『麗と隷』
       第十話       

第十話

 法子は、部室で全裸のまま正座させられていた。美奈達は賑やかに昼食を摂っている。堪らなく惨めで、屈辱的であったが、その思いが次第に薄れ、全裸で正座していることに、ふと違和感を感じない瞬間さえある。自分の意に反し次第に美奈達を支配者と認めてしまっていることに気づき、法子は小さな溜息を漏らす。
 複雑な胸中に苛まれている法子の目の前に、パンの欠片が放られた。法子は縋るような視線を美奈に向けた。
「法子。いつものように、食べナ」
 法子は哀愁の籠もった瞳を伏せ、小さな溜息を漏らすと、埃の付いたパンに口を近づけた。みな食べるのを止め、法子の行動に好奇の視線を向ける。
「へぇ〜、法子って、いっつもそうして食べてるんだぁ」
「ほんと、人間じゃ、無いよね」
 みなも次第に、法子が事務所でどんな扱いを受けているのかを知り、少々の事では驚かなくなってきている。法子は、屈辱に掻き毟られながらも、パンを喉に押し込む。
「餌を、…頂き、有り難う、御座いました」
 憐情を煽るような表情を浮かべ、震える声で礼を言う法子を面白がって、みな法子の前に残飯を放り出す。法子は極限の屈辱に追い込まれながらも、礼を言い、砂混じりのそれを口に含んでいった。

「さぁて、ねぇ法子。どんな躾にしよっか?」
 食事を終え、煙草の煙を苦渋に歪む法子の顔に吹き付けながら、美奈が喜々とした表情で法子に言った。美奈は、最も憎むべき存在が、自分の思い通りに虐待出来ることに興奮している。
「立ちなっ」
 美菜の鋭い声に、法子は弾かれたように立ち上がる。みなの視線が震える法子の裸身に突き刺さり、紅潮させた身体を更に紅く染めた。
「ねぇ〜、法子。ひとりエッチ、したい?」
 美菜が、法子の顎のラインを撫でながら、ぞっとするほどの優しい声で問いかける。法子は、唇を噛みしめ、俯いた。すると美菜が、法子の鳩尾に、手にしたコーラの瓶の尖端を叩き込んだ。
「いっ…、ぅう…」
 美菜は、籠もった悲鳴を上げ蹲った法子の髪の毛を鷲掴みすると、強引に立たせた。法子の表情が、苦痛に歪み、眼からは涙が滲んでいる。
「法子は、変態だから、み〜んなの前で、したいのよね?」
 再び美菜が、猫なで声を出し、苦痛と恐怖に喘ぐ法子の顔を覗き込む。法子の歯がガチガチと音を立て震えだした。美菜は唇を歪ませると、再び法子の鳩尾にコーラ瓶を叩き込ませ、鈍い音を立たせる。苦痛に蹲ろうとする法子を、美菜は掴んだ髪の毛で支えた。
「どうなのっ」
 美菜の鋭い声に、
「は…い。…したい…です」
 絞り出すような声で、法子は答えた。美菜は、唇を更に歪ませ、法子に先程のコーラの瓶を差し出す。
「これ、貸して上げる。…変態のお前のことだから、こんなんじゃ物足りないかもしれないけど、我慢してね」
 美菜は震えている法子の手に、コーラ瓶を握らせた。法子は苦悩に満ちた視線を美菜に向けるが、美菜は唇を歪ませたままだ。
「折角、貸して上げるって、言ってんのに、このペットは、お礼も言えないの?」
「いっ…、いぇ…、有り難う…御座います」
 法子は震える裸身の腰を折った。
「それじゃぁこれから、変態ペット、法子ちゃんの、ひとりエッチショーでぇ〜す」
 美菜が戯けた声を上げ、みなを振り返るとやんやの歓声が起こる。法子は羞恥に身体を捩る。ふと、視線を上げると、みなの好色に満ちた猥雑な視線とぶつかる。その裸身に突き刺さるような猥雑な視線に刺激を受け、法子の心臓は徐々に淫靡な血液を送り出し始めてしまった。
