『麗と隷』
       第十一話       

第十一話

「おいっ、着くぞ。いい加減泣きやめ」
 無言のまま運転していた田口が、後部座席で嗚咽を漏らしていた法子に声を掛けた。法子は、その言葉にぴくりと反応すると、真っ赤になった瞳を開ける。
 当然行き先など知らされない法子である。訝しげに辺りを見回していると、ほどなく車が停車した。法子の胸は不安で心拍数が上昇するが、田口は車を止めたまま、法子に何も指示しない。
 暫くすると、陽子が出てきた。法子は、陽子を迎えに来ただけと知り安堵の溜息を漏らす。
 陽子が後部座席に乗り込むと、田口は再び車を走らせた。法子は無言のまま威圧感を漂わせている陽子に、少なからず怯えていた。
「法子。…ドラマ、決まったから」
 しばしの沈黙を破り、陽子がぶっきらぼうな口調で法子に告げた。
「あ、有り難う…御座います」
 法子が、小さな声で答えた。
「美鈴さんから電話が有ったわ。お前、昨夜、お客様の聖水、飲めなかったそうね」
 陽子の怒ったような態度の理由が分かり、法子の華奢な身体は、はっきりと分かるほどに震えだした。
「ご…ごめんなさい」
 法子の声も震えている。怯える法子を、陽子が吊り上がった視線で見つめた。
「お前、まだ、自分の事、人間だと思ってるでしょ」
「いっ…いえ」
 思わず否定の言葉を発してしまった法子は、唇を噛むと、益々その身体を縮ませ、項垂れた。
「法子。オッパイ、出しな」
 陽子の態度には、一片の容赦も感じられない。法子は、羞恥に頬を染めるが、項垂れ、二つしかないボタンを外す。手が震え、旨く外れない。陽子は、凍った視線を露わになった法子の乳房に向けると、未だ幼気な乳首を抓み、鋭く尖らせた親指の爪を当て、人差し指で挟み捻り上げた。
「あぅっ…くっ…」
 哀しい悲鳴を漏らす法子は、その激痛に呼吸も荒くなる。
「何度言ったら分かるの?私達が白と言えば白だし、黒と言ったら黒なの。」
 陽子は、更に親指に力を込め、法子の乳首を変形させた。法子は、眉間に深い皺を刻み、激痛に喘ぎながらも必死で耐える。
「ほんと、出来の悪い奴隷ね。いつになったら自分の身分ってものが分かるのかしら…。お前にとって、お客様は神以上の存在なんだ。…お客様だけじゃぁないわ。お前は、この世に存在する全ての物より、その身分は低くて、卑しいのよ。…その事、ちゃんと自覚してないでしょ」
 法子にとって、自分に向けられる蔑みの言葉が、自分の奥底にある理性の殻を、一枚一枚引き剥がされていく思いだ。引き剥がされた跡に残るものは、自分自身でさえ軽蔑する、貪欲に被虐で溺れる甘美なる想いだ。
「ご…ごめんな、さい」
 陽子の表情からは、次第に険しさが消えてくるが、乳首に当てられた爪には、尚も力がこもる。
「いいかい…、この車だって、この道路だって、全て人様が使うために、人様が造った物なんだよ。お前みたいな、身分の卑しい奴隷が使うための物じゃないの。…だから、お前は、それらの物全てを尊び、敬意を払う必要があるのよ。…トイレだってそうよ。お前にトイレの代わりを勤めさせてあげるのは、お前にとって、とても名誉なことなの。だってそうでしょ。本来なら、きちんと処理されるべきのオシッコが、お前みたいな身分の卑しい奴隷に、恵んで頂けるんだから…」
 余りの言葉に、法子の身体全体に幾度も戦慄が走る。法子の最も敏感でか弱いところを、鋭い爪で引っかき回されているような、そんな想いがする。頭の中も次第に思考する能力を失い、本当に自分がトイレの代わりを勤めることが、とても名誉なことに思えてくる。
「は…い。…奴隷としての、自覚が、私自身、まだ足りないと、思います。…ど、どうぞ、この、出来損ないの、卑しい奴隷に、厳しい゛教育゛を、宜しく、御願い、します」
 法子の言葉が、除々にその温度を上げていく。乳首を襲う激痛も、不思議と和らいできた。陽子の唇が歪む。
「田口…。川瀬のとこに行って」
 田口が無言のままハンドルを切る。相変わらず陽子の鋭い爪は、法子の乳首を変形させている。
「いいかい。お前を、ある人に預けるから…。そこで、お前の人間性の全てを、捨ててきなさい。お前にとっては、無用な、尊厳やプライドを、奪って頂くのよ」
