その特異な淫乱性を少しでも鎮めて頂きたく、
       出来る限り多くの方々よりの鑑賞を頂けるよう
       願います。
   言動……人間様と同じ言葉を使用させて頂くことをお許
       し願い、その事に対し常に罪悪感を抱きながら、
       その贖罪に努めます。又、如何なる人間様とも、
       言葉を交わす際は、最大級の敬語を使用し、御
       無礼の無いよう努めます。私、倉木法子がさせ
       て頂く全ての行動に対し、加虐者様はもとより
       全ての人間様より、侮蔑と嘲笑を頂けるよう努
       めます。

一つ、私、倉木法子は、加虐者様より御命令を頂ければ、便器、
   痰壺、灰皿等の代わりを謹んで務めさせて頂きます。卑
   しい身分である私にとって、それらの代わりを務めさせ
   て頂くことは、無上の名誉であり、そのことに最大限の
   謝礼を誓いますので、何時でも、如何なる場所に於いて
   でも、私自身を便器など、汚物処理として御使用頂ける
   よう願います。

一つ、私、倉木法子の時間の全ては、加虐者様よりの拘束を受
   け、一秒たりとも、私が自由に過ごせる時間は許されず、
   加虐者様の支配に委ねることを誓います。そして、加虐
   者様のお時間の許される限り、懲罰と虐待を与えていた
   だけるよう、努めます。
 
一つ、私、倉木法子は、この宣誓書に対し加虐者様が如何なる
   拡大解釈をなされても、その事に対し異議を唱える権利
   を放棄し、又、加虐者様に、絶対の服従心と誠心誠意の
   御奉仕を誓います。

一つ、私、倉木法子は、加虐者様がこの宣誓書に対し、私が違
   約したと判断された場合、如何なる懲罰をも享受し、如
   何なる扱いを受けても、それに対し異議を唱える権利を
   放棄します。

 又、違約性の判断は全て加虐者様に委ね、その判断に対し絶対的な服従を誓い、そして、私が違約した事実を、出来る限り多くの方々に認識して頂き、出来る限り多くの方々より、懲罰を与えて頂きたいと願います。
 又、違約の事実に時効を得ることを放棄し、一つの違約の事実に対し、度重なる懲罰を繰り返して頂き、私の奴隷としての成長に、御協力頂けるよう願います。

 この宣誓書は、私、倉木法子が、自らの淫らな性癖を満たしたいと願い、自らの発想で制作した宣誓書であり、許された最後の意志であります。依って、私、倉木法子の身勝手な上記項目は、加虐者様の承認を得てその効力を発揮致します。そして、全ての項目がより多くの方々に認識されることを願い、より多くの方々より罰を与えて頂けるよう努めます。
 この宣言書が、私、倉木法子の生ある限り、私、倉木法子に科せられるよう努め、私、倉木法子が、この宣言書を撤回する権利を永久に放棄します。そして、この宣言書が、加虐者の方々より補完され、より完全で、より人間性の否定に繋がる宣言書に成る様多大なご協力をお願い致します。

 

 その宣誓書の過酷な言葉一つ一つが、法子の身体の隅々にまで染み渡っていくような気がした。内容は普段から陽子達に言い聞かされているものだったが、法子の身体にはいい知れない戦慄が幾度も走り、天下の往来を全裸で歩かされたことにより熱く火照った裸身が、益々熱を得て、狂気を帯びた心臓が暴れまくる。
「どぉ?お前に相応しい内容でしょ」
 相変わらず不気味なほどの陽子の優しい口調が、法子にはかえって恐ろしい。法子は、陽子にとろけるような表情を向けた。その瞳にはうっすらと涙が滲み、それがきらきらとした輝きを放ち、法子の美貌を一層際立たせる。哀愁と苦悩と淫猥に満ちた表情が、女の陽子からみても艶っぽい。どんなに虐待しても、どんなに陰惨な目に合わせても、まるでそれらを糧にするが如く、法子の可憐な美しさは色褪せない。天性の清楚感が、全裸であることに大いなるギャップを生み、陽子の嗜虐心を掻きむしった。
「は…い。私に…相応しい内容だと…思います」
 陽子の想いなど、被虐の言葉で溺れた法子にとって全く気付かず、掠れた声で返事をする。陽子は、法子の言葉にはっとしたように過敏な反応をし、陽子の言葉も掠れる。
「そう…でしょ」
 今まで何人もの奴隷を調教してきた陽子であったが、法子だけは別格に思えた。陽子は熱い吐息を漏らすと、平静を装いながらも、
「今まで、似たような゛奴隷宣誓書゛とか゛奴隷契約書゛を見てきたけど、その中でもこの宣誓書は、一番過酷な内容なの…。でも、これがお前が目指してる奴隷なのよね?」
 法子は潤んだ視線を僅かに落とすと、小さく頷いた。
「お前は、こういう奴隷に、なりたいんでしょ」
「は…い。なりたい…です」
 極限の想いが、法子の思考能力を奪う。
「それじゃぁ、帰ったら事務所のみんなを集めて、宣誓させてあげる…。それから、水曜日に、クラブでもみんなの前で宣誓させてあげるわ。今日は仕方ないけど、水曜日までには、全部暗唱出来るようにしときなさい。そうしないと、一語一区間違えただけで、酷い罰を与えられるから…。それに、この゛奴隷宣誓書゛を宣誓させてあげるんだから、今までのような甘えは許されないからね。これまで以上に、その身を犠牲にして、みなさまへのご奉仕を心懸けるのよ」
 陽子の言葉に吸い込まれそうになりながらも、法子は小さく頷いた。
 思い返せば、梅田との理不尽な契約を交わしてから、何という自分自身の変わり様であろう…。あの時、契約書の内容に酷く驚いた自分が、今となっては、それ以上の内容の宣誓書に対して、さほどの驚愕を覚えないばかりか、その過酷な言葉自体に酔い、自らの身体が妖しい熱を帯びてくる。それが法子の脆弱な心を哀しませた。
(どこまで…堕ちていくの?)
 車窓に流れる風景でさえ尊いものに感じられてくる。ふと、法子の脳裏に柔和な笑顔を浮かべる瀬田の顔が浮かんできた。同時に法子の瞳からは、耐えていた涙が一筋、頬を伝う。その涙の意味が法子には解らず、幼気な想いを苛ませた。

 


    目次     

恥辱小説の部屋

動画 アダルト動画 ライブチャット