(いや…、そんなに…見ないで…。)
 自らの裸身に眼を落とすと、固く天を突き始めた乳房が、愛撫を待ちわびているように見える。自らの淫靡な性癖に、法子は大きく吐息を吐く。
「素直に、なれないの?」
 美菜が法子に恫喝するような声で言う。法子は焦点の合わない瞳を上げた。みなの熱い視線とぶつかる。法子の身体に、言いようのない戦慄が走り出す。
(もう…、いいよね。)
 貪欲な性癖を持つ自分を押し戻すことが疲れたかのように、法子の胸には、観念の想いが湧き出てくる。
「ほらっ、早く。」
 美奈に急かされ、法子はコーラ瓶を見つめた。呼吸は荒く不規則になり、そして、熱く切ない吐息を漏らすと、眉間に苦悩の皺を刻み、コーラ瓶を口に含んだ。その官能的な仕草は、男子生徒達の股間に大いなる刺激を与え、猥雑な唾を飲み込ませた。
 法子はもう一度視線を上げ、妖艶な表情を浮かべると、唾で滑った瓶をゆっくりと自らの秘肉に埋没させた。法子の裸身に、甘美なる戦慄が走る。
「やり始まった…」
 雅之が口を開け、痴呆のような表情で呟く。哲哉は、羞恥に震えながらも官能の波に飲み込まれ、自らの本能を押し止められなくなった法子の痴態を、熱い炎を滾らせた瞳で見つめた。
 法子は、唇を強く噛んでいるものの、淫猥で熱い吐息が小鼻から漏れる。法子の痴態を食い入るように見ていた秀一が、美奈に憐れみを請うような表情を向けた。
「美奈…、おしゃぶりだけでも、駄目かぁ」
 美奈が少しだけ思案下な表情を浮かべた。
「陽子さんに、禁止されてんのは、本番だけだし、…いいんじゃないの」
美菜が呑気に答える。
「ちょっと、するならこんなトコでしないでよ」
「あんた達のものなんて、見たくないよ」
 女子達の抗議に、秀一は首を縮めた。哲哉はみなが法子を揶揄するなか、一人黙って法子の痴態を見つめている。
(俺のものに、してやる。)
 静かな決意を胸に秘め、法子を睨む。法子はそんな会話や想いも知らず、上気させた裸身の温度を益々上昇させ、もう一人の淫靡な自分に身を預けていく。
 ふと、美菜が立ち上がり、法子の背後に立つと、法子の乳房を柔和に揉み始めた。法子の妖艶な吐息は一層荒くなり、瓶を持つ手も激しくなると淫らな体液が牝臭を放ち滴っていく。美奈は官能にどっぷりと浸かった法子の耳元で、熱く囁く。
「ねぇ、法子。わたしから、提案があるんだけど…」
 法子は潤んだ瞳を、気怠そうに美菜に向けた。
「お前のこと、大っぴらに虐められるのって、今は、この部室だけでしょ。…でも、それだけじゃぁ、変態の法子には、不満でしょ」
 法子は淫靡な海に埋もれていて、美菜の真意も分からず、うっとりとした表情でこくりと頷く。
「それじゃぁ、お前が可愛そうだから…、あの契約書、うちのクラスみんなに発表して、教室でもさ、お前のこと、ちゃんと虐めてあげたいのよ。…そうすれば、お前も、もっと恥ずかしいこと、出来るでしょ。…どうかな?」
 法子はとろけそうな瞳を、自分を熱く見つめる七人に向ける。ふと、それが教室でクラスメート全員の前で、自分を慰めている錯覚に陥る。
「ぁ…ん」
 法子の喘ぎ声が、思わず口から漏れる。コーラ瓶による卑猥な抽送が、淫靡な音を立たせている。
「みんなの前でしてるとこ、想像しちゃったの?」
