『麗と隷』
       第五話       

第五話

 会員と称される嗜虐者達への法子の挨拶は、連日続いた。みな社会的に成功を収めている裕福な者達である。いたるところでその麗しい裸体を晒し、その者達へのフェラの奉仕を強制された。みな倉木法子の清楚な美しさと、羞恥に震えながらも淫靡な一面を見せるアンバランスさに大満足のようである。
(これで…、何人目?)
 自分でも数え切れないほどの肉棒を頬張り、その白濁を飲み干した。それら数々の陵辱を受けながらも、まるでそれらを糧にするかのように、法子の美しさには益々磨きが掛かっていった。
 タレントとしての仕事の方も、写真集の撮影をやらされていた。ブルマー姿やメイド衣装、ナース姿や、ゲーム系キャラの際どいコスチューム、そして定番のセーラー服、今まで頑なに拒んできた水着、それも矮小なビキニ等々、様々なコスチュームでの撮影となった。発売までまだ期間はあるものの、早くもアイドルフリーク達の間で噂が広まっていた。
 
「法子。お前の通う高校の制服だ。」
 深夜、仕事を終え事務所に戻った法子に真新しい制服が梅田から手渡された。
「挨拶も、撮影も一段落したし、明日から学校に通わせてやる。」
 四月も最早半ばである。すっかり学校のことなど忘れていた法子に、嬉しそうないじらしい笑みが零れた。学校に行っている時間は、少なくとも屈辱的な奴隷としての扱いは受けなくてすむ、その事が法子の胸を躍らせ軽くさせた。
 亜希が倒れてからも、法子の屈辱的な食事は続いていた。朝、先ずは法子のマネージャーとなってから住んでいる陽子の部屋に挨拶をしにドアを叩く。そして、彼女の見ている前で洗面器に用を足すと、食堂に向かう。廊下で着ている物を全て脱ぐと、食堂に待ち受けている同じ事務所のタレント達に挨拶をした。タレント四人の他にも、最近では面白がって安岡達もいる。法子にとって一番惨めで辛い時間である。
「法子、お前今日から学校に行くんだって?」
「奴隷のくせに、そんなとこいくより、ソープランドへでも修行に行った方がいいんじゃない?」
「そうよ、その方がお前のためじゃん。」
「こいつに、学校に通わせるお金があるんなら、私達の給料、上げて欲しいわよねぇ。」
 容赦の無い法子への罵声が飛び交う中、法子は涙を滲ませながら、放られる餌を口にしていく。毎日、この時間は屈辱に胸が張り裂けそうになる。先日、法子の藪プロデューサーへの献身的な奉仕のお陰で、彼女たちのテレビの仕事もちらほらと出ているらしい。しかし、法子に与えられるのは感謝の言葉ではなく、侮蔑や嘲笑だ。しかし、そんな蔑む言葉を浴びせられていると、自分でも説明の付かない戦慄が身体に走り、言いようのない痺れが頭の中を駆けめぐる。
(変態…なの?)
 次第に、みなの良いように調教されていく自分を、冷静なもう一人の自分が見つめていた。

 法子は陽子とともに安岡の運転で車の後部座席にいた。
「陽子さぁん。一体何時になったら法子とヤラしてくれるんですかぁ。たのんますよぉ。」
 法子は、俯き唇を噛む。
「そぉねぇ、法子もいろいろ忙しいし、奴隷って言ったって、うちの商品だしねぇ。」
 俯き屈辱に耐える法子を横目で見ながら、陽子が答える。
「いいじゃぁないスッかぁ。どうせ、玩具なんだし。」
「ふふっ、まっ、そのうちね…。」
 陽子が法子の脇腹をを突っついた。法子はそれに反応すると、
「そ、その時は…、どうぞ…、宜しく…お願いします。」
 下品な笑顔をルームミラーから覗かせる安岡に、法子は小さく答えた。尚もぶつぶつ言っている安岡を無視し、陽子が今時珍しいポケベルを手渡した。
「いい、授業中だろうが、食事の最中だろうが、そのポケベルが鳴ったら校門まで出来なさい。少しでも遅れたら、厳しく゛教育゛するからね。…くれぐれも勘違いしないように、お前は普通の女子高生じゃぁなくて、お情けで学校に通わせて頂いてる、奴隷なんだから。」
 小さく頷いた法子は、そのポケベルをポケットにしまった。奴隷という言葉を聞いて、学校に通える嬉しさにいくらか浮ついていた法子の心に刺すような痛みが走るが、やはり行き先も目的も告げられぬまま車中にいるよりは、心も身体も軽い。車窓から流れる景色も、いつもと違って華やいで見える。
