『麗と隷』
       第八話       

第八話

 法子は全裸のまま、瀬田の運転する車の後部座席で項垂れていた。隣には加奈子がいる。
「ねぇ、瀬田さぁん、何して遊ぶ」
「折角法子がいるんだから、法子で遊ぼうぜ」
 二人の会話に、法子はその裸身を益々縮めた。
「ふふ、怯えちゃて、かっわいぃ…」
 加奈子が法子の乳房に触れてくる。先程のクラブでは散々弄ばれたが、昇り詰めるまでには至っていなかった法子の身体は過敏になっているようだ。加奈子に触れられただけでその乳房は瞬く間に固くなり、乳首も痛いほどに天を突く。先程まで震えていた裸身は徐々に被虐の炎が灯り、加奈子のされるがままに委ねる。
「法子の肌って、すんごく気持ちいい。…何か、私まで変な気持ちになってきちゃう」
 加奈子はその瞳に妖しい光を宿し、法子の裸身を愛撫する。学校で、駅で、そしてクラブで被虐の限りを尽くされた法子の身体は疲弊しきっていた。しかし、その気怠い身体に受ける愛撫はなんとも心地よく、素直に受け入れてしまっている。
「ぁあ…ん」
 加奈子の手が法子の潤い始めた秘部に伸びると、法子の口から熱い吐息が漏れる。
「感じてんだぁ…。い・や・ら・し・い…」
 加奈子が法子の耳元で熱く囁く。加奈子の愛撫は執拗に、そして法子の感じる部分を確実に押さえている。法子の裸身は、最早理性の垣根を越え加奈子の愛撫に心地よく浸っていた。押し寄せる官能の波は幾度も法子を飲み込み、微かに開いた唇からは熱の籠もった吐息が絶え間なく漏れる。
「法子、いきたい?」
 加奈子が意地の悪い笑みを浮かべ、法子の上気した顔を覗き込む。法子は湿った視線を加奈子に絡ませるとコクリと頷き、妖艶な口調で、
「いかせて…下さい」
 加奈子は法子の答えに唇を歪ませ、
「だぁめ。だって、まだお前のこと、虐めてないもん。つまんないじゃん」
 加奈子は、それまで法子の裸身をまさぐっていた手を引く。
「ぁ…」
 法子は物欲しげな瞳を加奈子に向ける。
「ほんと、お前って可愛いのね。益々虐めたくなっちゃう」
 加奈子は法子の頭を幼女をあやすかのように撫でる。法子は戸惑ったような表情で加奈子を見つめた。法子にはノーマルな性癖を持つ者でさえ、嗜虐者に変貌させる哀しい天性が備わっているようだ。
「瀬田さん、わたし、今日いつもと違うセックスしたいな。うんと刺激的で、物凄くいやらしいの、しようよ。…法子のこと見てたら、ぞくぞくしてきちゃった」
 瀬田は猫なで声を出す加奈子を鼻で笑う。
「ふっ、じゃぁ、…この前の公園ででもするか」
「あっ、いいねぇ、そうしよう。…それじゃぁ、そうだ、瀬田さん、ちょっと車止めて」
 思案顔の加奈子に従い瀬田は車を路駐させる。
「ねぇ、法子。わたし喉乾いちゃった。そこのコンビニでジュース買ってきてよ」
 法子の淫靡な光を宿した瞳は一瞬で冷め大きく見開く。瀬田はルームミラー越しににやにやと笑っていた。
「こっ…この、ままで…ですか?」
 法子の声は震えていた。
「当たり前でしょ。聞く方がどうかしてるわ」
 加奈子は事も無げに冷たい口調で言う。そんな加奈子の冷たい表情を見て、法子の心拍数は天を突く。深夜ということもあり人通りはほとんど無く、辺りからは薄いあかりが灯る程度だが、目の前のコンビニはまるで別世界のように煌々と闇夜を照らしている。雑誌の置いてある一角では、大学生風の男が立ち読みしている姿も見える。
「はい、これお金。…法子も飲みたいでしょ。コヒー二本と、水1リットルのペットボトル、それからレジャーシート、買ってきて…」
 加奈子は呆然とする法子に千円札を差し出す。法子はそれを受け取ろうとするが、身体が震え思うように動かない。法子の歯はかちかちと音を立て震え始めた。痺れを切らした加奈子が法子の手を取り、千円札を握らせる。
「早く、なにぼっとしてるの?」