 美菜の熱い囁きに、法子は歯に噛みながらも、微かに頷く。法子の身体に、甘美な戦慄が止めどなく幾度も襲う。
「じゃぁ、今度、みんなの前で、あの契約書、発表しようね」
 法子は最早正常な判断を下せず、淫靡な自分に後押しされ、こくりと頷く。そして、再び妖艶な瞳を美菜に向け、甘美に掠れた声で、
「い…、いっても…、いい…ですか?」
 美菜は含み笑いを浮かべ、法子を許すと、素早く法子の菊門にイチジク浣腸を2個,3個と押し込んだ。法子は、それさえも昇り詰めるための糧とし、甘美に震える裸身を仰け反らすと、天を仰ぎ、大きく痙攣させた。そして、その場に崩れ落ちる。
(また…、いっちゃった…)
 法子は、哀しい光を宿した瞳を伏せると、震える裸身を自ら抱き、縮ませた。

「いつまで、寝てんだよ」
 美菜に臀部への強烈な蹴りを喰らい、法子は弾かれたように、その場に正座する。
「お前のスケベなズリマン、見てやったんだよ」
 法子は唇を噛みしめるが、額を床に付ける。
「…わたしの、厭らしい姿を、ご覧頂き、有り難う御座いました」
 屈辱に震える声で、被虐の礼を言う法子の腸内に、不気味な音が響く。法子は愕然とした。官能の波に巻き込まれ、浣腸を施されたことを忘れていた。汚れた床に、羞恥で自らの裸身を縮ませ正座する法子を、次第に猛烈な腸の痛みが襲い始めてきた。法子は、唇を噛み締め、苦渋に満ちた表情で美奈を見上げるが、彼女は冷酷な笑みを浮かべたまま法子を見下している。
 まともにトイレなど行かせてくれるはずもない…、美奈の表情を見て、法子は絶望的な想いに駆られた。しかし、腸を襲う捻るような激痛は、限界に近づいてくる。
「あ…の、…ト、トイレに、…行かせて下さい」
 もしかしたら…、法子は一縷の望みを賭け、再び床に額を付けると、屈辱に満ちた懇願をした。美奈は、その瞳に冷たい炎を燃やすと、土下座する法子の頭を踏みつけ、体重を掛けた。法子の切なく悲哀の籠もった小さい呻き声が、漏れる。
「お前、ペットのくせに、トイレなんて使えると思ってんの?…トイレはね、人が使う物なんだっ。お前みたいな、卑しいペットが、使えるわけねぇだろっ」
 美奈は、法子の頭に乗せた足を捻り、更に体重を加えながら声を荒げた。法子は、圧倒的な屈辱感に苛まれ、頭の芯がじんじんと痺れだした。心臓も壊れそうなほど、その心拍数を上げる。美奈の靴の下で、声にならない苦悶に満ちた悲鳴を漏らし必死に耐える法子は、自らの被虐にまみれた運命を呪った。
 美奈は足を降ろし膝を折ると、法子の髪の毛を乱暴に掴み、涙で濡れた法子の顔を強引に起こした。その法子の表情を見たとき、美奈は思わず息を飲んだ。乱れた前髪から覗く法子の瞳は、涙で輝き、悲哀の籠もる表情がなんとも美しい。絶対的優位な立場に立ちながらも、その美しさに於いては、法子の足下にも及ばない。どんなに汚しても、どんなに辛酸を舐めさせようとも、それを嘲笑うかのように、法子の清楚な気品と美しさは、増してゆく。美菜は、一瞬でも憎悪すべき相手に心を奪われたことで、もどかしいほどの苛立ちを覚えた。心の奥底では、得体の知れぬ炎が音を立て、燃え始めていった。  
 美菜は、その苛立ちをぶつけるかのように、法子の頬に強烈な平手打ちを見舞った。法子は、自分の美貌が、美菜の嗜虐心を煽っていることなど思いも依らずに、ひたすら許しを請う。