 車はとある病院に止まった。訝しげ外を見つめる法子の瞳が凍り付いた。美奈であった。
「亜季さんが入院している病院よ。」
 亜季という名前が法子の背筋を冷たくさせる。
「陽子さん、おはよう…。」
 無邪気に陽子と挨拶を交わす美奈は、助手席に乗り込む。
「法子ちゃん、お・は・よ・う…。」
 いきなり美奈に声を掛けられ、法子はピクリと身体を反応させる。法子に、以前には見せたこともないような笑顔だ。
「あっ…、おは、よう…。」
 法子も引きつった様な笑顔で返した。法子と同じ制服姿だ。法子は高校に通える嬉しさについ忘れていた。そうだった、美奈と同じ高校なのだ、それからあの黒部の息子も…。陽子と美奈が談笑を交わす中、法子の想いは複雑であった。美菜はどこまで自分のことを知っているのだろう、法子は不安に押し潰れる胸を抱えた。
「じゃぁ、私たち、先生に挨拶してくるから、美奈ちゃん。法子のこと、よろしくね。」
「分かってるって。」
 校門で美奈は別れ際に、法子に凄まじい笑顔を見せた。その笑顔は、法子の胸に矢となり突き刺さった。 
 法子は陽子に従い、教員室に向かっていた。途中すれ違う生徒達が、法子を見つけて騒ぎ立てる。法子は戸惑うような表情を見せて、俯き歩いていた。
(タレントなんかに…、ならなきゃ良かった。そうすれば…。)
 元々、達夫から逃げ出したくて入った世界だ。みなの注目を浴びれば浴びるほど、その想いは強くなる。その辺りに転がっている何の注目も浴びない小石が、法子には羨ましく思えた。
 担任と校長に挨拶が済むと、法子は担任である山本という中年の男に連れられ教室に向かった。始めて芸能人を受け入れるこの学校も、法子にはいくらかの戸惑いを見せているようだが、授業など途中で抜け出す代わりに夏休み等で補習をすることで、同意を得ているようだ。1年F組と掲げられた教室に入ると、生徒達の歓声が起こった。普通では決して喋ることさえ出来ないトップアイドルとクラスメートになれることに、みな興奮していた。山本が、騒ぐ生徒達を抑え法子に挨拶をさせた。
「倉木法子、です。よろしく、お願いします。」
 法子の澄んだ声を聞いては、また生徒達が騒いだ。法子は引きつった笑顔で歓声に答えたが、そんな法子を含みのある笑顔で見つめる二人の生徒がいる。美菜と、あの黒部亮の末息子、哲哉であった。
 休み時間になると他のクラスの生徒達がわざわざ法子を見物しにくる。廊下で沸き上がる歓声に法子は背を向け、与えられた窓際の席で頬杖を付いてぼんやりと外を見ていた。そんな煩わしさも、全ての人格も尊厳も否定され、奴隷として床に這い蹲るよりはどんなにましか…、法子は学校での時間を大切にしたかった。
「法子ちゃん。食堂、いこっ。」
 昼休み、美菜が法子に声を掛けてきた。
「…うん。」
 やはり、美菜のことは苦手だ。美菜を見ていると、どうしても亜希に受けた拷問の数々を思い出してしまう。しかし、優しい笑顔で語りかけてくる美菜に、法子の胸はいくらか軽くなる。
 食堂のある場所など知らない法子を連れ、どんどんと人気の無い方向に向かっていく美菜に法子は一抹の不安を感じた。
「あの…、美菜、ちゃん。何処なの、食堂って…。」
 訝しげな表情で美菜に問いかける法子に、
「実はね、あなたのために、歓迎パーティーを開くのよ。」
 そう美菜が柔らかな声で答える。法子の胸は益々不安に重くなるが、美菜の機嫌を損ねるのも得策ではないと思えた法子は、仕方なく美菜に従った。薄暗い部室が並ぶ一つの扉の前で美菜は止まると、
「ここよ、入って。」
 法子の背中を押した。薄暗いその部屋に法子が怖ず怖ずと入ると、そこには四人の男子生徒と、三人の女子生徒がいた。焦臭い、煙草を吹かしている。法子はとっさに翻るが、扉には美菜が構え、鍵を掛けていた。
「みっ、美菜ちゃん、どういう、こと…?」
