『麗と隷』
       第四話       

第四話

 法子はあてがわれていた部屋で、連日の陵辱に疲れ深い眠りにおちていた。しかし、いきなり達夫にたたき起こされ、焦点の合わない瞳を達夫に向けると、法子の顔が自然に強ばる。法子にとってやはり達夫は許すべからざる存在である。自分がこんな境遇に堕ちたのも達夫のせいだし、無理矢理身体を開発され変態的な行為に濡れてしまうのも達夫が悪い、法子はその全てを達夫の起因に依るものと思い憎んでいた。
「おいっ、亜希が倒れたっていうのに、なに呑気に寝てんだよ。」
 法子は無言で冷めた視線を達夫に向けた。
「ふっ、お前、服従することを誓っていながら、何なんだ、その眼は?」
 達夫が法子の顎を掴み、荒々しく法子の顔を揺さぶった。
「奴隷のくせに、俺に反抗的な態度をとりやがって。お前を変態のマゾにしてやった恩を忘れてやがる。」
 法子はその瞳に涙を滲ませながらも、健気に達夫を睨む。法子に出来る精一杯の無言の抗議だ。
「今から、お前を犯してやるから、素っ裸になれ。」
 いったい今は何時であろうか、深夜、倒れるように眠りに入って幾らも経っていないような気がする。夜はまだ明けていない。法子は唇を強く噛むと、身体を震わしながら相変わらず達夫に刺すような視線を向けたままだ。
「聞けえないのか、言うこと聞けないなら、これだ。」
 達夫の手には浣腸液が握られている。法子はそれを見ると、一瞬顔を青ざめさせたが、再び達夫を睨む。どんな弱みもこの男には見せたくない。その想いが法子を強くさせる。
「そぉか、いつまでその反抗的な態度が続くかな…。」
 達夫は冷酷な笑みを漏らすと、法子の華奢な身体に馬乗りになった。
「いっ…、いやぁっ…。」
 法子の悲鳴が響く。達夫は暴れる法子を強引にねじ伏せ、素早く後ろ手に手枷を掛けた。
「やっ…めて…。いやっ…あ。」
 法子は力の限り抵抗するが、達夫の力はそれ以上で法子の抵抗は虚しく空回りする。
「素直になれば、許してやるぞ。」
 ぞっとするほどの冷めた口調で達夫は法子に言った。法子は、歯を食いしばったまま達夫に組み敷かれている。達夫はあくまでも自分に逆らう法子に苛立ちを覚えると、法子の髪を鷲掴みし、強引に立たせ部屋を出る。法子の悲鳴が廊下でこだまする。
 達夫は法子を゛教育部屋゛に連れ込み、天井から下がる鎖に法子の手枷を括ると竹刀を手にした。法子の表情が先程までの気丈なものから、次第に気弱なものへと変わっていく。達夫は竹刀の先端で震える法子の顎を上げさせ、怒りに満ちた表情を見せた。
「お前のせいで、聡が死に、亜希までもが倒れたんだ。わかってんのか。」
 自分が元凶ではないか、気弱な表情から再び変わり達夫を睨む。
「あ…、あなたが…、悪いのよ。」
 達夫はジーンズの上から力任せに法子の太股に竹刀を振り下ろした。法子は必死で歯を食いしばり、達夫の打擲に耐える。この男にだけは…、その想いが法子を気丈にさせた。
「お前の親からは、俺は散々いびられてきたんだ。お前が苦しむのは、当然なんだ。」
 達夫は狂ったように法子に竹刀の打擲を繰り返した。服の上からとはいえ、その痛みに気丈であった法子の眼から涙が落ち始めた。
「どうだ。許して欲しいか?」
 達夫が、息を切らせながら法子に尋ねる。法子も肩で息をさせていたが、達夫を憎む気持ちは変わらず、憎悪の籠もった視線を達夫に向けた。
「どうしたの、騒々しい。」
 陽子が寝姿のまま部屋に入ってきた。達夫の驚いたような表情を見て、法子は何となく安堵感を覚えた。
「いや…、こいつに゛教育゛をしてるんだ。」
「あらっ、その奴隷は、私が任されたのよ。」
 法子は何となく陽子が自分の味方に思えてくる。不敵な笑みを浮かべながら達夫に歩み寄ってくる陽子に、法子は縋るような視線を向けた。
「法子を虐めたいときは、ちゃんと私の許可をとりなさい。法子はあなただけの奴隷じゃぁ、ないのよ。」
 自分を助けているのか、堕としているのか、法子は複雑な想いになる。達夫は年下の女に窘められ、悔しい様な表情を向けた。しかし、陽子が怖いのか、それとも梅田が怖いのか、或いは黒部か、達夫は陽子に対して妙に卑屈である。