 法子は苦渋に満ちた表情で加奈子を仰ぎ見るが、加奈子はまるで鼻唄でも歌い出しそうな顔だ。瀬田に縋るような視線を向けても、好色の笑みを漏らしている。法子は困惑の表情を浮かべたまま小さな溜息を吐く。
「愚図愚図してると、もっと酷いことさせるわよ」
 加奈子の鋭い口調に、法子は震える裸身をピクリと反応させ、怖ず怖ずと車のドアを開けた。そして大きく息を吸い込むと、まるで地獄へでも赴くかのように重い脚を踏み出す。深夜とはいえ全裸で街角に佇む自分が信じられない。法子の心臓はその激しい鼓動を周辺に轟かせた。一歩、また一歩とコンビニに近づく法子の表情が、進む歩に合わせ次第に湿りを帯びてくる。冷たい夜風と直に伝わるアスファルトのひんやりとした感触が、火照った身体に心地よい。
(わたし…、感じてるの?…こんなに、恥かしいのに…)
 極限の羞恥が法子の被虐の炎を燃えたぎらせた。
「いらっ…しゃぃ」
 レジに居た店員が全裸の法子を見て、眼を大きくさせ口をだらしなく開けた。雑誌を読んでいた男も同様に驚愕の表情を法子に向ける。法子はそれらの好色の視線を痛いほどその裸身に感じ、その表情を更に艶っぽく潤す。夢遊病者の様な頼りない足取りでジュースの置いてあるコーナーに辿り着くと、ガラス張りのショーケースに自らの裸身が移った。
(わたし…、ほんとに、…裸だわ。…厭らしい、…顔)
 自らの裸身を見つめ火照った吐息を一つ漏らし、言いつけられた商品を手にしレジに向かった。レジでは若い店員がおどおどしながら法子を迎えた。まともに法子を見られず、顔を真っ赤にしレジを打つ。法子はその眉間に深い皺を刻み、火照った裸身を自ら抱く。大きく息を吸い込まないとその鼓動の激しさを補えない、法子は震える熱い呼吸を繰り返した。
 店員は無言のまま法子に商品とお釣りを渡す。法子はそれを受け取り、車に向かった。瀬田の車まで来ると、パワーウィンドゥが静かに降り含み笑いをする加奈子が顔を出す。
「法子、そのままそこで水、飲んじゃいな」
 法子は眉間に更に深い皺を刻むが、大きく吐息を吐くと小さく頷きペットボトルを取り出し、それを飲み始める。冷たい水が火照った身体全体に染み渡るようで、その心地よさに法子はまるで全裸でいることを忘れているかのように水を飲み干していく。
 背後では一人、また一人と法子の痴態に視線を送りながら通り過ぎていくが、法子はまるで自分一人の世界にでもいるように全く意に介さない。やがてペットボトルから口を離すと、熱い呼吸を肩でさせ、加奈子にしっとりと濡れた瞳を向ける。
「全部、飲みなさい」
 法子は素直に返事をし、半分以上残る水を再び胃に送り込む。法子の頭の中は、その水を飲み干すことが出来るかどうかの判断よりも、嗜虐者の命令を聞くことしか働かなくなってしまっているようで、加奈子の言いつけに従順に反応する。やがて、苦悶の表情を浮かべながら水を飲み終えた法子に、
「法子、駄目じゃなぁい、零しちゃ。ちゃんと舐めて、綺麗にするのよ」
 すっかり従順になった法子は、加奈子の恰好の玩具と化した。法子は淫靡な視線を加奈子に向けると、跪き、零れた水をぺろぺろと舐め始めた。
「すっごく厭らしくて、とっても可愛いよ、法子」
 加奈子の言葉に法子は微かに微笑むと、ざらついたアスファルトを妖艶な香りを放つ唾で光らせていった。
 ようやく車に乗ることを許された法子は、後部座席に寝かされ、加奈子にその滑らかな裸身を噛まれていた。加奈子は法子の透き通るような白い肌に、思い切りかぶりつき、強く歯を当て至るところを紅く染める。
「法子。その女、人の身体噛むの大好きなんだ。いつもは痛ぇから止めろって言ってんだが、今日は思い切り噛ましてやれ」
 法子はとろんとした表情を、ルームミラーに移る瀬田に返す。加奈子は狂ったように法子の柔肌を貪っている。その痛みに時折法子の身体は仰け反るが、被虐の炎を燃え滾らせている法子にとってその痛みをも甘美な刺激に感じ、その炎は益々勢いを得る。