 やがて美菜は立ち上がると、部室の隅に置いてあったバケツを取ると、法子の震える裸身に投げつけた。バケツの転がる派手な音と共に、法子の籠もった悲鳴が響く。他の生徒達は、次第に凶暴さを増していく美菜を、呆然と見つめていた。
「お前の、人を殺した奴隷の、便器だ。…有り難く使え」
 法子は、凄まじいまでの美菜の形相に、心底震えた。腸を襲う激痛も、益々激しくなっていく。法子は、苦渋と哀愁に満ちた表情を美菜に向けると、小さな震える溜息を吐いた。
(わたしを…憎んでる)
 法子は、その美しい瞳を伏せ、諦めきった表情を浮かべると、やがて転がったバケツにのろのろと這っていき、それに跨った。すでに脂汗が全身に滲んでいる。
「みんなの方を、向くんだよ」
 美菜の鋭い声に、法子は溜息を吐くと、みなを振り返った。みなの血走った視線とぶつかり、思わず眼を伏せると、強烈な竹刀の一撃が、法子の背中を襲った。
「なに、目を伏せてんだよ。ちゃんと目を開けて、みんなに見て貰え」
 美菜の怒声は、益々激しく、狂気を帯びてくる。法子は、怯えた瞳をみなに向けた。法子の心臓は激しく暴れ、呼吸も不規則になる。
「法子。ペットの汚物管理は、御主人様の義務だから…、これからは、勝手にトイレを使ったら、駄目だからね。…分かった?」
 法子を見下ろし、唇を歪ませる美菜を仰ぎ見ると、
「は…い。…宜しく、お願いします。」
 掠れた声で小さく答えた。
「じゃぁ、出しなさい。」
 法子は、強く唇を噛むと、再びみなに視線を向けた。みな、法子に刺すような視線を浴びせている。
 法子は、苦渋にその眉間に深い皺を刻ませ、汗の滴る裸身を捩る。
(もう…、駄目)
 既に限界を遙かに超えている腸の痛みに、法子は崩壊の瞬間を悟った。

「うわぁ、ほんとに出したぁ」
「くっさい…。嫌だぁ」
 香澄達の容赦のない揶揄を浴びながらも、大いなる屈辱の証をバケツに叩き付ける法子は、部室中にその汚臭を漂わせ、小刻みにその裸身を震わせていた。
 全てを出し切り、極限の屈辱に放心状態となっている法子に、美菜が何事か耳打ちをする。法子は諦めたように小さく頷くと、汚物の溜まったバケツを手にし、みなにふらふらと歩み寄る。
「皆様の…ペット、…ウンチ、です。…どうぞ、ご覧、下さい」
 法子は震える手でバケツを掲げながら、頭を垂れる。
「超臭い。あんた…なに食ってんの?」
「きったねぇ…、なんとかしろよ」
 法子は涙の滲んだ瞳を伏せ、みなに哀しい謝罪を繰り返す。極限の羞恥と屈辱は、法子の思考能力を奪い、しおらしく恭順にさせた。
「さて、法子。…その、くっさいの、始末しに行こうか」
 美菜の瞳には、狂おしいまでの炎が燃え滾っていた。

 与えられた露出度の高い制服を着せられ、法子は、汚物の入ったバケツを抱え、校舎内を歩かされていた。昼食時間も過ぎ、部活に向かう生徒達と何度もすれ違う。みな、異臭に眉をひそめ、法子を振り返る。それを見ては、法子の後から付いてくる八人が、含み笑いをしていた。
 法子は、俯きながら、頼りない足取りでとぼとぼと歩く。不規則な呼吸をする度に、自らの汚臭が鼻についた。その臭いを嗅いでいると、惨めさも、屈辱も法子の許容範囲を遙かに越え、頭はじんじんと音を立て痺れ、思考能力を奪っていった。
 法子は、トイレの前まで来る度に、彼らを振り返るが、美菜が頭を振って許してくれない。法子は小さな溜息を吐きながら、再び歩を進めた。ようやく許しが出たのは、法子達の教室に一番近いトイレであった。法子は、みなが見つめる中、便器に汚物を流し込み、フラッシュレバーに手を掛けた。