「しかし、こいつ、俺に逆らうんだぞ。それでも、あんたちゃんと゛教育゛してんのか?」
 陽子がきつい眼で法子を睨んだ。法子は思わず身を縮める。
「法子。本当かい?」
「い…、いえ。…あの、…で、でも…。」
 陽子が怯える法子に近づくと、強烈な平手打ちを法子の頬に炸裂させた。  
「どっちなのっ。」
 厳しい声で法子を詰め寄る陽子の瞳は、冷酷そのものであった。法子は唇を噛み、陽子に哀愁の籠もった瞳を向けるが、その視線の冷たさに俯いてしまった。
「こいつは、俺が折角犯してやるって言ったのに、拒みやがったんだ。」
 達夫は、まるで小学生が先生にでも言いつけているような口調だ。法子の達夫を軽蔑する想いが、益々強くなる。
「達夫さん。これから私が、厳しい゛教育゛をするから、私に免じて許してあげて…。でも、あなたも、これからは注意して。法子を使う時は、私の許可を取れって、社長からも言われてるでしょ。」
 達夫は悔しさに顔を真っ赤にすると、法子に罵声を浴びせて部屋を出ていった。陽子はそれを見送ると、法子を振り返る。
「よ、陽子様。…お、お願いします。あの人を、あの人とだけは、許して下さい。…他のことでしたら、何でもします。させて、頂きますので…。あの人とだけは…。」
 法子は、涙混じりの声で必死に哀願を繰り返した。達夫とだけは、例えどんな地獄を見ようと交わりたくない、その想いが法子を必死にさせた。そんな法子を陽子は含みのある笑顔で見つめた。
「いいわ、あいつとだけは、許してあげる。でも…いい、これからは、例えどんな相手とでも、拒むことは許してあげないわよ。…そうねぇ、それが、犬や豚とでも、お前から頭を垂れて、犯して頂くのよ。いいわね。」
 法子は愕然とする。身体が震えが自分でも止められない。
(そ、そんな…ことまで。…で、でも…。)
 達夫より、犬や豚のほうが法子にとってはましな存在かもしれない。法子は必死で自分に言い聞かせた。そして、哀しみに潤んだ瞳を陽子に向けると、小さく頷く。
「分かり…ました。」
 陽子は怯える法子に柔和な笑みを漏らした。
「ふふ…。そんな顔しなくても大丈夫よ。そんな事、お前が素直でいい奴隷でいれば、させないから。お前があいつと家畜と、どっちを選ぶか試しただけ…。でも、家畜を選ぶなんて…、よっぽどあいつにヤられたくないのね。」
 法子はほっとした表情を浮かべた。すると陽子は柔和な笑みから、一転して厳しい表情に変わると、威圧感のある言葉で法子を諭す。
「でも…いい、私に少しでも逆らったり、命令に躊躇ったら、あいつと、させるからね。分かった。お前を、生かすも殺すも、全て私が握ってるんだからね。」
 法子は素直に返事をした。
(ふふ、…こいつの、絶対的な弱み、見つけたわ。)
 陽子は高揚した気分を抑えきれずその薄い唇を歪ませると、法子の端正な唇に合わせ、卑猥な音を立てて法子の舌を吸った。

 翌日、雑誌のインタビューなどの仕事を受けた法子は、日も暮れ始めてから陽子と東都テレビ内の喫茶店にいた。相変わらず何の説明もされない法子にとって、移動するたびに不安になるが、テレビ局ということで幾分気が楽になった。何人かの知り合いが法子に挨拶をし、雑談を交わしに来る。まだ世間には、正統派のアイドルとして、奴隷の境遇に堕ちた事は公にされていない。出来ることなら、このまま…、法子にはその淡い期待がある。
「あっ、どうも…。お早う御座います。」
 陽子の声に法子がふと視線を上げると、そこには中年の恰幅の良い男が二人に向かってきた。法子もその男を知っていた。東都テレビのミスター視聴率、藪プロデューサーだ。
 万年Bクラスの東都テレビを、この男の企画力で、他の全国網のテレビに肩を並ばせ、凌ぐ程の勢いを得たのもこの男の力である。しかしそれを良いことに、女性タレントをかたっぱしから食っているという噂だ。芸能人に友人のいない法子の耳にも届くということは、よっぽど遊んでいるはずだ。法子の胸は重くなるが、強ばったような笑顔を見せてると、法子も挨拶をした。藪は音を立ててソファーに座ると、コヒーを注文する。
「どうも、すみません。お時間とらせて…。」