「加奈子、着いたぞ」
 法子の裸身にかぶりついていた加奈子に瀬田が声を掛けると、加奈子は気怠そうに半身を起こした。その瞳は雌豹のような妖しい光を放っている。
「瀬田さん、思いっきり、みだれよ。…法子、レジャーシート、持ってきてね」
 加奈子の声はすっかり官能に呑まれ掠れている。加奈子と瀬田に従いレジャーシートを持って車から降りる法子は、相変わらず全裸のままだ。腕を組み、瀬田に凭れながら歩く加奈子の後を、法子は俯きとぼとぼと歩く。深夜ということでその公園に人影は無かったが、その裸身を晒し屋外を歩かされる羞恥に、法子の身体は夜風に吹かれながらも熱い体温を更に上昇させた。
「法子、ここに、広げて…」
 その公園はそれほどの広さは無く、周囲は樹木に囲まれ、中は芝生が茂っている。法子は加奈子の命ずるままに芝生の上にレジャーシートを広げた。
 加奈子は待ちきれないといった風体で、もどかしげに服を脱ぎすっかり全裸になると、瀬田に抱きつき、瀬田の薄い唇に貪りついた。そして、跪くと瀬田のスラックスを脱がせ、逞しくなっている瀬田の一物を頬張る。法子は芝生の上で正座したまま、二人の狂態を見つめていた。しかしその呼吸は熱く、淫らな唾が口中に絶え間なく滲んでいる。
 瀬田は加奈子をレジャーシートに押し倒すと、夜空を突きはち切れそうな男根を、加奈子の涎を垂らす秘唇に埋没させた。
「あぁ…、はぅ…、ぃい…、とっても…」
 加奈子は、瀬田の腰の動きに揺れながら淫靡な嬌声を上げる。泥の中を乱暴にこねくりまわすようなその音は、静まり返った公園に嬌声とともに響き渡る。
「法子、お前も、入れて欲しいか」
 瀬田は腰を激しく動かしながら、正座している法子に淫猥な笑みを向ける。法子は苦渋に満ちた表情を浮かべ、歯を震わすと、恥じ入りながらも小さく頷く。瀬田は唇を大きく歪ませると、
「四つん這いになれ」
 法子は、淫靡な香りをたっぷりと含んだ吐息を漏らし、小刻みに震える小さな尻を瀬田に向けた。
「加奈子、交代だ」
 瀬田は黒光りした一物を引き抜くと、手の回りそうなほど細い法子の腰を両手で抱え、湯気の放つそれを一気に法子の熱い体内へ押し込む。
「ぁあ…ん」
 子宮を突き上げるような快感に、法子の口から妖艶な溜息が漏れる。いままで散々焦らされ、被虐の炎を燃え続けさせられた法子の身体は、堰を切ったように官能の渦に巻き込まれていく。
「ぁん…、ぅうん」
 法子は固く唇を噛み、こもった喘ぎ声を小鼻から漏らす。加奈子は法子を物欲しげに見つめていたが、気怠そうにその身を起こすと、法子の二の腕にまるで猛獣の如く噛みついた。
「あぁっ…、ぁあん」
 法子はその痛みに背骨を仰け反らせるが、裸身に燃える炎の糧にする。加奈子は尚も法子にかぶりつくが、やがて瀬田の唇を貪り、法子の脇腹に鋭い膝蹴りを喰らわす。その勢いに無様に仰向けに倒れる法子に、加奈子は冷たい一瞥を向け、
「交代…」
 押し殺した声で法子に言うと、自ら仰向けになり瀬田を受け入れる。瀬田は呆れたような表情を浮かべるが、再び加奈子に押し入り激しく突き始めた。法子は、もの悲しげな表情を浮かべ、唇を強く噛み締め再び正座した。
 加奈子は濡れきった瞳を法子に向けると、
「法子…、はぁぅ…、オッ…パイ、あんっ…噛ませて」
 法子は諦めたような表情でのろのろと加奈子に近づき、仰向けで揺れている加奈子の口に乳房を近づけた。加奈子は法子の乳房を思い切り吸い込みその口一杯に頬張ると、力の限り噛み締める。その激痛に法子は芝生を握りしめ、息も絶え絶えになりながら必死で耐えた。加奈子は鼻から喘ぎ声を漏らし、享楽に悶え狂う。
「はっ…、はぅ…、いっ…くぅっ…」
 加奈子は法子の乳房を更に力を込め噛み潰し、身体を痙攣させ穏やかな表情でぐったりとなった。法子の乳房にはくっきりと加奈子の歯形が残る。
「法子、仰向けになれ」