 法子は、潤んだ瞳を陽子に向けると、小さく頷いた。
「前にも言ったけど、お前のこの身体は、お前のものだけど、所有権は私達にあるの。お前に貸してあげてるんだから、お前は、自分自身の身体より、身分は下ってことなの。」
 ねじ上げられた乳首の痛みも忘れ、上気しだした法子の表情を見て、陽子は唇を歪ませると、法子のショーツを取り上げられた股間に手を伸ばした。法子の口から、微かに吐息が漏れる。陽子は、法子の幼気な陰毛を5,6本摘むと、勢いよく引き毟った。
「っつ」
 切なく小さな悲鳴を上げた法子に、陽子が残酷な笑みを向けると、むしり取った陰毛を法子の面前に掲げた。
「お前はね、この陰毛よりも、身分は下なのよ。陰毛だけじゃないわ。お前が出したオシッコや、ウンチだってね、お前の体内から出た瞬間に、もうお前のものじゃなくなるのよ。私達のものなの。お前が、それらを自由に扱える権利なんて無いんだから。だから、お前は自分が出したオシッコやウンチよりも、身分は下なの。…兎に角、この世の中全てのものは、奴隷なんかのお前より、遙かに高貴で尊いものなの」
 陽子の圧倒的な言葉は、法子の呼吸を一層荒くさせ、被虐に溺れる忌まわしい性癖がしたり顔でのぞかせる。
「お前は人様に口を利いて頂くだけで、とても光栄なことなの。…ましてや、セックスをして頂いたり、虐めて頂いたり、お前の堪え性のない変態な性癖を鎮めて頂くのは、名誉なことこの上ないの…。だから、そんな風に、お相手して頂いたときには、多大な感謝の気持ちを持たなきゃ駄目よ」
 陽子の言葉に、吸い込まれそうになりながら、熱い視線で陽子を見つめる。
「この穢れた陰毛、食べたい?…お前にとっては、とても高貴で、勿体ないほどの御馳走だけど…」
 法子の表情は、はっきりと分かるほど、官能的に濡れている。
「食べさせて…下さい」
 法子は、小さな声で答えると、小刻みに震える唇を開いた。
「そんな感謝の気持ちが籠もってない言葉じゃぁ、お前に恵んであげられないわ。これからは…こう、言うのよ」
 陽子に教えられた言葉を、法子は眉間に深い皺を刻ませ、自らの陰毛に熱い視線を向けて、復唱した。
「陰毛…様。私のような、身分の卑しい奴隷が、…食する、御無礼を、…お許し下さい」
 陽子は凄まじいまでの笑みを浮かべると、法子の口中に、陰毛を放り込んだ。
「美味しい?」
 眉間に苦渋の皺を刻みながらも、法子は自らの陰毛をまるで毒でも飲み込むかのように、胃に送り込んだが、
「は…い。…とても、美味しいです」
 消え入りそうな切ない声を上げる法子に、陽子が唇を歪ませたまま顔を覗き込むと、爪を当てた乳首を、思い切り引っ張った。法子の膨らみは釣り鐘状に変形する。法子は、拳を固く握り、歯を食いしばってその痛みに耐える。
「それなら、もっと、美味しそうな顔しなさい」
 法子は必死で平静を装うが、激痛による不規則な呼吸までは変えられない。
「ふふっ…、お前のこと虐めるのって、ほんと、楽しいわ。思い切り滅茶苦茶にしたくなっちゃう。…お前って、奴隷になるために、生まれてきたのよ」
 法子は、痛みに耐えながらも戸惑ったような表情で陽子に視線を返す。
「お褒め…頂き、有り難う…御座います」
 法子の身体には、被虐の強烈な戦慄が幾度も走り、淫猥な股間は、益々潤いを帯びてくる。

 堤防の道を、法子は項垂れたまま陽子の後に従い歩いていた。相変わらず何処へ行くのかさえ説明のない法子の足は、いつになく重い。ボタンを締める許可が無いため、法子のブラウスの前は開いたままで、時折川から吹き上げる冷たい風が、大きくブレザーとブラウスを煽り、乳房を覗かせる。時折すれ違う通行人が、法子に好奇の視線を送るが、法子は、はだけたブラウスを直すことさえ躊躇われた。羞恥に震えながら、なるべく陽子に寄り添うが、法子の心拍数は益々その勢いを増していく。
 陽子が川へと降りる階段に歩を進め始めた。法子は陽子に従うが、辺りの光景を眼にし、足が竦む。そこは、浮浪者達の溜まり場のようで、あちこちに粗末なブルーシートや段ボールの小屋、そして粗末なテントが並んでいる。法子の胸は不安で高鳴り、身体全体に重いものが落ちる。
(ど…、どういう…こと。私…、どうなるの?)