「ふん…。陽子からの頼みなら、俺も大好きだよ。」
 下品な笑みを漏らし、法子を上目遣いに見る藪に、法子の背筋が思わず冷たくなる。
「あら、そう言って頂けると私も嬉しいわ。なにせ、今は、東都テレビの看板プロデューサーですものね。昔の様に、気軽に口も利けないわ。」
「ふふ…。そんなことないさ。あっちの方は、昔より激しいぜ。」
 法子の存在を忘れたかのように談笑を交わす二人に、法子は視線を床に落としたまま聞いていた。
「で、…これが、電話で話した女の子達のプロフィールと写真です。」
 陽子が手渡したのは、法子の事務所、A.Kプロダクションのタレント名鑑だ。藪がその資料に眼を通し、再び下品な笑みを漏らす。
「分かった。使わせて貰うよ。…ところで、法子ちゃん。俺の番組、出ないか?」
 法子は突然話しをふられ、思わず息を飲み、戸惑うような表情を浮かべると陽子に縋るような視線を向ける。
「はい。もう、今度から、どんなことでもさせますので、どうぞ使って下さい。」
 陽子が唄うような口振りで藪に告げる。法子に向かい分厚い唇を歪める藪に、法子の顔が引きつる。
(この人は…、知っている…。)
 法子は俯き小さな溜息を漏らす。一体自分は何人に陵辱され、屈辱と恥辱にまみれるのだろう、この羞恥地獄に底はあるのだろうか、答えを知らされることの無いその想いは、法子の胸をきつく締め付けた。
「まだ、ちょっと、撮影がおしてるんだ。もう暫く待っててくれよ。」
 法子の想いなど意に介さず、藪が法子に言い放つ。
「大丈夫ですよ。幾らでも待たせますから…。」
「じゃぁ、ここじゃぁなんだから、向かいの喫茶店で待っててくれ。」
「分かりました。」
 陽子が答えると二人が席を立った。法子も慌てて席を立つ。
(何を…、待つの?)
 法子の胸が再び不安にその鼓動を速くさせると、足取りをも重くさせる。コヒー代を払おうとした藪を、陽子が含み笑いで制すると法子を振り返る。
「ふふ、藪さん。大丈夫ですよ。これからは、全て法子が払いますから…。」
 法子は藪に向け、哀愁の漂う笑顔を見せると小さく頷いた。

 法子は指定された喫茶店で一人、藪を待っていた。陽子は、藪に服従することをきつく厳命すると、そのまま雑踏に消えた。それから二時間近く経過し、夜の帳は落ちている。時折、法子のサインを強請りに、数人の若い男が法子に近づいてきた。法子は一応営業スマイルを見せると、快くサインをした。
(戻りたい…。アイドルでも無い、普通の女の子に…。みんな生きてた、あの頃に…。)
 一人で喫茶店の椅子に背も垂れていると、様々な想いが法子の胸に去来し、法子を切なくさせた。逃げることも考え辺りを見回すが、誰かに見張られていそうで腰を上げられない。
「待たせたな…。」
 不意に藪の声が頭上に響く。法子はその声に、はっとすると緊張の糸を張らせた。
「出るぞ…。」
 藪がぶっきらぼうに言い、早足で喫茶店を出て、人混みを掻き分けていく。法子はそんな藪に遅れないように、その影に隠れ付き従う。
 どれほど歩いたであろうか、藪が訝しげなビルの地下室に歩を進めた。法子は辺りを見回す余裕さえ失い藪に続く。
「あれっ、藪さん。いらっしゃい…。」
 そこの店主であろうか、中年の男が親しげに藪に声を掛けた。法子はそこで始めて我に返り、辺りを見回す。その店は、数々のSMグッズが並ぶアダルトショップであった。鞭、拘束具、バイブや黒革の衣装等が整然と並んでいる。法子は、それらのグッズがまるで自分を舌なめずりして出迎えた様な気がして、思わず身を竦めた。
「今日も、また綺麗な連れがいて…、羨ましいですな。」
 男が藪に揉み手をしながらも、藪の影に隠れている法子を好色に満ちた眼で盗み見る。法子は羞恥に頬を染めると俯いてしまった。先程から法子の胸は不安に押し潰されそうだ。「店長、知らないの?、倉木法子。」
 藪が事も無げに言った。法子は自分の素性をばらされ俯いたまま思わず息を飲む。
「えっ、あの?」
 店長は驚きの声を上げると、俯いた法子の顔を必死で見ようと頸を傾げた。好奇の視線を強く感じ法子は唇を強く噛むと、これ以上無いほど身を縮ませ、項垂れた頸の角度をさらに深くする。