 法子は小さな返事をすると、仰向けに横たわり、瀬田を迎入れる態勢を取った。瀬田は法子の脚を肩に掛け、熱く濡れた秘唇に割って入った。
「ぁっ…ぅん」
 瀬田は芝生に押し伏せた法子に、唇を歪ませ腰を激しく揺り動かす。
「ぁ…ん」
今まで感じたことのない淫靡な快感に、法子の秘部は益々潤い温度を上げていく。小さかった蕾は大勢の者達に、強引にそしてたっぷりと肥料を与えられ、その華に憂いと可憐さを含ませ咲かせていった。
「い…、いっても…、ぁん…いい…、ですか?」
 官能の荒波に揉まれながらも、うっすらと眼を開け、健気に瀬田に問いかける法子に、瀬田の心ははち切れそうなほどの憐情心で溢れる。
「あぁ、…いいぞ。」
 法子は歯に噛んだような笑みを微かに浮かべると、
「ぁあ…んっ、あっ…いっ…、いき…ます」
 法子は小さな悲鳴を上げ、裸身を仰け反し小刻みに震わした。そして、今まで感じたことのない大いなる絶頂感に包まれ、裸身を痙攣させ果てた。大きく熱の上がった吐息を漏らすと、眉間の皺を消す。
 瀬田は法子から離れると、硬直し二人の愛液に滑った一物を法子の上気した小さな顔に近づけ、そこへ白濁を大量にぶちまけた。激しく淫靡な行為で法子の肺は悲鳴を上げ、荒い呼吸が治まらない。しかし、法子はうっとりとした表情でそれを受け入れた。
 
「ふぅ〜、気持ちよかったぁ。…あら、法子の顔、すっごい」
 加奈子が余韻から冷め、法子の白濁にまみれた顔を覗き込み揶揄する。法子はその声に、冷えた裸身をピクリと反応させると、恥じ入るように自らの身体を抱き小さく縮まる。
「なぁに、今更…。素っ裸で、コンビニまで行ったくせに」
 法子は、いくら命令されたとはいえ自分のした大胆な行動を思い出し、思わず全身を紅潮させ羞恥に震えた。しかし薄ら笑いを浮かべる瀬田に気づくと、はっとしたようにその場で土下座し頭を深く垂れた。
「瀬田、様。…加奈子、様。…未熟者の奴隷を、…お慰め頂き、感謝の言葉も御座いません。…本当に…有り難う、御座いました」
 急激に冷えた体温が、法子の声を震わし裸身を震わす。理性を取り戻した法子にとって、屋外で、しかも全裸で土下座していることに強い屈辱と羞恥を感じた。そして淫らで穢れた自らの心身を共に嫌悪する。
 法子は許され顔を起こすと、瀬田から放たれた白濁のどろっとした不気味な感触が顔面一杯を伝う。
「ははっ…。法子ったら、すっごくエロっぽい。…そのまま、顔拭いちゃ駄目よ」
 加奈子は身支度を終え、正座する法子を見下ろす。法子は愛くるしい美貌を白濁で穢されたまま、全裸で歩く。来たときには感じなかった激しい羞恥が法子を襲う。そして玉砂利を敷き詰めた歩道が、裸足の法子に痛みを与えた。寄り添いながら歩く二人の後を、法子は惨めな想いに胸を苛まれ、俯き従う。車まで後僅かだが、足下から伝わる冷気と夜風が法子の全身に鳥肌を立たせ、法子に尿意を催させた。先程飲まされた水も効いている。
「あの…、す、すみません。…オシッコ、させて、頂きたいんですけど…。」
 法子は二人を呼び止めると、俯いたまま羞恥に震える声でせがむ。加奈子はにやりと不気味な笑みを漏らした。
「法子、折角だから、もっと人の大勢いるとこでしようよ。見物人がいなくちゃ、お前もつまんないでしょ」
 法子は加奈子の申し出に、眼を見開き唇を強く噛んだ。
「法子、折角の加奈子の好意を…、嫌なのか?」
 瀬田が苦渋に表情を歪ませる法子を覗き込む。法子は項垂れ、大きく息を吸うと、
「い…え。…御免な、さい。…そう、させて…下さい」
 法子の心拍数がまたも急激に上がる。自らの意志では無いとはいえ、屈服の言葉を吐き、被虐を請うと、法子の心臓は激しく淫靡な血液を全身に送り込むようになってしまった。冷静なもう一人の自分が、それを憎悪し必死でくい止めようとするが、最近その力は徐々に弱くなり、簡単に垣根を越えマゾの性質を持った自分が顔を出す。