 美菜は、今まで見せたことのない冷酷な表情に豹変していた。その表情に法子は思わず息を飲み、後ずさりをすると、待ちかまえていた一人の男子生徒にぶつかった。慌ててそこからも逃げようとするが、法子のしなやかな首に武骨な腕を廻され、そしてほっそりとした手首を掴まれ、上へとねじ上げられた。肩の骨が音を立てて軋むが、法子は恐怖と痛みに悲鳴を上げることさえ出来ない。すると美菜が残忍な笑みを漏らしながら、羽交い締めされている法子に近づいてくる。
「やめ…てっ。おっ…、お願、い。」
 首と腕を圧迫されている苦しみで搾るような懇願しか出来ない法子に、美菜は唇を更に歪ませると、女の力とは思えないほど強烈なアッパーを法子の鳩尾に叩き込んだ。そして、痛みに蹲ることさえ出来ず曇った悲鳴を上げる法子の髪の毛を鷲掴みにすると、苦痛に歪む法子の顔を上げさせた。法子の眼には涙が滲んでいる。
「気安く、美菜ちゃん、なんて呼ばないでよ。奴隷のくせに。」
 法子の絶望感が増す。やはり美菜は知っていたのだ。
「ぜぇ〜んぶ、ママから聞いたわ。よくも、よくも私の家庭を無茶苦茶にしてくれたわよね。」
 法子はぐっと歯を食いしばり、息を飲んだ。美菜の瞳が憎悪に燃えている。
「あなたの、…あなたのお父さんが、…悪いのよ。」
 法子は恐怖に打ち勝てるように精一杯虚勢を張った口調で答えるが、身体は震えていた。そんな法子の頬に、美菜が平手打ちを見舞った。
「へぇ〜、うちのパパのこと、誘惑しといて、うちのパパが悪いの。…お兄ちゃんのこと殺したのも、お前なんだろっ。」
 美菜は、傍らのモップを手にすると、柄の先端を法子の鳩尾に二発、三発とのめり込ました。腹部に打擲を受けるたびに、法子の肩が悲鳴を上げた。そして、苦悶に苦しむ法子を見て、美菜は狂気の笑みを漏らす。他の生徒達は、二人のやり取りをにやにやしながら見つめている。
「まだ、認めないの?」 
 美菜は、ポケットから一枚の紙を取り出し、法子の目の前に掲げた。法子の瞳が更に大きくなった。それは、梅田との間に交わされた契約書のコピーであった。法子の身体から、次第に抵抗する力が抜けてくる。
「ママが言ってたわ。お前は、全ての罪を認めて、それを償いたい一心で、泣きながら梅田さんに縋って、契約させて貰ったそうじゃない。」
「俺の親父とも、ヤッたらしいな。」
 突然羽交い締めをしている男が、法子の耳元で囁いた。法子の身体に心臓を鷲掴みされたような衝撃が走る。呼吸をするのでさえ苦しい。
「なんとか言ったら、奴隷の法子、ちゃん。」
 美菜が勝ち誇ったような表情で法子を揶揄する。
「…陽子、さん。…陽子さんが…。」
 法子は数々の衝撃を受け、まるで譫言のように呟く。
「あら、残念ね。陽子さんも、お前のこと虐めて良いって、言ってたわ。」
 法子にとっては最後の砦である陽子が、美菜にその自由を与えている。法子は縋る藁をも失い、抗う力も完全に抜けぐったりと哲哉に身体を預けた。
 陽子にとっても達夫や亜希は目障りな存在だ。亜希に法子を責めさせては、とても法子を商品として扱えない。かといって二人を無視すれば、どんな暴挙にでるか分かったものではない、それで陽子は美菜に目を付けた。法子を虐めると言ってもたかが小娘のすることで、法子の身体を壊すほどではないだろうと判断した。美菜に法子を虐めさせることで、二人を黙らせようという魂胆であった。それに、学校には黒部の息子もいる。彼らに絶対にセックスをさせないようにお目付役を条件で、美菜に承諾したのだ。陽子にとっても、梅田の事務所にとっても法子は金の卵だ。そうそう簡単には壊したくない。
 ぐったりとする法子の顎を掴み、呆然とする法子の顔を起こさせると、美菜は高笑いをした。
「ママが、代わりに法子を虐めてくれって、縋るのよ。あの女だけは許せないって。…私もお前のこと、…絶対許せないわ。」
 亜希と同じ狂気の炎を瞳に宿した美菜は、刺すような視線で法子を見つめた。法子はその眼差しを避けるように眼を伏せる。学校という法子にとっては唯一人間として扱われる場所も、結局虐待を受けるのであろうか…、法子は、腹部の痛みよりもそのことが辛く痛い。
 哲哉が羽交い締めしていた腕を解くと、法子は力無く床に崩れた。その瞳からは涙がこぼれ落ちる。哲哉が膝を折り、法子の頭を愛おしげに撫で始めた。
「法子。…俺達の言うこと、聞けるよな。」
