『麗と隷』
       第三話       

第三話

「法子、学校なんだが、美菜と同じ高校に行かせてやる。あの、黒部先生の末っ子も通ってるらしい。そこの理事長がな、黒部先生に世話になってるらしいから、黒部先生の口利きだ。だから、お前の芸能活動にも支障がないようにしてくれるってことだ。奴隷に学校なんて要らないって亜希は言ったんだが、通わせてやることにしたから。」
 連日の陵辱と亜希の拷問で身体に疲労が蓄積している法子であったが、梅田と共に各関係者の元に移籍の挨拶回りをさせられていた。その途中の車の中でその事を告げられた。法子が決まっていた高校は以前の事務所で世話してくれ、芸能人も多く通っている高校であったが、梅田のところに身を寄せたので高校進学は諦めかけていた。梅田の申し出に、法子は高校に通えることを素直に喜んだ。しかし、美菜と、そしてあの黒部の息子も一緒となると…、法子の胸に不安がよぎる。
「さて、法子。俺も何時までもお前のマネージャーをしてるわけにはいかんのでな。お前にマネージャーを新しく付けようと思ってる。実は、亜希がやりたいって言ってたんだが、亜希はマネージャーなんて仕事、ど素人だし、お前の゛教育゛も含めて、うってつけの女がいるんだ。まっ、黒部先生のとこの女だがな。」
 法子は、゛教育゛という言葉を聞くと、自然に身体が強ばる自分に気づく。しかし、亜希にマネージャーをやらせない、という話しに法子は少しの安堵感を抱いた。
「今から逢わせるから、覚悟しとけよ。そいつも、かなりの変態だからな。」
 法子は一気に憂鬱になる。 

 梅田と法子そして今日の運転手、安岡の三人は、喫茶店で遅い昼食をとっていた。事務所に居るときには、全裸のまま口だけで、文字通り゛餌゛を与えられている法子にとって、外での食事は何となく嬉しく感じる。隣に座る安岡が、法子の身体を何かに付け厭らしく触ってくるが、法子は抗うことで゛教育゛を受けることを恐れ、俯いたまま田口の所望に任せていた。抵抗もせず安岡のされるがままに、羞恥に震えながらも受け入れている法子を、未だにお預けをくらっている安岡がこの時とばかりに良いように弄ぶ。法子は他の客に気付かれないよう、必死で平静を装う。それでも事務所の゛餌゛よりはましだ。
「お久しぶり、梅田さん。」
 突然そんな三人に、女が居丈高に声を掛けてきた。法子は恐る恐るその女性を見た。齢は三十代後半の頃であろうか、切れ長の眉と目元は意志の強さを全面に出しており、張り出た頬骨と薄い唇は人の弱みを寄せ付けない情けの薄さを抱かせる。細身ながらも筋肉質で尖った身体は、黒部とは違う威圧感を漂わせていた。法子は、一目で彼女の嗜虐性に気づく。
「おぉ、陽子。久しぶりだな。…法子。こいつがさっき言ってた、お前のマネージャーの松坂陽子だ。」
 法子は、もじもじしながらも軽く会釈をした。
「ふふ、何?その挨拶は…。」
「まぁ、奴隷としちゃぁ、まだまだなんだ。そのへんの゛教育゛も、お前に頼もうと思ってな。」
 客はまばらとはいえ、公衆の面前で゛奴隷゛と言われる屈辱に、法子は他の客に気づかれやしまいかと、内心はらはらしていた。
 ふと、陽子が安岡に顎でしゃくる。安岡は小さく舌打ちをし、陽子に向けられない苛立ちを法子にぶつける。