 法子の不安を余所に、陽子は立ち並ぶ小屋の一つの前で立ち止まると、シートを捲った。
「いる?」
 法子はどうしていいか分からず、その場に立ち竦んだ。周囲はゴミ屑や塵が散乱し、それが風に舞っている。そんな中で清楚な香りを漂わせる法子が、如何にも不釣り合いだ。そんな法子に気づき、表にいる浮浪者達の視線が集まる。項垂れる法子の背中には、冷たい汗が流れた。
「法子。入りなさい」
 容赦の無い陽子の声が中から聞こえた。法子は小さな溜息を漏らすと、シートを捲った。法子の鼻に、何とも言えない異臭がついた。シートの中は八畳ほどの広さで、乱雑にゴミのような家具が置かれている。法子の眼の端に、シミの付いた汚れた毛布にくるまりながらも、爛々とした目つきで法子を見つめる、この小屋の主が飛び込んできた。小屋の中は薄暗いが、真っ黒に日焼けしたその男の眼は、法子を震え上がらせ、身動き一つ出来ない。
「いいかい、これからこの方に、お前の思い上がった人間としての尊厳や、プライドを、全て奪い取って頂くのよ。奴隷にとって、不必要なものは、全て捨て去りなさい。分かった?」
 射るような男の視線に、法子は固まったままだが、ようやくの想いで首を縦に振る。
「明日、迎えに来るから、それまでお世話になりなさい。…ほら、挨拶は?」
 法子は、苦渋に満ちた視線を陽子に向けるが、陽子の凍った視線に跳ね返される。小さな溜息を一つ漏らすと、法子は深々と頭を垂れた。
「ど、どうぞ…宜しく、お願い…致します」
 自分でもどうしようもないほどその声は微力で、震えていた。
「制服、汚したらいけないから、全部脱ぎなさい」
 法子は頭を垂れたまま、唇を噛んだ。羞恥と屈辱に身体が紅潮していく。今までも見ず知らずの大勢の人達に肌を晒してきたが、それらはいずれも高級そうな服を身に纏い、社会的にも成功した物達だ。しかし、すぐ目の前に居るのは、ほころびも目立つ、服とは言えないような物を纏い、社会的にも弾き出された人間だ。そんな彼にも服従を強いられることに、法子は大いに屈辱を感じた。しかし、自分にはそれを拒否する権利を奪われ、従わねば辛く厳しい罰が待っている。法子は、切ない溜息を漏らすと、ゆっくりと顔を起こし、制服を脱いでいった。
「じゃぁ、川瀬さん。びしびし鍛え上げてやってね。それが、こいつの為にもなるんだから…、それじゃぁ、宜しくね」
 陽子は、法子の想いも知らず唄うように言うと、冷たい微笑を法子に向け、
「法子、いい奴隷に、して頂くのよ」
 厳しい声を残し出ていってしまった。法子は、そんな陽子の後ろ姿を恨めしそうに見つめると、羞恥と屈辱と恐怖に震える裸身を縮ませ、その場に蹲る。
「おいっ、奴隷っ」
 川瀬が初めて法子に声を掛けた。こんな浮浪者にまで奴隷と呼ばれる屈辱に、震える裸身が、音を立てる。法子は、眉間に深い皺を刻むと、苦渋に満ちた表情を川瀬に向けた。
「何だ、その顔は?、俺に世話になるのがそんなに嫌か?」
 髭に覆われた真っ黒に日焼けした顔に、眼だけが鋭く輝いている。法子は威嚇するようなその視線に、恐怖に俯いた。
「ふふっ、怖いか?、だがな…、今、お前は奴隷で、俺はその支配者なんだぞ」
 法子は、強く唇を噛んだ。そうなのだ…、陽子に指示を受けた以上、どんな相手にでも服従を誓わねばならない。法子は、絞り出すような溜息を漏らす。
「おいっ、分かってるな」