 法子は、その慈しむような声に暗闇に蹴落とされた悲劇を思い滂沱した。
「嫌ならいいんだよ。陽子さんに言いつけてやるから。…それに、この契約書も、学校中に貼り付けてあげるわ。」
 法子は、その脅しに息を飲み大人しくなるが、全身が音を立てて震えている。法子の素性が学校中の生徒に知れたら…、その屈辱と羞恥を想像しただけで、背中には冷たいものが流れた。涙をいっぱいに溜めた瞳で美菜や哲哉、そして見物している生徒達を見回す。法子は、憂いを大いに含んだ溜息をつくと、カチカチと震える歯で唇を強く噛む。
「法子。…素直に、なれる?」
 美菜の声に、苦悶の表情を浮かべる法子が少しの間を置き、幼気に小さく頷いた。画像の中の天使を、自分達の思い通りに扱えることに男子生徒達は興奮した。女子生徒達も、自分達よりも遙かに美しい容姿を持つ少女を虐められることに冷淡な笑みを浮かべていた。美しさに於いては足下にも及ばない美少女を、自分達の足下に平伏させることが出来る。法子に対する女のコンプレックスは、虐待へのエネルギーに代わっていった。
「ふふ…、じゃぁ、この契約書は私達だけの秘密にしといて上げる。…でも、逆らったらママに貰ったお前の厭らしい写真と一緒に、貼り出すからね。…それに、陽子さんからは禁止されてるけど、みんなで輪姦させちゃうから…。」
 陽子が、セックスだけは許してないことを悟ると、法子は少しほっとした。
「法子、そんなに哀しい顔すんなよ。楽しい学校生活にしようぜ。」
 哲哉の声に、改めて彼を見た。哲哉は自分とは同世代と思えないほど大人びていて、クールなカッコのいい男だ。彼の父に似た、法子が一番屈服し易い威圧感を漂わせている。法子は恐れた。哲哉に虐待を受けることで自分の身体が被虐の悦びに呑まれ、それを彼らに知られることを…。
「みんな、この女、私達の言いなりになるってさ。先ず、何からやらせる?」
 美菜が見物している生徒達を振り返る。みなが歓声をあげ、法子にあれこれと注文する。法子が、項垂れ羞恥と屈辱に震えながら耐えていると、哲哉が法子の両脇を抱え、倒れていた法子を立たせた。頼りない法子を、哲哉が背後から支えると、羞恥に紅く染まった小さな耳を軽く噛んだ。法子の身体に戦慄が走る。
「やっぱり、みんな、お前の裸が見たいってさ…。」
 法子の耳に息を吹きかけながら熱く囁くと、制服の上から法子の柔らかい乳房を愛撫した。法子は、小刻みに震える身体を縮ませ、固く眼を閉じ唇を強く噛む。抗いたい想いが、固く握った拳に現れていた。哲哉は法子の顎を掴み、眉間に深い皺を刻んだ顔を起こさせ自分の方を向かせると、その固く閉ざした可憐な唇に自分の唇を合わせていく。みな、二人のやり取りを、喉を鳴らしながら血走った目つきで見つめていた。
「口を、開けろ。」
 哲哉が、唇を合わせたまま法子に言った。法子が震える唇を僅かに開けると、哲哉のねっとりとした舌が入ってきて、法子の舌に絡む。舌と胸に愛撫を受け、次第に法子の力が抜けてくる。哲哉の手が下腹部に迫ってきた。
(だ…、駄目。…そこは、…。)
 法子の手が、哲哉の手をはね除けようとするが、簡単に法子の股間に手が伸びる。スカートの上からとはいえ、哲哉の愛撫は女を知っており法子の身体に妖しい戦慄が走りピクリと反応する。
(あ、…ん。)
 絡んだ唇から僅かに吐息が漏れた。哲哉の愛撫が、法子の理性を崩していく。先程までの絶望感から、次第に官能の波に簡単に呑まれてしまう自分の淫靡な身体に、法子自身呆れる想いでいた。ふいに、哲哉の愛撫が止んだ。
「法子。…裸になれ。」
 法子は、固く閉ざした眼を恐る恐る開いた。法子の瞳に、幾つもの自分を熱く見つめる視線が飛び込んでくる。困惑した表情で哲哉を振り返るが、哲哉はにやにやしながら法子を見つめるだけだ。
「ほらっ、早く脱がないと、貼り出すわよ。」
 法子は俯き、自分の運命を呪った。再三の美菜の脅しに、法子の震える指が制服に掛かる。濃紺のブレザーを床に落とし、ブラウスのリボンを外した。法子の心臓は激しく脈打つが、それは淫靡な血をも法子の全身に送っているかのようであった。
(感じて…いるの?)