「おいっ、折角、触ってやってたんだっ。お礼くらいしろっ。」
 安岡が、法子の頭を小突く。
「あっ…、は…い。ど、どうも、有り難う…御座いました。」
 法子は、良いように弄んだ安岡に対して、礼を言わされる屈辱に耐えながらも従順になる。 
尚も不満顔の安岡が渋々席を移動すると、隣に陽子が座った。法子は、改めて陽子の持つ威圧感を身近に感じ、その華奢な身体を縮ませた。
「へぇ〜、奴隷のくせに、生意気に人様の食べ物、食べてんだ。服だって普通だし…。梅田さん、ちょっと甘いんじゃぁないの。」
 法子は俯き、更に身体を小さく縮ませた。陽子に言われると、本当に自分が悪いことをしているような、そんな気になってくる。
「はは、しかしなぁ、まだ奴隷として飼ってやってから、幾日も経ってないんだ。最初は、こんなもんだろ。」
 梅田が呑気に返すと、法子を含みのある顔付きで見た。
「さて、法子。陽子のギャラなんだが…。月、幾ら払うんだ?契約書通り、芸能活動の費用や、お前自身の゛教育費゛は、自分で払うって、約束しただろう。陽子はお前のマネージャーなんだから、お前が払うんだ。それに、立派な奴隷にして貰うんだ、安くはないぞ。」
 法子は唖然とした。自分にそんなお金など有るわけはない。困惑の表情を浮かべる法子を、三人ともにやにやしながら見つめる。
「あっ…、あの…、どっ…どうすれば…、いいんですか…。」
「どうすればいいって、お前。お前が払えばいいんだろ。」
「で、…でも、私…、そんなお金…。」
 陽子の顔がみるみる険しくなっていく。
「あら…、じゃぁ、私は奴隷のお前のために、ただ働きをさせるの?。私なんかに、払いたくないってこと?」 
「い…、いいえ。ちっ…、違います。」
 法子は、陽子の怒気を含んだ声に怯え、慌てて否定した。
「仕方ない、金は、俺が貸しといてやる。…ところで、返せるあては、あるんだろうな。」
有る訳無いではないか、法子はそう叫びたかった。自分を理不尽な契約書で縛り、そして財産をも根こそぎ奪い、尚かついわれのない借金まで背負わせたではないか…。法子の想いが、深く重く沈む。そんな法子を、陽子が慈しむような優しい表情を浮かべ頬を撫で始めた。
「法子、大丈夫よ。お前は若いんだから、いくら借金しても、すぐ返せるって…。だって、お前には、この綺麗な顔と、身体があるじゃない。それが、お前の財産よ。そんなお前が、立派な奴隷に成れれば、借金の返済なんて簡単なことよ。」
 陽子の囁きに、法子は催眠術にでも掛けられているかのようであった。耳元で熱い吐息とともに諭されると、本当でそんな気がしてくる。
「法子、どうするんだ。」
 梅田が焦れたように問いかけると、それまで俯いていた法子が梅田を真っ直ぐ見つめる。
「あ…、あの…。お金を、貸して下さい。…必ず、返しますから。」
「…分かった。それじゃぁ、貸してやろう。」
 梅田は蜘蛛の巣に掛かった美しい蝶を、じわじわと追い込む。 
「それじゃぁな、法子。陽子には、月、二百万でどうだ?」
 法子が虚ろな表情のまま素直に頷く。金銭的にも、精神的にも、そして肉体的にも決して逃れることの出来ない、目には見えない檻が法子を幾重にも囲う。