「法子、流すんじゃないよ。そのままにしときな」
 美菜の声に、法子は哀愁に満ちた瞳を伏せると、そのまま手を引いた。
「でも、私達のトイレに、あんな臭いの流して欲しくないよね」
「ほんと、気分わるっ」
 香澄達の声に、美菜は嬉々とした表情で振り返ると、
「そうねぇ、…じゃぁ、今度は校庭に穴掘らせて、そこに始末させよっか」
「ふふ、それ、最高」
 女生徒達の残酷な会話に、法子は心の奥底で溜息を吐く。
「法子。バケツちゃんと洗いなさい。これから、ずっとお世話になるんだからね」
 法子は美菜の声に、ゆっくりとした反応で、バケツを洗った。呆然とバケツを洗う法子に、哲哉が近づくと、法子のか細い手首を掴んだ。
「来い」
「何するの?」
 美菜の問いに、哲哉は唇を歪ませると、
「お前らは、部室に帰ってろ」
 毅然とした口調で美菜達に言い放つと、法子を男子便所の個室に連れ込み、タイルに跪かせた。
「法子。…舐めさせてやる」
 哲哉はもどかしげに、隆起した一物をズボンから取り出し、法子の目の前に差し出した。
「哲哉、本番は駄目だからね」
 扉の外からの美菜の怒ったような口調に、
「分かってるよ。…とっとと行け」
 美菜の気配が無くなると、哲哉は法子の顎を掴み、顔を上げさせた。
「法子。…俺の、俺だけの、女になれ。…オヤジに頼んで、今の事務所から解放してやる」
 法子は、哀愁の籠もる瞳で、静かに哲哉を見つめた。哲哉に付いていったとしても、結局は父親である黒部の掌からは逃れ得ない。
(わたしには、…瀬田さんが、いる)
 黒部との関係を絶とうとしている瀬田ならば、全てから解き放たれるような気がする。法子は、鋭い眼光で見つめる哲哉に、曖昧な表情を見せると、やがて美しい瞳を伏せ、哲哉の一物を口に含んだ。

 哲哉の白濁を飲み込まされた法子は、部室に戻り、今日の虐待への御礼を土下座して言わされ、今後の被虐を請う台詞を強制された。そして、ようやく解放された法子は、校門の近くで、美菜と共に車を待っていた。美菜の何気ない仕草にさえ怯え、震えながら佇む法子は、すっかり美菜達への恐怖と服従心を、小さな胸に植え付けられてしまったようだ。
 ようやく田口の運転する車が校門に滑り込んできた。法子は項垂れたまま、後部座席に乗り込む。口から出るのは、切ない溜息だけだ。
 ふいに助手席に乗り込んだ美菜が、怯える法子を振り返った。
「いまから、ママのとこに行くけど、お前も付いてきな」
 法子の瞳が大きく見開いた。

「ママ、どう?具合は?」
 美菜に従い病室に入った法子は、亜希の姿を見ただけで、その華奢な身体に震えが走る。
 気怠そうに振り返った亜希は、法子をその眼の端に捉えた瞬間、それまでの青白い顔色から、一気に血の気を取り戻した。
「法子…」
 狂気の笑みを浮かべた亜希に、法子の背中に冷たいものが流れた。美菜に背中を押され、亜希の傍らに立った法子の脚が小刻みに震えている。美菜に尻を叩かれ、法子は小さな溜息を漏らすと、腰を深々と折った。
「亜希…様。…わたしの、せいで、辛い思いをさせてしまい…、申し訳、ありません。…早く、お元気になって、どうぞ、罪深い…奴隷のわたしに、厳しい罰を与えて下さい」
 この世で、最も恐ろしいと思う女の回復を願い、被虐を請う。法子の胸が痛いほどに締め付けられた。
「ふんっ、口先だけは、奴隷らしくなったじゃない」