 歳の離れた嗜虐者の前でその裸身を晒すことより、同年代でしかもクラスメートに晒すほうが恥ずかしく屈辱的であった。しかし、そんな屈辱的な状況に追い込まれながらも、淫靡な血が駆け巡る自分の身体が恨めしい。
 時折止まる法子の手を、美菜がモップの柄で突っつきせかさせる。ブラウスも床に落とすと、真っ白のブラジャーが現れた。羞恥に全身を紅く染めながらも、法子の身体は自分が触れるだけでも反応し、敏感になっていく。その時、陽子に手渡されたポケベルが不気味に振動し始めた。法子の身体が一瞬で冷める。
「み、美菜…さん。…あの、行かなきゃ。…私、行かなきゃ。…でないと、陽子さんに…。」
 救われたのか屈辱の場に赴くのか分からないが、取り敢えずこの場から逃れる口実が出来た。このまま裸になれば、熱く淫靡に濡れる自分の秘部が晒されてしまう。何よりその事に強い羞恥を感じていた法子は、胸を撫で下ろす想いであった。そして、床に落としたブラウスを手に取ろうとすると、美菜がそれを踏んづけた。法子は唇を強く噛み、縋るような視線で仁王立ちする美菜を見上げた。
「駄目よ。…裸になって、私達に服従の誓いをするまで、許さない。」
 法子は焦った。ポケベルが鳴ったら直ぐに校門まで出てこいと、陽子にきつく命じられている。
「お、お願い…。美菜…さん。ゆ、許して…。」
「ふんっ、お前、奴隷のくせに、お願いの仕方も知らないの。口の訊き方も、なってないし…。」
 法子は屈辱に血が出るほど唇を噛み、そして震えた。しかし、このままでは陽子に゛教育゛されてしまう。その恐怖が打ち勝ち、法子は正座し手を付くと、額を床に付けた。
「み、…美菜…様。…どうか、…お許し、…下さい。」
 美菜が法子を見下ろし、大袈裟に嗤う。他の生徒達も美菜につられ嗤いだした。
「さすが、奴隷アイドルね。土下座の仕方、様になってるわ。」
 尚も、笑い続ける美菜に法子は必死で哀願を繰り返すが、
「駄目よ。早く服脱ぎなさい。愚図愚図してたら、怒られるんでしょ。」
 法子は再び絶望感に捕らわれた。このままでは…、法子は意を決した。哀しい瞳を美菜に向けると、再び立ち上がりスカートを床に落とした。見物している生徒達の揶揄が部屋に響く。そして、震える腕を背中に廻すとブラのホックを外す。生徒達の唾を飲む音が生々しく響く。法子は固く眼を閉じると、それを床に落とした。歓声と嬌声が木霊した。後、一枚だ。早く陽子の元へ行かねばという思いと、生徒達の前で裸になる羞恥が交錯し法子を苛ませる。
「ほらっ、早く。」
 胸の前で腕を交差させ、身体を縮ませ羞恥に耐える法子を、再び美菜がモップで突っついた。法子は恨めしげな表情で美菜をみると、小刻みに手を震わしながらショーツに手を掛けた。そして、固く眼を閉ざすとそれを床に落とし、そのまま小さく蹲る。
「法子。立ちなさい。」
 法子は自分の膝に顔を埋め、小さく頭を振る。その時、背中に熱い衝撃が走った。法子は短い悲鳴を上げると振り返る。哲哉が、自分のズボンのベルトを外し、それを鞭代わりに法子の背中を強打したのだ。
「いくら言っても利かねぇからな。まどろっこしいのは、嫌いなんだ。」
 哲哉は再び振りかぶり背中を打った。悲鳴を上げながら、
「ご…、御免なさい。…立ちます、立ちます、から…。」
 涙混じりに懇願すると、法子はその場に立ち上がる。
「ほらっ、キョウツケっ。」
 法子は羞恥に身体を小刻みに動かせていたが、美菜の声に、震えながら手を下ろした。その美しく均整のとれた裸身に、男子達の感嘆の声と、女子達の嫉妬混じりの溜息が漏れる。そして熱く卑猥な視線に晒されているうちに、法子の心臓がまたもや妖しい血を派手な音を立たせて身体の隅々にまで押し流していく。
「法子。私達に、虐めて貰いたい?」
「は…い。」
 裸体を晒すことで極限の羞恥に追い込まれると、屈服心と服従心が法子を支配し従順にさせてしまい、言葉遣いも態度も自然に卑屈になってしまう。
「じゃぁ、みんなに、お願いしな。」
 法子は虚ろな瞳で頼りなく皆の足下に歩を進めると、その場で額を床に付けた。