「そんな心配しないで、大丈夫よ。私が、お前を、一日でも早く立派な奴隷にしてあげるから…。だって、私一目で分かったわ。お前には、その才能があるって。お前って、とても淫乱な身体してるし、それに、物凄い変態な性癖も持ってる。テレビに出てた時からぷんぷん臭ってたわ。この世界で生きてくのに、それって一番大事なことよ。後は、それを自分で自覚すればいいのよ。簡単なことだわ。」
法子は陽子の言葉に吸い込まれていく、自分を感じた。
「じゃぁ、いいか、法子。陽子に、お前の全てを任せるから、お前は、陽子の命令には、服従するんだぞ。もし、逆らったら、亜希以上の厳しい゛教育゛をするからな。それから陽子との契約書は後でつくっとくから、帰ったらサインするんだぞ。」
 梅田は、法子に脅しを掛けると、陽子に後を任せ安田を伴い店を出た。陽子の元に残された法子は、今後陽子にどんな扱いを受けるのか、不安で胸が押し潰されそうになる。

 法子は陽子の靴を漠然と見つめながら歩いた。項垂れているせいで、自分がアイドルの倉木法子だとは気付かれてはいないようだ。しかし、法子の身体から自然に湧き出ている美のオーラは覆いきれず、俯いていてもすれ違う通行人の視線を浴びた。
 ふいに陽子が振り返った。
「法子。今から、会員の方々に挨拶回りに行くんだけど…、お前、本当に゛奴隷゛としての自覚は出来てるの。」
 法子は゛会員゛という言葉に不安を感じながらも、辺りを見回しながら小さく頷いた。
「じゃぁ、いいかい。私の命令には、躊躇わずに従いなさい。恥ずかしいとか、辛いとか、そんな人様が感じるようなこと、奴隷のお前が考える資格は無いんだからね。…兎に角、逆らったり、躊躇ったりしたら、後で厳しい゛教育゛するからね。」
 法子は泣き出しそうな表情のまま、小さく頷く。
「ちゃんと、声に出して返事しなさい。」
「は…い。」
 陽子の威圧するような厳しい口調に、法子は怯えながらも素直に返事をした。陽子が満足下な表情を浮かべると、踵を返し傍らの高級ブティックに入っていった。法子は、慌てて陽子の後に続く。

「こんにちは…喜美子さん。社長、います?」
 陽子が店員に声を掛けた。喜美子と呼ばれた店員は陽子を見ると嬉嬉とした表情をし、内線で陽子達の来社を告げ社長室に案内した。法子は喜美子の好奇に満ちた視線を感じる。
 案内された社長室には、繊細な面持ちの、如何にも紳士面した男がデスクに座っていた。
「古宇田社長。…ご無沙汰してます。」
「おぉ、陽子さん。お待ちしてました。」
 陽子は挨拶もそこそこに、つかつかとソファーに座る。法子は訳も分からず、その場に立ち竦む。古宇田と呼ばれた男の視線が刺さる。
「ふふ、話しには聞いてましたが…、本物の倉木法子、ですね。」
 法子を見つめながら、古宇田の顔がみるみる破顔し先程までの紳士面が砕けていく。
「えぇ、まぁ、奴隷としては、まだまだなんですけど…。松元恵があんなことになってしまい、会員の皆様にはご迷惑をお掛けしております。でも、その分、この奴隷で、たっぷりと償わせて頂きますので、どうぞ今後とも宜しくお願いします。」
(この人は?、会員て、何?、松元恵って、この間引退した、あの松元恵?、…私、いったい、何をされるの?)