 法子は、頭を垂れたまま、か細い声で答える。
「は…い。…亜希、様や、美菜様の、お陰、です」
恐怖で微かに掠れている。怯える法子を、亜希は鼻で笑うと、
「お前、本当に、わたしが元気になれば良いって、思ってるの?」
 亜希は法子の髪の毛を鷲掴みすると、顔を起こさせ、低く恫喝するような口調で法子に訪うた。
「は、はい。…どうぞ、早く、元気になって、下さい」
 亜希は瞳を吊り上げると、法子の頬に強烈な平手打ちを見舞った。法子の膝が音を立て震える。
「嘘…だろ。ずっと、このまま入院してれば良いって、そう思ってンだろ」
「い、いえ…」
 法子はそこまで言うと、唇を噛み、長い睫毛を伏せた。陽子や梅田達から、散々言い聞かされている言葉が、恐怖に縮む法子の胸に突き刺さる。…そう、支配者が白と言えば白だし、黒と言ったら黒なのだ。自分にそれを否定する権利などない。
「どうなの?そう思ってんだろ」
 亜希の声が益々荒くなる。肯定するも否定するも、結局虐待を受けるのだ。
「は…い。」
 亜希の瞳が、不気味に歪む。
「何が、はい、なの?」
 法子の震えは、歯の音を立たせた。
「も、申し訳、有りません。…ご、御免なさい」
 法子は、ひたすら謝罪を繰り返した。背中に冷たい物が流れる。
 ふいに亜希が法子のスカートを捲った。病室に来る前に、車の中でショーツを美菜に取り上げられてしまったので、法子の幼気な陰毛が露わになる。
「ふん、…一応、下着は付けてないんだね。そうよ、それが、私達への礼儀ってもんだわ」
 亜希は、尚も震える法子の股間に手を伸ばすと、薄い翳りを五、六本鷲掴みし、それを勢いよく引き毟った。
「くっ…」
 法子の口から、短く小さな悲鳴が漏れた。
「お前は、…わたしが死ねばいい、そう思ってンだろっ」
 亜希は怒声とともに、再び法子の陰毛を引きちぎる。法子は苦渋の皺を眉間に深く刻ませながら、必死で謝罪の言葉を繰り返した。
 亜希は毟り取った幼気な陰毛を、病室の床に放った。
「法子。お前の穢れた毛で、私の病室が汚れちゃっただろ。口で、綺麗にしな」
 法子は、哀愁の籠もった瞳を伏せると、震える膝を折った。そして、小さな溜息を吐くと、屈辱と恐怖に音を立てている唇を開き、自らの陰毛を可憐な舌で吸い取っていく。法子の瞳からは、涙が滲み始めていた。
 亜希は、病室の不衛生な床を、這い蹲って舐める法子を、小気味よい表情を浮かべたまま、見下ろしていた。今まで見たことも無い凶暴な母親に、美菜は、驚きの表情で見つめている。しかし、入院してからというものの、生気を失ったような母親が、法子を見た途端に、急に生き生きと虐めている姿を見て、胸を撫で下ろした。
 美菜の想いを余所に、亜希はゆっくりと立ち上がり、床を舐めている法子の背後に回ると、法子の臀部に、思い切り蹴りを入れた。
 切ない悲鳴を上げ、前に突っ伏した法子は、力無くその場に蹲る。亜希の虐待は、法子の精神も肉体も追いつめる。
「お前、誠意ってもんが、籠もってないんだよ。本当に、私の病室を、綺麗にしようって気があるの?」
 法子は、弾かれたようにその場に、土下座し、額を床に付ける。
「ご…御免なさい」
 凄まじいまでの嵐をその身に受け、法子の声は震えている。
「素っ裸になって、仰向けになりなっ」