「みな…様。…これからは、どうぞ皆様で、…法子を、…虐めて、可愛がって、…下さい。…宜しく、お願いします。」
 白い靴下の他は全裸で、床に這い蹲り自ら虐待を願う屈辱に、法子の被虐のスイッチは完全に入ってしまった。平伏する法子に見物していた男子が半身を起こさせると、幾つもの男の手が法子の裸身に吸い付く。荒々しく稚拙な愛撫でも、法子の身体は敏感に反応し熱く淫靡な吐息が漏れる。
「やだっ、感じてるよ。この女。」
「ほんとだぁ。…信じらんない。」
 法子に呆れる女子に、美菜がしたり顔で呟く。
「言ったでしょ。この女、変態だって。」
 自分を蔑む言葉をも愛撫に想われ、理性を失った法子の身体は益々敏感になっていく。
「ほらっ、濡れてるぜ。」
 一人が素っ頓狂な口調で、湯気の放つ自らの手を女子達に差し出した。
「やめてよぉ。きったない…。」
 女子達の間で、激しい嘲笑の声が起こる。法子は誰とも知らぬ男子の胸に顔を埋め、官能の波に荒々しく揉まれていた。ふと、哲哉が法子に群がっていた男子達を引き離した。そして床に崩れた法子の半身を背後から抱えた。そして、熱く淫靡な愛液を漏らす法子の秘部に手を伸ばし、その手を湿らすと法子の目の前に掲げた。
「法子。…どうして、こんなに濡れてんだ。」
 法子はうっすらと瞼を開け、哲哉の滑った指に妖しい炎をたたえる瞳を向けた。そして軽く唇を噛み、戸惑ったような幼気な表情をみせその眼をふせると、か細い声で、
「…厭らしい、…から、です。」
「変態で、マゾだから、虐められると感じてしまうから…、だろ。」
 法子は、少し躊躇うとコクリと頷いた。哲哉の手が再び秘部に伸びる。
「うわっ、自分で言ってるぅ。」
「そりゃぁそぉよ。いっつもスケベ親父に、売りしてんだろ。」
 女子の揶揄に美菜が小さく笑う。
「違うわよ。こいつ、自分からお金払って、虐めて貰ってるのよ。」
 女子達の目が大きく丸くなる。
「うっそ、ほんと?、法子。」
 その問いに法子は哲哉を潤んだ瞳で見つめると、熱い吐息を漏らしコクリと頷く。
「きっと、さっきのポケベルって、相手してくれるオヤジが見つかって、虐められに行くのよ。」
 法子は静かに眼を閉じると、哲哉に凭れながら哲哉の愛撫に身を委ねていく。
「いきたいか?」
 哲哉が耳元で囁く。法子は哲哉の胸に上気した顔を埋めると、恥じ入るように小さく頷く。そのいじらしい姿に、他の男子達は思わず抱きしめたくなるような衝動に駆られ、音を立てて唾を飲み込む。
「じゃぁ、自分でいくんだ。」
 哲哉が女の色香をぷんぷんと放つ法子の秘部から手を引いた。そして、法子の手を取ると、法子の秘部に添える。法子は縋るような視線を哲哉に向けるが、軽く歯に噛み再び哲哉に凭れると、目を伏せ自らを慰め始めた。
「…やってるぅ。」
「ほんもの…だぁ。」
 女子達の好奇と侮蔑の入り交じった視線に反して、ほとんどが女の裸など見るのは始めての男子達は、涎を垂らさんばかりの勢いで、法子の淫靡な姿態を食い入るように見つめていた。
「…いっても、いい…ですか?」
 いくときはいつも許しを得るよう教育を施されている法子は、薄く瞼を開けると、哲哉にとろけそうな表情を見せ、許しを請う。法子にとって最早哲哉はクラスメートではなく、淫靡な責めを受ける御主人様に見えていた。哲哉は、法子に柔和な笑みを漏らすと、
「いいぞ、いっても…。」
 その言葉に法子は、ほんの微かに笑うような表情を浮かべた。
「…ありがとう…、御座います。」
 吐息混じりに礼を言うと、自らの秘部に伸ばした手を一層激しく動かし、短く断続的な喘ぎ声を漏らしながら、昇天していった。そして、痙攣を続ける肢体を慈しむように、自らの腕で抱きしめると、哲哉に包まれながら大きく開いた両脚を閉じた。
「いったの?」
「すごぉい…。」
「やっぱ、あんな契約するだけのこと、あるよねぇ〜。」
 呆れたような女子達の声に法子の理性が本能を押し返した。何人ものクラスメートに自分の痴態を晒し尚もその絶頂を迎えたことに、今更ながらその裸体を縮め羞恥に震えた。
「法子。ぼぉっとしてて良いの?陽子さんから、呼び出しくったんでしょ。」