 法子の心臓が、壊れそうなほど激しく脈打つ。そして、ゆっくりと顔を上げると、川瀬に手を付き、額を地面に付けた。
「か…川瀬、様。…どうぞ、私が、立派な奴隷に、成れるように、厳しい゛御教育゛を、宜しく、お願いします…」
 自分でも驚くほどの、澄んだ声であった。川瀬は、卑下た笑みを浮かべる。
「ようやく、分かったか…、ホントに未熟な奴隷だな」
「ご…ごめんなさい」
 法子は、小さな声で謝罪すると、益々その裸身を縮めた。
「俺と、セックス…したいか?」
 平伏した法子の表情が凍りつく。誰が、こんな不潔な男と…、法子は唇を強く噛みしめるが、車中での陽子の言葉を思い出した。
(私は…、卑しい奴隷…)
 法子は、心の奥底で搾るように呟くと、ゆっくりと顔を上げた。
「は…い。…川瀬様と…セックス、したい…です」
 屈辱に満ちたその台詞を口にした途端、法子の最も忌み嫌う淫靡なもう一人の法子が顔を出した。理性の残る自分が、川瀬と性行為に及ぶことを断固として拒否している。しかし、そんな相手とも、自ら望む形でセックスをしなければならないことに、陶酔してしまう法子がいた。惨めで屈辱的な状況に堕ちれば堕ちるほど、その法子は感じてしまう。理性と淫靡な法子のギャップが大きければ大きいほど、その身体は高ぶり、より濃い被虐の血液が体中を駆け巡る。
 戸惑う自分を余所に、法子の乳房は固くなり、乳首は異様なほどに勃っている。秘肉は潤い、淫靡な液体が滴り落ちそうで、熱い。心臓は、乳房から飛び出そうなほど激しく脈打っている。法子は、自分の身体の高ぶりに戸惑い、熱い吐息を吐くと、救いを求めるような表情で川瀬を見つめた。
 川瀬は、そんな表情を見せる法子に、思わず眼を見開いた。壊れそうなほど美しく、幼気ながら官能的であり、艶っぽい。今まで、何人もの奴隷を陽子からあてがわれ、゛教育゛という名の陵辱を繰り返してきた。しかし、法子に対しては、今までに感じたことのない、いじらしいほどの愛おしさを抱いた。だがその反面で、堪らなく幼気で健気な法子を、とことんまで堕としめ、ぼろぼろになるまで虐めたい、という想いに駆られる。川瀬の髭に包まれた分厚い唇が歪み、濁った瞳が不気味に光る。
「お前は、本物の、奴隷になれるな」
 法子は、川瀬の言葉に曖昧な表情を浮かべた。
「俺の足、舐めろ」
 冷たい口調で川瀬が言い放つ。法子は、一瞬戸惑ったような表情を浮かべたが、掠れた声で返事をすると、川瀬の足にゆっくりと顔を近づけた。川瀬の足に刻まれた深い皺と足の爪には、どす黒い垢がこびり付き、鼻が曲がるほどの異臭を放っている。法子は、その臭いを肺一杯に吸い込むと、太く短い親指を、まるで男根を頬張るように口に含むと、溢れ出る唾で淫靡な音を立たせた。
「ちゃんと、指の間も舐めるんだぞ」
 法子は、親指を口に含ませたまま、ねっとりとした視線を川瀬に向け、小さく頷く。そして、足の指一本一本を丹念に舐め続け、その指の間にも可憐な舌を這わせた。
「ほら、次は足の裏だ」
 川瀬が足を上げると、法子はその足を大層に抱え、淫猥な音を立たせ、舌を当てていく。法子は、理性と戦い続けた自分に疲れ、思考能力は薄くなり、川瀬の言葉に驚くほど従順になっていく。
「近くに、来い」
 川瀬の声も掠れているが、強い口調は変わらない。法子は、官能の波に浸る美貌を、川瀬に近づけた。川瀬は、間近に迫った法子の小さな顔をしげしげと見つめると、微かに開いた法子の唇に吸い付いた。そして、強引に舌で唇をねじ開けると、法子の舌に絡ませる。