 法子の思考能力は次第に薄れ、まるで催眠術にでも掛けられたかのように、亜希の命令に従順になっていく。ふらふらしながら立ち上がった法子は、制服を床に落とすと、冷たい床に仰向けになる。すらりとした裸身は、恐怖に萎縮していた。亜希への恐怖が、法子の羞恥心を奪い、哀愁の籠もる怯えた表情で、亜希を見つめた。
 亜希は法子を唇を歪ませ見下ろす。その瞳には残忍な炎が音を立て燃えていた。そして、何の躊躇いも見せず、法子の程良い肉付きの太股に足を乗せた。そして、バランスを取ると、両脚を太股に乗せる。法子は、軋むほどに奥歯を噛みしめ、拳を強く握った。
「お前の、穢れた身体を、私の足の裏で、綺麗にして上げる」
 亜希は、唄うように言うと、再び眼を吊り上げ、法子の下腹部に足を乗せると、体重を掛けた。法子の呼吸は不規則になり、表情苦渋に満ちている。
「礼儀知らずの、奴隷だね。折角お前の、穢れた身体を綺麗にして上げるって言ってンのに、御礼の言葉も無いのかい?」
 少しでも力を抜けば、亜希の足が法子の下腹部を突き破りそうで、必死で腹筋を緊張させていたが、
「あ…、有り難う、…御座います」
 苦痛に途切れ途切れになりながらも、何とか言葉を発した。
「全然、感謝の気持ちが足らないわ」
 苦痛にその美貌を歪ませ、喘ぐ法子を見下ろしながら、亜希は唇を歪ませる。そして、太股に乗せていた足を、法子の膨らみきらない乳房に乗せた。
 法子の肋骨は、不気味に軋み、乳房は哀れな程、潰れている。亜希は陶酔しきった表情を浮かべると、下腹部に乗せた足も乳房に乗せた。
「ほらっ、感謝しなっ。お前の、オッパイ、揉んでやってんだ。変態のお前には、気持ちいいだろ?」
 法子は、激痛と闘いながらも、か細い声で、
「ぁっ…は…い。と、とても、気持ちいい…くっ…です。…あ、有り難う…御座います」
 苦痛に刻んだ眉間の皺は、尚もその深さを増す。
「ふんっ。全然、気持ちが籠もってないって、さっきから言ってんだろっ」
 法子は謝罪と御礼の言葉を繰り返す。呼吸をするのも、言葉を発するのも苦痛だ。
 二人のやりとりを黙って見ていた美菜であったが、美菜にも嗜虐の炎が燃え始めた。ゆっくりと法子に近づき、腰を下ろすと、法子の翳りに手を伸ばした。
「法子。脚、開きな」
 法子は、震えながらも美菜の言葉に従う。美菜は、露わになった法子の秘部に手を忍ばせる。
「やっぱり…、ママ、こいつ、濡れてるよ」
 濡れてる…?、嘘だ。こんなに、辛くて、痛いのに…、法子は自問自答しながらも、自分の身体が持つ、貪欲で淫靡な血液を呪った。
「全く、どうしようもない変態だわ。この、スケベな身体で、聡を殺したんだ。パパを、誑し込んだんだ」
 亜希は、その瞳を更に吊り上げ、法子の顔に足を乗せ、踏みにじった。法子の美貌は無様に醜く歪み、押し潰される。美菜は、法子の秘部を荒々しく、淫靡な音を響かせ始めた。
「すっごい、…スケベなおつゆが、一杯出てきた」
 美菜が呆れたような口調で、嗤う。法子の意識は次第に薄れ、苦痛も屈辱の想いも遠のくが、それに入れ替わるように、被虐でたかぶる意識が増幅していく。
 亜希は、そんな法子の身体を、まるでゴミでも踏み付けるかのように、蹂躙していった。

「法子、またよろしくね」
 ようやく亜希に解放され、病室を出ようとすると、美菜が法子に小声で言った。その表情は、法子を虐待する強気なものではなく、母親を想う健気な少女のようである。
 法子は、ふとそんな美菜が羨ましく思えた。どんな姿であっても、生きていれば…法子は、失った両親に想いを馳せ、病院の廊下を項垂れ、田口の待つ車に向かった。