 葛藤に苦しんでいる自分を余所に、二人は車に乗り込んでしまった。法子も慌てて乗り込む。
「法子、何処がいい?なるべく、人が多い方がいいよねぇ」
 加奈子が呑気に、苦渋の表情を浮かべる法子を覗き見る。既に瀬田の白濁は乾き、法子の顔にこびり付いている。
「は…い」
 法子は小さく返事を返すものの、不安に胸が張り裂けそうだ。そうしているうちにも、法子の膀胱は車の振動を得て、益々尿意を掻き立てた。
 車は眠らない街角に着く。先程の公園での静寂とは全く別世界だ。深夜でも街には煌々とあかりが灯り、大騒ぎしている若者や、酔っぱらいが行き交っている。
「さっ、いこっか。…でも、裸じゃぁ、さすがにまずいかなぁ、ねぇ、瀬田さん。」
 加奈子は楽しそうな笑顔を漏らしている。
「レジャーシート、あるじゃん」
「あっ、いいねぇ」
 法子は、裸の上にレジャーシートを巻き付けただけの姿で街角に立つ。その愛くるしい小さな顔には瀬田の白濁が乾き、気味の悪いつっぱり感を与えている。鼓動は激しく、満足に呼吸も出来ない。身体は音を立て、震えている。
「もうちょっと、変態っぽく見せないとね」
 加奈子は自分のバックから小さな鋏を取り出した。
「法子、レジャーシート、もうちょっと下げようよ」
 法子は加奈子に縋るような視線を向けるが、加奈子の鋭い視線を浴び、乳首が覗きそうな位置までレジャーシートを下ろす。加奈子は、膝まで届いているレジャーシートを楽しそうに切り始めた。法子は加奈子の行動を呆然と見つめていた。
 加奈子により切り刻まれたレジャーシートは、法子の股間をようやく覆う程度で、後ろは尻肉の下の方が完全に露出していた。
「まだ、もうちょっとかな…」
 加奈子はレジャーシートの合わせ目を探ると、縦に鋏を入れる。完全に巻き付いていたレジャーシートは、それにより法子の身体に巻き付くには10cm程寸足らずになってしまった。法子はその余りにも惨めな恰好に、胸が締め付けられ、立っているのもやっとなほどだ。
「いいわぁ、似合ってるよ、法子」
 加奈子は声を上げ、大袈裟に嗤う。法子は俯き唇を強く噛んだ。
「法子、奴隷らしい恰好にして貰ったんだから、お礼言わなきゃ駄目だろ」
 瀬田が法子に冷たい口調で言い放つ。法子は、その言葉にピクリと反応すると、加奈子に深々と腰を折った。
「加奈子…様。…奴隷らしく、…して頂き、有り難う…、御座いました」
 法子の声は震えていた。その身体も音を立て震えている。
「どういたしまして。…じゃぁ、法子のオシッコするとこ、みんなに見て貰ぉぅね」
 加奈子は法子の右手を取り、強引に人混みの中に向かっていく。法子は手を取られたことにより、レジャーシートを片手でしか押さえられない。片端を二の腕で押さえ、もう片端を強く握り引っ張る。必死で隠しても中央で割れたレジャーシートは法子の薄い翳りを露出させた。法子の手を取り、ぐいぐいと引っ張る加奈子の影に隠れるように従うが、公衆の視線に耐えられず、俯いたまま人混みに入っていった。
「あそこの階段の上がいいかなぁ」
 加奈子が呑気な声で、俯いている法子を覗き込む。法子は恐る恐る加奈子の言う階段を仰ぎ見た。駅前のロータリーから改札口へと向かうその階段には、始発を待つ酔っぱらいのサラリーマンや多くの若者が、階段に座り込んだり寝そべったりしている。法子達のいるロータリーにも同様に大勢の人がたむろし、嬌声を上げ派手に騒いでいる一団もいた。
「ねぇ、瀬田さん。あそこの階段からオシッコさせるのって、どおぅ?」
「いいんじゃない。なぁ、法子」
 俯き羞恥に震える法子に瀬田が問いかける。
「じゃぁ、決まり。法子、あそこの階段の一番上からぁ、オシッコしてきな。いい、私達は此処にいるからね。それから、出来るだけ大きく脚を広げるのよ。分かった?」
 法子は再び階段に眼を向けた。
(あそこ…で?あんなに…人が、沢山いるのに?)