 法子は美菜の問いにはっとなった。ポケベルが鳴ってから何分過ぎたであろう、法子は慌てて制服を探したが、無い。自分が床に落としたはずの衣類が見当たらない。法子は縋るような目つきで美菜を仰ぎ見た。
「あの、制服…返して。早くしないと、陽子さんに…。」
 教育されてしまう、法子はそう言いたかった。しかし美菜は不気味な笑みを漏らしたまま、法子を見下ろす。
「ねぇ、法子。返しても良いけど、その前に条件があるの。」
 法子の胸は嫌な予感に重くなる。
「私達の、ペットになって欲しいんだけど…。」
 美菜がにやにやしながら法子に告げる。他の生徒達も同様に冷ややかな微笑をたたえながら法子を見つめていた。法子は、苦渋に満ちた表情を浮かべるとやがて俯き、自分の運命を改めて呪う。そしてクラスメートのペットにされる屈辱に、法子は震えた。一体自分は何人に隷属を誓わされるのであろうか、答えのない自らの問いに法子は苛まされた。
「嫌なら、いいのよ。」
 嫌と言ったら制服は返してくれない、これ以上遅れたら…、法子の胸は諦めの心境に包まれ、小さな溜息を吐く。
「ペットに、…なる、わ。だから、服を返して。」
「あら?何、嫌そうな顔して、嫌なら良いのよ。それに、口の訊き方も知らないの?」
 美菜の意地悪な問いに、法子は唇を強く噛んだ。
「い、嫌では…、ありま、せん。」
「じゃぁ、きちんと手を付いて、゛ペットにして下さい゛って、お願いしなさいよ。」
 搾るような口調で答える法子に、小気味よさそうな笑顔を浮かべた美菜が言い放った。法子は美菜に恨めしそうな視線を送ると、やがて屈辱に身体を震わせながらその場に手を付いた。
「皆様…、法子を、…ペットに、して…下さい。」
 自分の家庭を壊されたと信じて疑わない美菜は、張本人の法子を自分の足下に平伏させた事に、言いようの知れない興奮を覚えその身体を震わせた。
「それじゃぁ、俺達の命令には、絶対服従するんだぞ。」
 法子は哲哉の言葉に小さく返事をした。哲哉も美しく、アイドルとして崇められている法子を隷属させられる喜びに興奮している。
「ふふ…法子。お前が学校に来たときは、とことん虐めて上げる。死ぬほど恥ずかしくて辛いこと、沢山させてあげるわ。覚悟しな。」
 美菜の言葉に法子は頭を垂らしながら、その瞳に涙を滲ませた。唯一安らげると思われた学校も、屈辱と恥辱に虐待される場に変わってしまった。法子の胸はやり切れない思いに暗く重く沈んだ。
 平伏している法子に、美菜が制服を放った。法子ははっとすると、それを急いで身に付けようと手にするが、下着が無い。
「法子、これから学校では、下着は禁止。分かった。」
 美菜の言葉に法子は眼を伏せた。全てを私物を奪われた法子にとって、僅かに支給された下着は貴重品だ。
「あの…、付けませんから、…返して、下さい。お願いします。」
 法子は必死で美菜に縋るが、美菜はにやにやしながら返してくれない。法子は諦めてブラウスを手に取ると、その小ささにに気づく。
「お前に相応しい制服、あげるわ。」
 法子は時間に追われ仕方なくそのブラウスを羽織ったが、ボタンは僅かに三つ目と四つ目の二つしか無い。そして、ボタンを締めると法子の形の良い乳房が窮屈そうに張り出している。ブラジャーをしていないことが、はっきりとその乳首が浮き出ていることで確認出来た。法子は唇を噛みしめると、美菜に困惑の表情を向ける。
「これで…、このカッコで?」
「そうよ、不満?…それならタン全部取る?」
 法子は小さく頭を振ると、座ったままスカートを履き、立ち上がる。僅かに腰を覆う程度のその短さに、法子は改めて憂鬱になる。男子達は、短いスカートからすらりと伸びた両脚を見つめうっとりとした表情を浮かべている。
「似合ってるわよ。ペットの法子ちゃん。」
「ほんと、すっごく厭らしい。」
「乳首、起ってるんじゃん。」
 女子達の揶揄に、法子は羞恥に俯き唇を噛む。
「いい、法子。私達に出会ったら、そこがどんな場所でも、深くお辞儀するのよ。挨拶の出来ないペットは、とことん躾るからね。」