 川瀬の口も唾液も、堪らなく臭い。しかし法子も、たがの外れた自らの淫靡な性癖に酔い、川瀬の舌を迎い入れると、熱い吐息を小さな鼻から漏らした。
 ひとしきり可憐な美少女の舌を堪能すると、川瀬は法子の鼻の穴や瞳、そして頬や耳にまで自らの舌を這わせる。法子の顔は、川瀬の唾液で滑り、益々妖艶な表情へと変わっていった。
「俺の、モノ…欲しいか?」
 法子は、自分の被虐的な性癖を嫌う理性を完全に失い、ねっとりとした表情でコクリと頷いた。
「それじゃぁ、お前の変態オ○ンコに入れてやるから、先ずはしゃぶって挨拶しろ」
 蔑みの言葉を浴びせられ、法子の身体には説明のつかない戦慄がじんじんと走る。
(私の…身体は…、もう…私のものじゃぁ…無い…)
 自らの貪欲なまでの性癖に、言い訳するかのように呟くと、川瀬の下半身に手を伸ばし、汚れたズボンとパンツを下ろした。
 逞しく隆起した川瀬の一物を取り出すと、法子はうっとりとした表情でそれを見つめ、そして大きく口を開き、喉に届くのではないかというほど、深くくわえ込んだ。
「お前の、舐めてやるから、俺を跨げ」
 法子は、口中で淫靡な音を立たせながらも、少しの恥じらいを見せるが、やがて川瀬の顔を跨ぎ、牝の香りを放ち熱く滴る秘部を晒した。川瀬が貪るように法子の秘肉に舌を這わせると、法子の呼吸は益々荒くなり、鼻から喘ぎ声を漏らす。
「おいっ…お前から、入れろ」
 川瀬は、法子の小さなお尻を平手打ちした。法子は、濡れた視線を川瀬に返すと、ゆっくりと体勢を変え、川瀬を跨ぐ。そして深く眼を閉じ、川瀬の一物を飢えた体内に徐々に埋没させていった。
 それに呼応するかのように、法子の小鼻からは熱い吐息が漏れる。その快楽に溺れる法子の表情は、十五歳の少女とは思えないほど官能的で大人びたものであった。
 川瀬は、自分の身体の上で泳ぐ法子の内股を、思い切り抓り上げた。
「ぁあっ…」
 その激痛に、法子が思わず声を上げる。
「ふふっ…、こうすると、締まるじゃねぇか」
 川瀬は、法子の敏感な場所をわざと狙い、爪を立て捻る。乳首に爪を当て力の限り潰したり、膨らみきらない乳房を鷲掴みし歪ませ、脇腹を抓る。法子は、その度に切ない小さな吐息を漏らすが、次第にその痛みも糧にして、どんどんと頂上に向かい昇り詰めていく。
「…いっても…いい、ですか?」
 快楽に掠れた甘ったるい声を出し、ねっとりとした表情で川瀬を見つめた。川瀬は卑下た笑みを浮かべると、法子の手の回るほどの細い腰に手を掛け、思い切り握り激しく法子を突いた。
 法子の曇ったような小さな喘ぎ声が、途切れ途切れに漏れる。
「ぁあ…い、いき…ます」
 法子が、これまで感じたことのない大いなる絶頂感に包まれながら果てると、川瀬も濃く臭いのきつい体液を法子の膣内にぶちまけた。
 法子は、小さな痙攣を起しそのまま川瀬の胸に突っ伏すと、意識を失った。

「おいっ、いい加減起きろっ」
 川瀬の怒鳴り声に、法子ははっとした。一体どれくらい気を失っていたのだろう。頭の芯が重く、じんじんと響く。法子は、自分を見下ろす川瀬に気付くと、羞恥に震え、陵辱された裸身を縮ませた。
「ふっ、今更、何恥ずかしがってんだよ。気も失うほど、よがり狂ってた癖に…」
 川瀬の嘲笑を浴びて、法子は自らの裸身を抱き、益々身を縮めた。