「おぅ、奴隷アイドル」
 突然の声に、法子は顔を上げた。達夫だ。法子は思わず息を飲むと、それまでの気弱な少女から、憎悪に満ちた表情へと豹変した。
「なんだ?その顔は?」
 法子は、達夫の下品な視線に、美しい瞳を吊り上げ、抵抗を見せる。睨み付けたまま無言で達夫の横をすり抜けようとすると、達夫が法子のか細い腕を掴んだ。
「止めてっ」
 恥辱にまみれ、辛酸を舐める生活を強いられる法子であったが、達夫にだけは、絶対に服従したくない。その想いが、法子を強くさせる。
「ふんっ、誰にでも、何処ででも、何時でも、股を開かにゃならん奴隷のくせに、俺にだけは、反抗するんだな」
 法子は強く唇を噛みしめ、達夫の下卑な笑みを睨む。
「声を出すわよ」
 達夫が弾かれたような笑い声を上げた。
「出してみろよ。」
 達夫は、法子の折れそうな腰に手をあてると、法子を強引に抱え込んだ。
「止めてっ…嫌っ」
 最も憎悪する相手の息が、法子の美貌にかかる。
「ちょっと、あなた、何してるの?ここは、病院ですよ」
 看護婦が、もみ合う二人に近づき、達夫に鋭い視線を向けた。
「ふふ、看護婦さん。こいつのこと、知ってるか?」
 達夫が、睨む法子の顎を掴むと、看護婦の方に法子の顔を向けさせた。看護婦は、一瞬戸惑ったような表情を見せると、大きく眼を見開いた。達夫の腕の中で藻掻く法子であるが、やはりまだ少女だ。大人の力には負けてしまう。
「そう、倉木法子だ。…こいつはな、世間ではアイドルだ、なんてちやほやされてるが、本当のこいつの姿は、変態奴隷なんだ。」
 法子は、唇を血が出るほど噛みしめ、達夫の腕を振り解こうとする。達夫は、藻掻く法子を見て、唇を歪ませると、法子のスカートに手を掛け、それを捲り上げた。
「ほら、なっ。パンツも履いてねぇだろ。」
 痴呆の様な表情を浮かべる看護婦に、達夫は下品な笑顔を向けた。
「や…止めて」
 法子の切ない悲鳴が響く。看護婦は、法子の悲鳴にやっと我に返ると、
「や、止めなさい。警察を呼びますよ」
 騒然とする廊下に、他の人の眼も集まり出す。
「あぁ、俺は、かまわんよ。警察を呼ばれて、一番困るのは、こいつだからな」
 法子は、捲り上げられたスカートをなんとか戻すと、再び達夫を睨んだ。
「達夫さん。どうぞ、勘弁してあげて下さい」
 いつの間にか田口が、背後に来ていた。達夫は急に、それまでの勢いを失うが、精一杯田口に虚勢を張る。
「田口、いったいこいつへの教育は、どうなってんだ。絶対服従の奴隷のくせに、俺には反抗しっぱなしだ。陽子とかいう女にいっとけ」
 田口は、それには答えず、法子の腕を掴む。
「あまり、ごねないで下さい。得しませんよ」
 にこりともせず達夫に言い放つ田口を見て、法子の瞳からはそれまで堪えていた涙が滲み始めた。呆然とする看護婦を余所に、集まりだした人を掻き分け、田口は法子の腕を引いていく。
 そして、車の後部座席に法子を押し込めると、猛然と車を出した。
 法子の瞳からは、堰を切ったように涙が溢れ出た。声を上げ、激しい嗚咽を漏らす法子は、このまま自らの存在全てを、涙とともに流してしまいたいと思った。車窓から流れる風景は、そんな法子の想いも知らず、いつもと変わらない装いで遙か後方へと流れていく。

 


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