「へぇ〜、あの純情そうな子がねぇ。いや、ほんと、羨ましい限りで…。」
 羨望の眼差しを藪に向ける店長に、藪は得意になり破顔する。
「それで、これから、プレイするので?」
「あぁ、そうだよ。それで、面白い物でもないかと、立ち寄ったってことだ。」
 藪がカウンターを離れ、陳列物を見て回る。法子はその藪に従い、一緒に店内を付き従った。
「さて、まずは格好から決めるか…。法子、素っ裸になるんだ。」
 突然の藪の申し出に、驚愕の表情を浮かべる法子の心拍数が異常な程上がる。
「あっ…、あの…。」
 言葉を失う法子の口からは意味をなさない言葉が漏れる。
「どうした?。…俺の命令に逆らったら、報告しろって、陽子から言われてるぞ。それとも命令違反を、報告するか?」
「いっ、いえ。…す、すみません。あの…突然だった、もので…。」
 法子は必死で取り繕うが、先程からの店長の好奇に満ちた視線が気になり、カウンターを見た。やはり、店長は卑下た笑みを浮かべたまま法子から眼を離さない。法子はその視線とまともにぶつかると、慌てて視線を外し小さな溜息を漏らす。
「出来ないのか?」
 陳列物から視線を外さなかった藪が、法子に冷たい表情を向けた。
「あ…、いっ、いいえ。…します。」
 法子の今日の装いは、薄いピンクのワンピースと、先日古宇田の店であてがわれたジャケットであった。法子の心臓は、口から飛び出るのではないかと思われるほど激しく脈打ち、その華奢な身体は震えが止まらない。怖ず怖ずとジャケットを脱ぐと、ワンピースのボタンに手を掛けた。法子の指は羞恥に震え、思うようにボタンが外せない。
(お願い…。向こう、むいてて…。)
 店長の視線を痛いほど感じ、法子は必死で声にならない哀願を繰り返す。
「早くしろよ。」
「は…い。御免なさい。」
 藪の苛立つ声が、法子の脳天に響く。ままならない指でようやくボタンを全て外すと、法子は辺りを伺う。相変わらず店長は法子を見つめている。それにいつ誰が来店するか分からないこの状況が、法子を躊躇わせる。
「出来ないなら、陽子に報告だ。」
 藪は憮然とした表情で店を出ようとした。法子は焦って、
「まっ、待って…、下さい。…お、お願いします。」    
 その声に藪が振り返る。唇が歪んでいた。
「出来るのか?」
 法子は歯に噛み、藪に哀愁の籠もった瞳を向けると全身を紅潮させ小さく頷く。
「じゃぁ、躊躇った罰だ。」
 藪が法子の耳に熱い息とともに囁く。すると法子の身体に被虐のスイッチが音を立てて入った。すっと伸びた身体は、次第に妖しい熱を帯び始め、呼吸は小刻みにそして荒くなる。やがて、潤み始めた瞳をゆっくりと藪に向けるとコクリと頷き、眉間に深い皺を刻んだ表情を店長に向けた。
 店長は、その怪しさに思わず息を飲む。そして、頼りない足取りで自分に向かってくる法子をまるで痴呆のような表情を浮かべ見つめた。目の前に立つ法子は、幼さを出したテレビや雑誌などとは別人のように妖しく輝き、そして美しい。
「あの…、お願い、します。…私の、厭らしい…裸を、見て、下さい。」
 潤んだ瞳で見つめられた店長は、音を立てて唾を飲むと、
「あぁ…、い、いいよ。」
 法子はとろけそうな表情を見せると、小刻みに震える手でボタンの外れたワンピースを床に落とした。そして、ゆっくりと手を後に廻しブラジャーのホックに手を掛け、それを外す。少しの躊躇いを見せたが、やがて小振りだが整った形をした乳房を露わにした。
「法子。…あと、一枚だ。」
 耳元で藪に囁かれた法子は、コクリと頷く。歯の根がカチカチと音を立てているのが、藪の耳にまで届いた。
 焦点の定まらない瞳をしたまま、法子は最後の一枚に手を掛ける。そして、熱の籠もった吐息を吐くと、ゆっくりとショーツを落とし、その瑞々しくも均整の取れた裸身を晒した。小刻みに震える腕や膝は、羞恥のためか、或いは感じているのか、しかし、その震えは嗜虐者の欲情を大いに煽った。
「店長、この衣装、貰おうか。」
 いつの間にか藪は真っ赤なエナメル製の衣装を手にしていた。
「着せてやるよ。」