 法子にとって、今までで一番不潔で、そして拒否反応を示した男だ。そんな相手に、一番感じてしまった自分の身体が信じられない。昨夜、瀬田に貫かれたときよりも、何倍もの快感を覚えた。そのことが、辛く哀しい。
(この身体は…、もう、私のものじゃぁ、…無いのよ)
 自分に言い聞かせるように心で呟きながらも、本物のマゾに変貌していく自分を呪った。
(こんな…男に、感じちゃうから…、私は…、奴隷にされちゃうんだ…)
 自らを責め、自らの身体を蔑んだ。
 横たわったまま、小刻みに裸身を震わせる法子の臀部に、川瀬の容赦の無い蹴りが飛んだ。
「この、出来損ないっ。折角ヤってやったのに、御礼の言葉もねぇのか」
 法子は、川瀬の凄まじい形相に、弾かれたように額を付けた。
「ご、ごめんなさい。…あっ、あの…私のような、未熟な奴隷の…、お相手をして、頂き…有り難う、御座いました」
 川瀬は、法子を見下ろすと、頭を汚れた靴で踏み躙った。哀愁に満ちた小さな悲鳴を上げる法子に、川瀬は乾いた声で、
「てめぇみたいな、変態、始めてだ…。ほんと、そんな淫乱の癖に、今までよく生きてこれたな。どうせ、マンズリばかりこいてて、ろくな子供じゃぁなかったんだろ。いいか、そんなお前でも、奴隷としてやってけんだ。神様にでも感謝するんだぞ」
 浮浪者にまで蔑まれ、法子の身体の奥底に歪んだ戦慄が走る。頭の中では、必死でその戦慄を押さえようとしている自分がいる。法子は、その狭間で苦しみ、藻掻いていた。
「ついてこいっ」
 冷たく言い放つ川瀬が、踵を返した。法子の身体に、不安の震えが走る。
「早くしろっ」
 凄まじい形相で躊躇う法子睨む迫力に押され、法子は立ち上がった。川瀬はシートを捲ると表に出ていってしまった。法子の表情が、苦渋に歪む。
 恐る恐るシートを捲り、川瀬を探すと、川瀬は自分に射るような視線を浴びせながら、つかつかと歩いていってしまう。法子は眼を見張った。川瀬が歩を進めるその先には、浮浪者達が大勢屯っていた。法子の呼吸は止まり、恐怖に目が眩む。
「早くしろって言ってんのに、分かんねぇのかっ。この出来損ないがっ…てめぇの裸は、みんなに見せるためにあるんだぞ」
 川瀬の怒声に、法子の身体がピクリと反応するが、膝が音を立て震えていて、なかなか前に踏み出せない。
(私は…奴隷…。この身体は…皆様に、見て頂くために…存在するの…。この身体は…私のモノじゃないから…、恥ずかしくなんてないよ)
 法子は心の中で、必死に自分に言い聞かせる。そして、思い出したように大きく息を吸い込むと、美しくほっそりとした裸身を晒した。夕闇に映る法子の裸体は、みなの視線と感嘆の声を一斉に浴びて、益々赤味を帯びていく。心拍数は天を突き、呼吸も不規則で、その表情は苦渋に満ちていた。しかし、足の運びはぎごちないがゆっくりと浮浪者達に向かっていく。その足取りは、雲を歩くように頼りないのだが、みなから熱い視姦を浴び、次第に法子の表情が変わっていった。自らを抱いていた両手も、徐々に下がりだし、膨らみも翳りも露わになる。
(そんなに…見ないで)
 眉間に深い皺を刻み、極限の羞恥と恐怖に耐えながらも、浮浪者達の間近に歩み寄った。
「そんなとこに突っ立ってないで、みんなの中に入って、スケベな身体をよく見て貰え」