 法子自身、自分を取り巻く環境が理解出来ず、不安がつのる。そして、゛松元恵゛の存在が法子の胸に深く残った。
「ほらっ、法子。そんなとこ突っ立ってないで、こっち来なさい。」
 法子は、陽子の声にぴくりと反応すると、怖ず怖ずと二人に近づく。
「それでねぇ、社長。これから他の会員の方にも挨拶、行くんですけど、この格好じゃぁねぇ。」
 法子の服装は、シックな紺のワンピースであった。スカートの丈は膝までと大人しげではあるが、その大人びた装いは、十五歳とは思えぬほどの色香を放ち、しかしながらどんなに陵辱にまみれようと、決して失われない透き通るような清潔感を漂わせていた。
「法子。古宇田社長に、奴隷のお前に相応しい服を選んで頂くから、その服、脱ぎなさい。」
 法子の表情が凍りつく。胸の鼓動も激しくなり、膝が震える。そして、困惑した表情のまま陽子に縋るような視線で見つめた。真っ昼間の、しかも大きなガラス窓からは隣のオフィスも見渡せるその部屋で全裸になることは、いかに゛教育゛を恐れる法子にも躊躇われた。陽子は、愚図る法子に目を吊り上げた。
「どうしたの?、私は、服を脱いで、素っ裸になれって言ったのよ。」
 厳しい口調で告げる陽子に、法子は眉間に皺を寄せ小さく頭を振る。陽子は、怒ったように大袈裟に溜息を付くと、法子に近寄る。法子は思わず後ずさりをする。
「法子っ、ここに立ちなさい。」
 陽子の恫喝が部屋に響く。法子は、その迫力に押され震える身体を陽子に近づけた。すると、いきなり火の出るような往復ビンタが法子の頬に炸裂した。法子の華奢な身体がよろける。陽子は、そんな法子を冷ややかな目で見ると、自分のハンドバッグから浣腸液を取り出した。法子は、見覚えのあるその物を見たとき、自分を苦しめた激痛の記憶が鮮明に甦る。
「よっ、陽子様…。ごっ、御免なさい。ぬっ、脱ぎます。脱ぎますから…、」
「ふっ、それなら始めっから素直に言うこと聞きなさい。愚図ってたら、入れるわよ。」
 法子は、その美貌を恐怖の色に変え必死で頷く。
「じゃぁ、とっとと脱ぎなさい。…お前の裸は、一人でも多くの人に見て頂くために、あるんだからね。」
 法子は全身を紅潮させ、俯く。
(ほらっ、法子。…脱がなきゃ、痛い想い、しちゃうよ。)
 法子は何度も自分に言い聞かせ、震える指でワンピースのボタンを外していった。心臓は、口から飛び出すのではないかと思われるほど激しく打ち続けている。そして、ワンピースを床に落とすと、陽子に目を向ける。陽子は、冷酷な目つきのまま、浣腸液をちらつかせている。古宇田はすっかり興奮した面持ちであった。法子は、固く眼を瞑り、下着も脱いだ。古宇田の唾を飲み込む音が聞こえる。
「駄目よ、隠しちゃ。それに、ちゃんと目も開けて、古宇田社長を見なさい。」
 陽子が、感情の伴わない低い声で法子に告げる。法子は、その声にピクリと反応するとゆっくりと手を下ろし直立の姿勢をとると、目を怖ず怖ずと開く。古宇田の好色に満ちた視線が法子の裸体を舐めまわすかのように激しく動く。
「まだ若いのに、既に完成されているようだな。」
「まぁ、この奴隷は、それだけが取り柄なもので…。法子、誉めて頂いたのよ。ちゃんとお礼を言って、゛ご挨拶゛しなさい。」
 陽子が立ち上がり、法子に耳打ちする。すると法子は夢遊病者のような頼りない足取りで、古宇田の前に跪くと、額を床に付ける。
「こ…古宇田様。始めまして…、倉木法子、です。お褒め頂き、有り難う…御座います。…この度、゛奴隷アイドル゛として、梅田様の、事務所と、契約させて、頂きました。…実は、私は、…淫乱、露出狂で、マゾという、どう仕様もない、…変態、です。その、厭らしい、性癖で、古宇田様に、御奉仕出来る、ことを大変、嬉しく、思います。ですが、私は、奴隷としては、まだまだ、躾の、行き届いていない、半人前で、御座いますので、どうぞ、古宇田様に、厳しい゛教育゛を、して頂いて、私を、…立派な奴隷として、育てて、下さい。宜しく、お願い、致します。」
 顔を上げた法子の瞳に、被虐の炎が静かに燃え始めた。
「じゃぁ、古宇田社長に、奴隷のお前に相応しい服を選んで頂こうね。…さっ、立ちなさい。」
 先程まで見せた躊躇いがまるで別人の様に、法子は従順に陽子に従う。二人に付き従い社長室を出ると、二人はそのまま店へと向かう。法子の羞恥に震える身体は満足に脚を運べず、不器用に二人に付いていく。
「あらっ、法子ちゃん。素っ裸で、お買い物?」
 喜美子が法子を冷やかす。法子はそんな喜美子に、引きつった笑顔を見せると、古宇田の後に続き、全裸のまま店内にを歩かされた。
(あぁ…、これって、現実なの?、夢、なの?)