 法子は加奈子に縋るような視線を向けた。その表情は苦渋に満ちている。
「ふふ、法子の困った顔って、とっても可愛いよね。その表情見たくて、とことん虐めたくなっちゃう」
 法子は小さな溜息を吐くと、瀬田にも同様の視線を向けるが、にやにやしたまま法子を見つめている。
「早く、行きなさいよ」
 加奈子が法子の背中を押した。しかし、震える脚はなかなか次の一歩が踏み出せない。
「愚図ってるなら、レジャーシートとっちおぅか」
 法子は加奈子を振り返ると、激しく頭を振る。
「じゃぁ、早く行って、シャーってしてきな」
 まるで悪魔のような笑みだ。法子は俯き、ゆっくりと階段に向かう。
「法子、するときは、こっち向いてね」
 加奈子の声を背中で聞き、法子はふらふらとした足取りで階段を上がり始めた。まるで死地にでも赴くかのように脚は重く、そして震えている。心臓は口から飛び出るのではないかと思われるほど激しく脈打ち、喉はからからに乾きだした。呼吸も苦しい。
 次第に周囲も法子の異様な装いに気付き始め、法子に好奇で無遠慮な視線を浴びせてくる。
「おいっ、見ろよ、あれ」
「うっわっ、すっげぇ恰好」
「いいぞぉ、カワイコちゃん」
 歩を進める法子の表情が、一段一段階段を上がる度に、それに呼応するかのように上気し始めた。法子の耳には周囲からの驚愕の声や揶揄する声が、痛いほどに響きわたり、法子の身体に戦慄を走らせる。下品な声は法子のか弱い理性を次々と引き剥がし、いつしか脚の震えは甘美な痺れへと変わっていった。
「倉木法子に、似てねぇか?」
 淫靡な波の真っ直中で喘ぐ法子の耳に、ふとその声が響いた。
「うっそぉ、…まっさかぁ」
 法子は妖艶な瞳を、その若者に向けた。その若者達は法子の身体全体から発する妖しい香りに思わず息を飲む。
 法子は階段を昇りきると、ゆっくりと振り返り、階段の下の瀬田と加奈子を見つめた。二人の好色な視線とぶつかる。周囲の好奇の視線をまともに浴びているが、法子の視野は極端に狭くなり、焦点も合わず二人がぼやけて見えた。法子の荒い呼吸は激しく、肩が上下に動いている。
 法子はやがて大きく熱の籠もる吐息を漏らすと、その場にしゃがみ込んだ。瞳も顔も秘部も、そして身体全体が艶を帯び、法子の身体には幾度も淫靡な戦慄が走る。法子は強く唇を噛み締めると、震える脚を大きく開いた。レジャーシートが大きくはだけ、法子の妖しい光香を放つ秘部が露わになる。
 無遠慮な視線を浴びせる周囲から、異様なざわめきが起こり出す。法子は一度天を仰ぐと、眉間に深い皺を刻み、そして勢い良く放物線を描き始めた。
「おいっ、見ろよ、ションベンしてるぜ」
「うわっ、丸見えじゃん」
 周囲は法子を中心に益々混沌とし、ざわめきの輪が大きくなっていく。
(わたしは…、奴隷。)
 法子は何度も自分に言い聞かせるが、その自らの言葉の奴隷という甘美な響きに酔い、恍惚とした表情を浮かべて加奈子と瀬田を見つめる。加奈子達の周囲でも法子の痴態に気づき始め、みな階段を仰ぎ見ては、囃し立てたり歓声を上げたりしていた。
 やがて全て出し切ると、卑猥な視線を浴びせていた見物人から、派手な歓声が起こる。法子は、白濁のこびり付いた顔に戸惑うような笑みを微かに漏らし、その歓声に応えると、立ち上がり、自らのゆばりの滴る階段を降り始めた。猥雑な歓声や蔑んだ嘲笑が止むことなく、法子の妖しい光香を放つ身体に浴びせられるが、法子の表情は尚も潤い、淫靡な戦慄が身体に絶えず走り続けた。  

「すごかったね、法子。あんたって、ホントに変態なのね」
 瀬田の車の後部座席で、加奈子は羞恥に震え裸身を縮ませている法子を覗き込む。法子は唇を噛むと、その裸身を益々縮めた。火照った身体が冷め理性のある自分が甦ると、公衆の面前で、大勢の他人に浅ましい姿を晒し、それを悦んでいた自分自身が信じられない。冷静で理性を持った法子は次第にその姿を小さくしていき、被虐に濡れる淫靡な法子が勢いを増し貪欲に自分が変わっていく。悦虐に浸っているときは、羞恥も屈辱も渦に消え、どんなことでもしてしまう自分が情けない。法子の胸は自分を苛み、自分を苦しめていた。
「それじゃぁ、わたし、此処だから。瀬田さん、また、遊ぼうね」
「今日は、有り難う…御座いました」
 法子は虐待を受けた礼を言う。
「法子。また、虐めてあげるね」
 加奈子は軽やかな口調で法子に言うと車を降り、傍らのマンションへと消えた。法子は小さな溜息を漏らす。
「法子。隣に座れ」
 法子は小さく返事をすると、裸身を縮ませながら助手席へと移った。静かに車が動き出す。