 川瀬が強い口調で法子に命令する。法子は、虚ろな視線を川瀬に向けると、小さく頷き浮浪者達の中央に立った。改めて見回すと、猥雑な視線が痛いほど自分に集中していることに気づき、法子の華奢な裸体は、羞恥と恐怖に震えが止まらない。
「手を頭の後ろで組んで、脚を大きく広げろ」
 川瀬のドスの利いた声に、法子の脳は最早従順そのものである。ゆっくりと命じられた姿勢をとり、湿った表情で川瀬を見つめる。
「まだオッパイはちっちぇんだな」
「でも、すげぇべっぺんだぜ」
「川ちゃんは良いなぁ、いつもこんな女抱けて…」
 浮浪者達の嘲笑を浴びるが、そんな中で一人が川瀬を妬むと、その相手に川瀬が射るような視線を向けた。
「勘違いするなっ。俺はな、こういうどう仕様もない変態奴隷の相手をしてやってるんだ。こいつらはな、人間の皮を被った、どスケベなんだ。こいつらは、人間じゃぁねぇんだ」
 川瀬の言葉が、法子の脳に叩き付けるように衝撃を与え、哀愁に満ちた表情を浮かべ項垂れた。しかし、命じられた屈辱的な姿勢を保ちながらも、蔑む言葉を浴びせられ、法子の体温が次第に上昇していく。川から吹き上げる冷たい風に愛撫を受けているかのように、熱い吐息を漏らす。
  
 全裸の法子を中央に佇ませ、浮浪者達はどこから集めてきたのか、食事を貪っていた。時折法子に残飯を投げつけると、自分の方を向くように命令する。法子は、その度に潤んだ表情で振り返り、命じられた方へ向きを変え、裸身を晒す。思考する意志を棄てた法子は、まるで操り人形のようだ。
 ひとしきり食事を終えた浮浪者達は、ふんぞり返り満足げなゲップを出している。相変わらず法子は、後ろに手を組み、脚を大きく開き全てを晒していた。
「おいっ、お前の足下に落ちてる餌、残らず食えっ。お前にとっちゃ、贅沢過ぎる餌だ」
 みなが法子の裸体に投げつけた残飯が、法子の足下に土を付け転がっている。法子は切なく潤んだ表情を川瀬に向けるが、震える吐息を漏らし、膝を付く。
「恵んでくれたみんなに、御礼しろっ。全く礼儀知らずの奴隷だ」
 川瀬の叱咤に、法子はピクリと反応すると、その場で土に額を付け、震える小さな声で、
「み…皆様…。贅沢な…餌を、与えて…頂き、有り難う…御座います」
 自分でも信じられないほど卑屈で従順な態度に、自分自身驚愕を覚えた。
「よしっ、食って良いぞ」
 法子は、気怠そうに頭を起こすと、地面に転がっているパンを舌で掬った。口の中で砂が不快感な音を立たせるが、法子はそれをまるで無視するように胃の中に次々に送り込んでいく。
「変態っ、うめぇか?」
「もっと、ケツ上げろ」
「ほらっ、脚広げて、スケベなコーマン見せろよ」
「こいつ、本物だ。濡れてるぜ」
 浮浪者達の揶揄が、法子の奥底のか弱い部分を、無惨にぼろぼろにしていく。極限の屈辱と羞恥、そして恐怖が法子の身体を食い尽くし、本能を剥き出しにした自分が晒される。うっとりとした表情と哀愁を帯びた表情を交互に浮かべながら、残飯を掬う法子の人としての尊厳やプライドは、次第に失われつつあった。

「奴隷っ、…セックス、してやろうか?」
 全ての残飯を平らげると、川瀬が無造作に言い放つ。法子の心臓が、口から飛び出そうなほど激しく脈打ち、頭がくらくらする。法子は、強く唇を噛みしめると、ゆっくりと辺りを見回した。みなの好色と侮蔑に満ちた視線が、法子の裸身に突き刺さる。こんなにも沢山の視線の中で、痴態を晒すことに法子の美貌が歪む。しかし、自分の身体が自分の意志に逆らい、淫靡な反応を見せた。そして、困惑しながらも妖艶な表情を浮かべ、彷徨う視線を川瀬に向ける。微かに口を開けると、奥歯が音を立てていた。