 藪は虚ろな法子を振り返らすと、その衣装を法子に着せていく。大きく開いた胸元は法子の乳房の谷間を覗かせ、薄手の生地が尖った乳首を目立たせる。大胆に開いたバックは臀部にまで届く程である。僅かに腰回りを覆う程度の丈しかないその衣装は、両サイドに腰まで切れるスリットが入っていた。
「ふふ、とても、エロっぽいな…。」
 藪は大胆な衣装に満足げな笑みを浮かべる。
「これも…と。」
 藪は法子の細く長い頸に、10cmも高さのある首輪を括った。それにより、法子は羞恥に俯く自由を奪われる。眉間に苦悩の皺を刻み、その窮屈さを健気に耐える法子に、藪は益々欲情する。そして、震える法子の腕を後ろ手にし鋼製の手錠を掛けると、極端に高い不安定なピンヒールも履かせた。
「どうだ、気に入ったか?」
 藪の問いに、法子は熱い吐息で返した。
「さて、これも、面白そうだな。」
 藪が手にした物は、革製の貞操帯のようなベルトであった。おどろな突起が三つも付いており、女の敏感な箇所を陵辱するための物である。法子は、不気味なモーター音を轟かせるそれをぼんやりと見つめるた。余りの羞恥に法子の思考力は完全に低下し、妖しさが際立つ。
「法子。店長に履かせて貰え。」
 藪はその貞操帯を店長に手渡す。
「履かせてやろうか…、法子ちゃん。」
 店長は、涎を垂らさんばかりの表情で法子を伺う。
「は…い。ど、どうか、履かせて、下さい。…お願い、します。」
 法子は窮屈な拘束具を纏いながらも、腰を折る。店長は法子に近づくと、すらりと伸びた片脚を上げさせ、すべすべした法子の脹ら脛や太股を頬ずりし堪能する。
「ぁあ…、あん…。」
 過敏になった法子の全身は、その全てを性感帯に変え男の愛撫を受け入れる。そして、店長は十二分に湿った秘肉にも手を伸ばすと、それを弄ぶ。
「あっ…うぅ…ん。」
 そこは熱く、溢れるばかりの愛液を垂らしていた。法子は立っているのも苦しくなり、その吐息を益々荒くする。
「早くしろよ。」
 藪に急かされ、店長は照れ笑いを浮かべると名残惜しそうに滑った手を離し、貞操帯を履かせ、きつくベルトを締める。
「法子。これ、リモコンで動くんだぞ。」
 藪がスイッチを入れる。
「あぁっ…、いっ…、ああんっ…。」
 法子はその余りの強い刺激に嬌声を上げると、立っていることが出来ずその場に蹲る。
「法子…。立つんだ。」
 藪の声に、法子は苦悩の表情を浮かべ何とか立とうとするが、膝に力が入らず立つことが出来ない。
「ぁあ…、だっ、駄目…。お、お願い…。」
 カウンターに凭れ、淫靡な光をたたえ悶える法子を、二人の男は好色な目つきで見つめていた。やがて、一際熱い吐息を漏らした法子は、ねっとりとした視線を藪に絡ませる。
「…いっても、…いい…、ですか?」
 その妖艶な表情は、散々女漁りを繰り返した藪にとっても、刺激的であり思わず息を飲むほどだ。
「まだ、駄目だ。」
 藪は冷たい視線で法子を見下ろすと、スイッチを切った。
「ぁん…。」
 法子は物足りなそうな目つきで藪を見つめる。
「ほら、立つんだ。」
 藪は法子の首輪に鎖を括ると、それを引っ張り法子を強引に立たせる。法子の膝は小刻みに震え、蹲りたい想いを必死で堪え脚にに力を入れる。
「これ、全部でいくらだ…。」
 藪の声に店長は我に返り、計算を始めた。
「えぇと、全部で、…七万円でいいですよ。」
「全て、お前が払うんだろ。」
 法子は、虚ろな表情ながらも小さく頷く。
「立て替えとくから、後で請求するぞ。」
 藪は吐き捨てるように言うと、カードで精算する。法子の借金が、また増えた。

 行き交う人々は、その異様な光景にみな眼を奪われていた。妖しく真っ赤に光る大胆な衣装を身に纏い、サングラスを掛けた中年の男に鎖を引かれ、身を捩りながら歩く美少女に…。
「法子…。みんな、見てるなぁ、お前のこと…。」
「は…い。」
 すれ違う人々の視線は、法子の心の奥底の敏感な箇所に刺すような刺激を与え、法子の身体は益々その妖艶さを増していった。羞恥に俯く自由を奪われている法子は、やがてそれらの視線を跳ね返すかのように、人々に甘美に濡れた視線を返す。
(わたし…、感じてる。露出狂に…、なっちゃった、の?)