 法子は時間の無さも手伝って、美菜の申し出に従順な返事を繰り返す。ようやくブレザーを返された法子は、踵を返し足早に扉に向かった。しかしそこには鍵が掛かっている。法子は恐る恐る美菜を振り返った。
「法子。挨拶と、お前のスケベなマンズリを見てやったお礼、まだでしょ。」
 美菜は冷たい笑みを浮かべながら法子に近づくと、耳元で囁く。法子は屈辱にその身体を震わせると、脚を引きずるようにもう一度彼らの前に立ち、深々と腰を折り、小さな声でお礼を言った。
「皆様…、今日は、私の、恥ずかしい…オナニー姿を、見て頂き、有り難う、御座いました。…これからは、どうぞ…ペットとして、何時でも、何処でも、虐めて下さい。宜しくお願いします。…今日は、これで、失礼します。」
「ははっ、法子のケツ、丸見え。」
 美菜が大袈裟に叫ぶ。法子は、唇を噛み固く眼を閉ざし露わになった臀部を隠したい気持ちに必死で堪える。
 法子は走った。昼食時間ということで多くの生徒とすれ違い、スカートの裾とブレザーの襟を必死で押さえるが、それでもスカートが揺れ法子の小さなお尻がちらちらと垣間見える。しかし、陽子の呼び出しからかなり時間が経過し、それらの羞恥よりも陽子の教育の恐怖が打ち勝つ。走りながらも、なにか一刻でも早く嗜虐者の元に虐待を受けるために走らされているような気がし、法子の脚を重くさせるが、それでも走った。教室に戻り、荷物をまとめ校門に向かうと、車から降り腕を組んで仁王立ちしている陽子の姿が見えた。法子は息を切らせて陽子の前に立つと深々と腰を折った。後から見ると法子の臀部は丸見えになっているはずだ。しかし、それでも法子は頭を垂らす。
「ご、御免なさい。…申し訳、有りませんでした。」
「顔、上げなさい。」
 陽子の低く恫喝する声に、法子は恐る恐る顔を上げた。強烈な平手打ちがその頬を襲った。眼から火花が飛び出そうな勢いに、法子は怯えながら、
「あの…、美菜…さんが、美菜さんが…。」
「美菜が、何?」 
「帰して、くれなかったの、です。だから…。」
 法子は恐怖に歯を鳴らしながら必死で言い訳をする。すると、陽子は吊り上がった瞳を更に吊り上げ、今度は往復ビンタを法子に見舞う。その強烈さに頭の中まで痺れがくる。じんじんと熱くなった頬をおさえながら、涙を溜めた瞳で陽子を見つめた。
「お前は、卑しい奴隷なのよっ。それなのに、高貴な人様のせいになるのかい。誰だろうと、相手がどんなに悪くても、奴隷のお前が罪を被り、罰を受けるのは当然だろっ。そんなことだから、お前は何時まで経っても立派な奴隷に成れないんだ。そんなことだから、何時までも借金を返せないんだ。」
 陽子の理不尽な怒声に、法子は頬を抑えたまま俯き身を縮めた。そして、耐えていた涙を溢れさすと、声を上げて泣き崩れた。
「ほらっ、いいから乗りなさい。」
 陽子に抱えられ後部座席に連れ込まれるが、幼女のように声を上げ、法子は泣き続けた。陽子は、滂沱する法子の震える肩に手を廻す。
「いい、法子。奴隷はねぇ、世の中の悪いことは全て、自分のせいだって思わなきゃ駄目よ。御主人様が暑いっていったら、お前が謝るの。御主人様がお前とは無関係の仕事で失敗しても、お前が謝るのよ。世の中の全ての悪事に対して、お前は謝罪する義務があるんだから。…奴隷に、言い分も、言い訳も無いのよ。」
 諭すような優しい口調の陽子に、法子の涙は次第に治まる。そして、眉間に深く苦悩の想いを刻み、涙で光る瞳を陽子に向けた。哀しみに耐えるその表情は、女の陽子でさえ思わず抱きしめたくなるような、いじらしくも幼気な姿だ。
「ご、御免、なさい。…私が、…私が、いけません、でした。…悪い、私に、…罰を、与えて、下さい。…宜しく、お願いします。」
 陽子は、しゃくりあげながら頭を垂れる法子を、思い切り虐め滅茶苦茶にしたい衝動に駆られた。
(お前って、本物の奴隷だわ。)
 陽子は嗜虐心を大いに煽る法子の天性に、改めて自分達が手に入れた美少女に感嘆の溜息を漏らす。法子はそんな天性が備わっていることなど自分では思いもよらず、憂いを含んだ瞳で陽子を見つめていた。

 


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