「どうなんだ変態?…みんなの前で、俺とヤリてぇか?」
 法子は、どうしようもない熱い吐息を漏らす。淫靡な血液が、法子の身体を激流となり駆け巡り、乳首が固く勃つ。
「は…い。…セックス、…したい、です」
 法子は掠れた声で答えると、唇を強く噛んだ。
「それじゃぁ、ヤってやるか…、立って、ケツ突き出せ」
 勿体ぶった表情を浮かべ、川瀬が逞しくなった一物を取りだし、法子に近づいてくる。法子は、ゆっくりと立ち上がると、震える小さな尻を川瀬に差し出した。その表情には、最早躊躇いも戸惑いも感じられず、被虐に溺れる妖艶な美貌で川瀬を迎えた。
「おやおや、ついさっき、ヤったばっかりなのに、ほんとスケベな変態だ」
 川瀬は呆れたような口調で法子に蔑んだ視線を送ると、法子の熱く潤う秘肉に、自らの男根を突き刺した。法子の鼻から、艶を帯びた吐息が漏れる。
「おいっ、お前ら…。好きに触って良いぞ」
 涎を垂らさんばかりに見物していた他の浮浪者達が、川瀬の言葉に、一斉に法子の裸体に群がった。法子の唇を奪う者、法子の耳に舌を這わせる者、乳房を揉みしだく者、乳首を噛みしめる者、何十という手が、法子の華奢な裸体を這いずり回り、法子は気が狂わんばかりの狂騒に苛まれた。しかしその裸身からは、全身がまるで性感帯にでもなったかのように甘美に溺れる快楽を、法子に容赦なく送り込んでいく。唇が塞がれ、切ない吐息を漏らすことさえ出来ない法子は、まるでこの享楽を体内に押し込まれているようで、破裂しそうだ。
「おいっ、そんなんじゃぁ、こいつの変態な身体は、満足しねぇぞ。もっと、荒々しく、びしびしひっぱたいてやれ」
 川瀬は、一物を激しく抽送させながら、みなを煽る。みなは、残忍な表情を浮かべると、法子の頬に平手打ちをしたり、乳房を握りつぶしたり、法子の裸身の至る所を抓ったり、挙げ句の果てに、木の枝で法子の蠢く裸体に激しい打擲を与えたりした。そんな残忍な扱いを受けながらも、法子の身体は、益々高ぶり、妖艶さを増しながら本物のマゾへと強引に開花されていく。
 頭の中が真っ白になるほど、被虐への甘美な想いを追い求める法子に、最早それを止める力も理性も残ってはいなかった。
 そして、先程川瀬に貫かれた時に感じた絶頂感など、まるで子供騙しのような感覚に陥るほど大きな頂きに甘美な悲鳴とともに昇り詰めると、小刻みな痙攣を起こした。
 淫獄へと加速を増してまっしぐらに堕ちていく自分に、自らの意志が籠められているような、そんな気がしてくる。心中に浮かんだ自分への猜疑心は、必死で打ち消しても、拭い去ることが出来ない。ふと、虚空を睨んだ瀬田の横顔が、法子の脳裏に浮かんだ。自分は、瀬田が危険を犯してまで救い出すほど価値のある人間なのだろうか。
(……そうだ…、私は、もう…人間じゃぁ、ないんだっけ…。私は…卑しい…奴隷だっけ…)
 誰とも知れぬ男の胸に未だ醒めやらぬ火照った裸身を預けながらも、薄れいく意識の中で、法子は穏やかな表情を浮かべていた。淫靡なる自分自身との戦いに、敗北したのか、勝利したか…。

 


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