「どうだ。奴隷生活は…。」
 法子は歯に噛み俯くが、
「…みなさまに、可愛がって…頂いて…、とても…、幸せ、です」
「嘘をつくな」
 瀬田が吐き捨てるような口調で言う。法子は俯いたまま次の言葉が出ない。
「俺は、黒部先生のお陰で、今の事業が成功してる。…でも、いつかは黒部先生との関係を完全に断って、健全な会社にしたい」
 法子は瀬田が何を言いたいのか分からず、戸惑っていた。
「もし、…もし俺が黒部先生との関係を清算して、黒部先生をも凌ぐ勢いを得たら、俺がお前を救い出してやる」
 法子は思わず瀬田を振り返った。瀬田の瞳が虚空を睨み、燃えている。あの事務所で理不尽な契約に交わすことを強制されてから今日まで、自分に対し人として言葉を掛けられたのは初めてだし、まるで地獄の中で輝く手を差し伸ばされた想いがした。法子の瞳に涙が滲む。
「必ず、必ず一本立ちしてみせる。いつになるかは分からない。でも、このまま順調に軌道に乗れば、その日は必ず来る。…だから、その日まで耐えるんだ。その日が来たら、お前を、匿う」
 法子の瞳から堰を切ったように涙が溢れ出し、やがて法子はまるで童女の様に声を上げ、自分の膝に顔を埋め泣いた。真っ暗だった行き先の、その遙か彼方に僅かな光を見出した。法子は言葉を失ったように、嗚咽を漏らし続けた。

 車はクラブの駐車場に戻った。
「瀬田…様。本日は…本当に…、有り難う御座いました」
 法子は深々と腰を折った。初めて心の底からお礼を言えたような気がする。
「法子。必ず、迎えに来るからな。…それまでは、客と、奴隷ホステスのままだぞ」
 法子は再び涙を滲ませ震える歯で唇を噛むと、コクリと頷く。瀬田は爽やかな笑顔を見せ、そのまま消えた。法子の身体は、まるで宝物でも見つけたかの様に軽くなりそして華やいだ。自分を欲望のはけ口としか見てもらえなかったこれまでに比べ、ようやく人として接してくれる人物に巡り会えたことが、法子にはとてつもなく嬉しく感じられた。
 急に全裸のまま駐車場に立ち竦むことに強い羞恥を感じ、法子は陽子と乗ったエレベーターに飛び乗った。そして、三階に辿り着くと、不安げにチャイムを鳴らす。
「おぅ、遅かったな」
 扉を開けたのは梅田であった。法子は裸身を小さく縮めると、俯き梅田の部屋へと従う。
「どうだ、奴隷ホステスとしての仕事は、よく出来たか?」
 法子は、その場で額を床に付ける。
「あの…、皆様より…、教えを、頂きながら、どうにか…勤めさせて、頂きましたが…、まだまだ、至らぬ点が、あり、皆様に、…御迷惑をお掛けしました」
 法子は慎重に言葉を選び、途切れ途切れに言う。
「まっ、初日だから、しょうがねぇが、安岡や美鈴はお前のこと怒ってたぞ。…奴隷ホステスとしては、躾が出来ていないって」
 法子は額を床に付けながら唇を噛むが、
「申し訳、ありません。…あの、一日でも、早く、…立派な奴隷となり、皆様に、満足して頂けるよう、頑張らせて頂きますので、厳しい…゛御教育゛を、宜しく、御願いします。」
 法子は屈辱に震えながらも、瀬田の言葉を思い出していた。瀬田の言葉に縋って生きていけば、どんな辛いことでも耐えられそうな気がしてくる。
「教育は陽子に任せるとして、…ちょっとお前立ってみろ」
 蛍光灯が煌々と着く部屋で、法子は羞恥に全身を紅潮させながら立ち上がる。
「お前なぁ、なんだその痣は…」
 梅田の声に、法子は自分の裸身を見つめた。法子の全身には加奈子に噛まれた跡が、鬱血し生々しい痣として至る所に残っていた。
「いいかぁ、法子。…お前のその身体は、お前のものじゃなくて、所有権は俺達に有るんだぞ。俺達が、お前に貸してやってんだ。人様のものなんだから、もっと大切に扱え」
 法子は余りの理不尽な梅田の言葉に、胸を締め付けられる思いがした。そんなことは、加虐者にでも言って欲しい…、しかし唇を強く噛み締め必死で自分の想いを隠し、
「ご、…御免なさい。…これから、気を付けます」
 深々と頭を垂れ、謝る。理不尽な叱咤にも謝罪する、卑屈に成り果てた自らの心に嫌悪感を抱きながら、視線の先の脚が震えているのを呆然と見つめた。
「さて、…とりあえず此処のクラブには、毎週金曜日、出るんだ。大体接客方法は分かっただろ?」
 法子は俯きながら小さく頷く。
「それから、お前は奴隷ホステスとしてはまだまだ未熟なんだから、…みんなはお前の望む、立派な奴隷になりたいっていう願望を叶えて上げようとして、このクラブへ来て、お前に協力し、そして教育をして貰ってるんだ。…だから、お前は教育費を払わなければならん。それに、教えて貰うんだから、みんなが飲み食いする費用もお前が負担するんだぞ。…分かったな」