 ふいに藪がリモコンのスイッチを入れた。
「ぁん…。」
 法子は艶っぽい吐息を漏らすと、力の抜けた震える脚を必死で支える。
「止まるな。」
 藪が歩みを止めた法子を、首輪に繋がれた鎖を引き無理矢理歩かせる。法子は、音を立てて震える歯で食いしばると、不安定な靴で歩を進める。大衆の面前で自慰をしながら歩いているような感覚に、法子の頭の中は痺れ、意識も朦朧としてくる。
「や…、藪、様。…も、…もう、…いきそう、…です。」
 苦悶に満ちた表情で、藪に凭れ掛かると熱く妖艶な溜息を漏らす。
(も…う。どうなっても、いい。)
 法子が絶頂に届きそうになると、絶妙なタイミングで藪がスイッチを切る。何度も登りつめそうになるが、その都度藪が好色の笑みを浮かべ法子を引きずり下ろす。その繰り返しに法子の淫靡な側面が悲鳴をあげている。法子の瞳はぎらぎらと輝き、欲情を満たされぬ想いから、恨めしげに藪を仰ぎ見た。
「ふっ、こらえ性の無い奴だ…。」
 藪はそんな法子を、嬉々とした表情で見つめた。
 やがて藪は法子を公園に連れ込んだ。そこには数組のカップルがベンチに座り肩を寄せ合っていたが、法子達を見つけると、一様に好奇と侮蔑の入り混じったような視線で見つめ、ひそひそと二人を検索する。法子はまるで官能の波に飲み込まれている自らの姿態を見せつけるように、しかし頼りない足取りでその間を歩いていく。
 藪が空いているベンチを見つけると、そこに座った。法子はどうしていいか分からず藪の前に佇む。
「法子…。いきたいか?」
 法子は潤んだ瞳を伏せると、唇を強く噛み藪を見つめ直す。
「は…い。…いかせて…下さい。」
 藪は更に唇を歪ませた。
「それじゃぁ、素っ裸になって、土下座するんだ。」
 藪を見つめる法子の息は益々荒くなり、眉間に深い皺を刻ませた。しかし、大きく火照った吐息を漏らすと、エナメルの衣装に手を掛けた。魅惑の悪魔にでも取り憑かれたような法子は、自分の本能に従順になる。
「おい、あいつ、裸になってるぜ。」
「いやだぁ、こんなとこで…。」
 法子の乳房は手に触れるまでもなく固くなっているのが分かる。乳首も、男を誘うが如く天を突き、四肢も興奮のためか羞恥か、小刻みに震えている。貞操帯を外すと女の色香が臭い、湯気を放っているかのようであった。
 公衆の面前で、不安定なピンヒールを残し全裸になった法子は、その場に膝を付いた。土のヒンヤリとした感触が、火照った法子の身体に心地よく伝わる。
「や…ぶ様。…私を、…いかせて…下さい。お願いします。」
 土に額を付けた法子が、震える声ながらもしっかりと卑猥な懇願をした。
「法子。本当にお前は、卑しい変態奴隷なんだな。」
 自分を蔑む言葉も、今の法子には刺激的な愛撫に感じ、身体が痺れる。顔を上げた法子の表情は今にもとろけそうだ。
「はい。…変態、奴隷…です。」
「此処で、セックス、するか?」
 法子の瞳に一層妖しい光が宿る。
「…は、い。…お願い、します。」
「俺とのセックスは、高いぞ。」
 藪が、まるでお預けを喰らっている家畜を焦らすようにいたぶる。 
「は…い。おいくらでも…、払わせて…、頂きます。」
 自分からお金を払い陵辱して頂く、陽子に叩き込まれた奴隷としての心得が、次第に法子の胸に染み込んできた。
「ふふっ、…それじゃぁ、高貴な人間様の靴を舐めろ。」
 法子は自分でも驚くほど従順に、藪の汚れた靴を唾液で光らせていく。二人を盗み見ているカップル達は、まるで痴呆の様な表情を浮かべ見つめていた。