 法子は、全裸で他に客はいないとはいえ白昼店の中を歩かされている自分自身が信じられないでいた。しかし、その想いに反し、法子の身体は淫靡な熱を帯び始め、その顔は次第に潤い始める。
「法子…、感じてるの。」
 陽子が耳元で囁く。法子は陽子にうっとりとした表情を見せると、淫靡な自分に困惑しているような表情を浮かべ、小さく頷く。
「いいのよ、思いっきり感じて…。自分の身体に、素直になりなさい。」
 陽子の心地の良い囁きに、法子は救われたような表情を浮かべると、その瞳に潤いを増していった。
「これなんか、どうだい?」
 その声にふと我に返ると、オフホワイトのジャケットを持つ古宇田の姿が眼に映る。全裸の上からそれを羽織らされた法子は、鏡の前に立たされた。
「法子。この格好のまま、街中を歩いて皆様のところに、ご挨拶しに行きましょうね。」
 陽子が囁く。薄手のそのジャケットは法子の乳首をうっすらと浮きだたせており、鳩尾まで開かれたフロントは、法子の乳房の谷間を露出させている。腰の位置の高い法子は、その上着だけで小振りな臀部は隠れてしまうが、歩く度に法子薄い翳りが垣間見える。その露出度の高い装いは法子が見ても、淫猥で本物の露出狂に映る。
(こ…、このまま…、街を…、歩くの?)
 その事を想像した法子の口から、熱のこもった吐息が漏れた。
(い…いや…、私ったら、…厭らしい…顔…。)
 鏡に映る自分の顔は、とても十五歳の少女のものとは思えず、まるで多淫な娼婦だ。ふいに、陽子が背後から大きく開いたジャケットの胸元に、十二分に固くなった法子の乳房へ手を伸ばすと、愛撫し始めた。
「ぁあっ…、ぁん…。」
 陽子の愛撫は女のつぼを心得ており、法子は自然に受け入れてしまう。そして、次第にその手が尖りきって敏感になっていた乳首に伸びる。法子は、その甘く甘美な想いに飲まれ、陽子に身体を委ねる。
「法子、いいのよ。…お前はもう人間じゃぁ、無いんだから、恥じらいなんて、持たなくて…。」
 法子は、陽子の淫靡な囁きにその身がとろけそうな錯覚に陥る。
「いきたい?」
 陽子の問いに、法子は歯に噛みながらも小さく頷く。陽子は、欲望に支配された従順な奴隷の耳元に何事か囁く。すると法子は、伏せていた瞳をゆっくりと古宇田に移し、湿った視線を向けた。古宇田は、そのあまりの美しく淫猥な視線に、思わずたじろいだ。法子は、その痴呆のような表情を浮かべる古宇田から視線を外さず、頼りない歩みで古宇田の前に立つと、膝を折り額を床に付けた。
「こ…、古宇田様。も、申し訳、ありませんが…、あの…、い、厭らしい、私を、いかせて…、下さい。お願いします。」
 古宇田は、始めて会った時に見せた、可憐な少女の恥じらう姿からの変貌に驚くが、すぐに卑猥な微笑みを浮かべると、膝を折り法子の顔を起こさせる。
「ふふ…、仕方ない。いかせてやる。その前に、俺の聖なるものを、飲ませてやろう。」
 法子は、焦点の合わない濡れた瞳を古宇田に絡ませると、小さな微笑みを浮かべた。
「あ…、有り難う、御座います。」
 吐息混じりの礼を言うと、いつ誰が来店するかもしれない店内で、その可憐な唇で古宇田のものを頬張った。そして古宇田の手が、法子の火傷しそうなほどの熱と湿りを帯びた
秘部に伸びると、法子の身体が敏感に反応する。
「こいつ、本物、ね。早紀を思い出すわ。」
 法子と古宇田の卑猥な光景を見物していた喜美子が、したり顔の陽子に囁く。陽子は、含んだ微笑みで返した。