 法子は俯いたままだ。どうせ自分に理不尽な多額の借金を背負わせ、心身的にも、金銭的にもがんじがらめにするつもりなのであろう、法子はどうでもいいような自虐的な思いに駆られ、
「は…い。喜んで…払わせて、頂きますので、…宜しく、御願いします」
 梅田の喜びそうな言葉を呟くと、再び腰を折った。梅田は自分たちの思い通りに調教されつつある法子に、喜悦の笑みを浮かべる。
「ついてこい」
 梅田は上機嫌に立ち上がり、法子を陵辱を受けた会場へと連れ出した。うっすらと灯りの点いたステージ上には、一人の女が倒れている。法子は梅田に従い訝しげに近づくと、それは恵であった。恵は、全身に拷問の傷跡を痛々しげに付け、気を失っていた。法子と麻奈美は表に連れ出されたが、恵は此処に残り今日の相手から拷問を受けていたようだ。法子の胸が痛む。
 梅田は恵の臀部に思い切り蹴りを入れた。法子は思わず小さな悲鳴を上げる。恵は、呻き声を上げながらうっすらと眼を開け梅田を確認すると、弾かれたようにその場に土下座した。
「たっぷりと、可愛がって貰ったか?」
「は…い。…わたしのような、出来損ないの、奴隷を慰めて頂き、とても嬉しく思います。…わたしの、我が儘な欲望を、満足させるために、お借りしている身体を、こんなにも傷つけてしまい、本当に申し訳御座いません」
 澱みのない声でしっかりと答える恵に、幾度もの陵辱の時間を感じ、法子は恵を正視出来ず、俯いた。
「移動の時間だぞ」
 恵は梅田の言葉にピクリと反応すると、
「は、は…い。…只今、用意致します」
 恵は小走りに控え室に向かった。待つほどのこともなくバッグを手にした恵が戻り、再び梅田の前に頭を垂れる。恵を虚ろに見つめる法子の身体はすっかり萎縮し、震えていた。「今日は、幾つ、入れさせて、頂けますか?」
「バッグには、何個入ってるんだ」
 恵は手にしていたバッグを恐る恐る開けた。そしてバッグの中を覗き込んだ恵の瞳が凍り付く。
「よ…、四箱、あります」
「折角だ。全部入れろ」
 梅田は事も無げに言い放つ。恵は震える声で返事をすると、バッグからイチジク浣腸を取り出した。法子はそれを見たとき恐怖に思わず身を引くが、ふと陽子の言葉を思い出した。
(そうだ…。恵さんは、移動の時、浣腸されて、それから…)
 法子の背筋に冷たい戦慄が走る。恵は自分を襲う激痛の源を、自らの手で施し次々と空にしていく。恵の痛々しい傷の残る裸身には、うっすらと脂汗が滲み始めた。そして全てを入れ終える頃には、早くも激痛が腸内を襲い始めたのか、恵の息は荒くなり、表情も険しいものになっていた。法子もその痛みの辛さが身に染みている。苦痛に表情を歪め身悶える恵を見らていられず、思わず眼を伏せた。
 恵は震える手でバッグから、太いアヌス栓を取り出した。そしてそれを丹念に舐めると、眉間に深い皺を刻み自らの肛門に押し込んでいく。
「トランクは上だからな」
 恵は苦悶の表情を浮かべたまま小さく頷き、梅田に従い階段を上がった。時折歩が鈍るのは激痛に苛まれているのだろう、法子はその痛みを十二分に知っていたが、苦しむ恵に言い与える適当な言葉も見つからず、只俯き恵の後に付いていく。
 梅田は部屋に入ると大きなトランクを担いでくる。
(あれに…、入れられたまま?)
 驚愕の表情を浮かべる法子を余所に、恵は梅田に土下座し謝礼をすると、自ら身体を縮めトランクに入り込む。恵の身体には少し小さいのか、必死で身体を縮めるがなかなか蓋が閉まらず、梅田は最後には蓋を踏んづけ無理矢理閉めた。恵の籠もった悲鳴が聞こえてくる。
 大量に浣腸され、トランクに無理矢理押し込まれ、次の嗜虐者の元に向かわされる。想像しただけでも恐ろしく、法子の膝は音を立て震えていた。トランクに乗ったまま梅田は冷酷な視線を、怯えている法子に向けた。法子はその視線に気付き、梅田を仰ぎ見る。
「法子、分かったな。逃げようなどと考えたら、恵のような扱いを受けるんだぞ」
 法子は梅田の射るような視線に耐えられず、思わず眼を伏せた。視線を合わせていると、瀬田との密約を見透かされそうな気がした。瀬田は本当に自分を救えるのだろうか、もし見つかったら…、それを想うと法子の気が重くなる。しかし、ようやく授かった小さな灯りを手放したくない…、法子の瞳には今までに無かった輝きが、その奥底で静かに放ち始めた。

 


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