「次は、お前自身が、俺のズボンのジッパーを開いて、尊い肉棒様に、挨拶するんだ。」
 法子は素直に返事をすると、藪のズボンから硬直しきった中身を取り出し、それを顎が外れそうになりながらも、口に含んだ。
 法子は、もうどっぷりと淫靡な世界に浸り、周りの状況などまるで無視するかのように、藪の肉棒を貪る。
「法子、俺の膝に跨って、自分から入れるんだ。」
 法子はふらふらと立ち上がると、藪の太い頸にほっそりとした腕を絡ませ、向かい合う形で大きく脚を開きベンチに膝を付くと、折れそうなほどの細い腰をゆっくりと沈めていく。夜空を指した肉棒の尖端が、自分の熱く濡れた秘部に当たるのを感じた法子は、唇を噛み天を仰いだ。
(地獄に…、堕ちる…。)
 そして、眼を閉じ大きく息を吸うと、柔らかな肉壁の狭間に、その肉棒を深く包み込んでいった。

「それから…どうしたの?」
 藪に数々の陵辱を受けた法子は、疲れ切った身体で額を床に付け、ソファーにくつろぐ陽子に、別れてからの報告をしていた。時間は既に深夜を指している。
「あの…、それから、…ホテルに、連れていって、頂いて、…鞭や、…蝋燭で、可愛がって、…頂きました。…それで、…そのホテルでも、あの…抱いて、頂きました。」
 法子は、慎重に言葉を選びながら報告をする。自分は悦ばせて頂いてるのだ、抱いて頂いてるのだ、必死で自分に言い聞かせる法子に、陽子はご満悦であった。
「ちょっと、裸になってごらん。」
 法子は身体をピクリと反応させると、ゆっくりと立ち上がり、怖ず怖ずと衣類を床に落としていく。裸になると相手への服従心が反射的に湧いてくる自分に、法子自身自分の卑屈さに呆れる想いがしていた。
 瑞々しくしなやかな法子の裸体には、数々の陵辱の哀しい爪痕が残されていた。
「傷だらけねぇ。明日から、お前の写真集の撮影に入るスケジュールだったけど、その身体じゃぁ、無理ねぇ。…スタッフのこと押さえといたんだけど、延期ね。えらい損害だわ。どうするの?」
 自分が悪いわけでは無い、みなが寄って集って自分を玩具にするからではないか…、法子はそう叫びたかった。しかし、俯き唇をぐっと噛むとその想いを必死で押さえると、
「ご…、ご免な…さい。」
 そう震える声で謝ると、涙が自然に滲んでくる。
「法子が損害分、ちゃんと埋めなさいよ。…それから、藪さんに、抱いて頂いた分や、ホテル代、月末にきっちり請求するからね。」
 法子は、深く項垂れる。
「は…い。…宜しく、お願いします。」
 萎縮し、小さくなる法子に陽子が煙草の煙を吹きつけた。
「ほんとに、何時までも甘えてないで、早く立派な奴隷になりなさいよ。何時までもお前のような、半端な奴隷を飼っとく程、この事務所に余裕は無いんだからね。」
 法子は、本当に申し訳なさそうな哀愁の籠もった表情を陽子に向けると、
「はい。…頑張ります。」
 小さな声で答える。しかし、立派な奴隷になったからといって、一体今と何が変わるのだろう。自分は、少しは楽になるのであろうか…、漠然とした疑惑が、法子の傷だらけの心に重くのし掛かる。

 


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恥辱小説の部屋

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