「法子。いくときは、ちゃんと言うのよ。」
 官能の波に揉まれながらも、こくりと頷いた法子の喉奥に、古宇田が白濁をぶちまけると、法子は古宇田に潤んだ瞳を向けた。
「わ…、私も…、い、いきそう…です。」
 古宇田が凄まじい笑みを浮かべると、法子の秘部に伸ばした手を激しく動かす。
「あぁ…、ふぅん…、ぁん…、い…、いく。いっ、いき…ます。あっ…、あぁん…。」
 法子は固く目を閉ざすと、その場に崩れ、身体を痙攣させた。
 
「ほらっ、法子。いつまで浸ってるの、ミルクもご馳走になったし、いかせても頂いたんだから、お礼を言いなさい。」
 陽子が法子を蹴飛ばす。法子は、我に返ると、大きくはだけた胸元を取り繕い、羞恥に身体を縮ませ全身を紅潮させた。
「ふっ、今更、なぁに?、ほらっ、お礼の言葉よ。」
 法子は、浅ましい自分を晒した羞恥にその身体を小刻みに震わしながら、古宇田の足下にひれ伏す。
「あっ、…お、美味しい、聖液を、恵んで頂き、有り難う、御座いました。」
 羞恥に言葉が途切れる法子を、古宇田と喜美子が見下ろす。すると陽子が、法子の顔を起こさせ、諭すような口調で告げる。
「さて、法子。まずは、その服なんだけど、定価、十万円なんだってさ。そぉねぇ、古宇田社長に選んで頂いたんだから、その感謝分を足して、二十万ってとこでどぉ?、それにぃ、お前、美味しいミルクまでご馳走して頂いたし、お前もいかせて貰ったんだから、足して全部で、五十万、古宇田社長に、お支払いしなさい。」
 陵辱を受けた自分が、その相手に謝礼を払わされる。法子はあまりの理不尽な要求に、改めて奴隷としての自分の身分を思い知らされた。屈辱に表情の強ばる法子に、陽子が冷酷な表情を向けた。
「お前、何、その顔は?」
 陽子の低く怒気を含む口調に、法子は恐怖を覚える。
「あ…、あの、…お、お金、…どうすれば…。」
「どうせ、今は持っていないでしょ。これから、そういう経費は、後で一括請求するから。今は、貸しといてあげる。」
「す、…すいません。」 
 法子自身、陽子の威圧感に恐れ思わず謝ったが、その自分のあまりの卑屈さに嫌気がさした。
「さてと、それじゃぁ、行こうか。…でも、みんなにばれちゃう、かな…。」
 陽子は法子を値踏みするような目つきで見ると、法子を奥のメークアップルームに連れ込んだ。そして、法子に入念な化粧を施す。
「…あの、陽子、様。…ひとつ、聞きたいことが、あるんですけど…。」
 法子は陽子が化粧をしてくれている最中、恐る恐る口を開く。法子にはどうしても気になることがあった。それは古宇田との会話に出てきた゛松元恵゛の話だ。彼女の現在の状況を知れば、法子自身の将来が少しでも分かるような気がしたのだ。質問など許されないことは分かっていた。しかし、それでも知りたかった。しかし、陽子は含み笑いをしただけで答えてはくれなかった。

 法子は、オフホワイトのジャケット一枚、羽織わされただけの姿で街中を歩かされていた。そのあまり頼りなく露出度の高い装いに、法子は羞恥に顔を上げることが出来ず、項垂れたまま陽子の後を付いていく。大きく開いた胸元、そして歩を進める度にジャケットの裾の合わせ目から見えてしまう翳り。すれ違う通行人達も、法子に無遠慮な視線を送っていた。
 陽子によりメークアップされた法子は、とても十五歳の少女には見えず、大人の女の色香を放っていた。これまでTVや雑誌などに出たときの法子は、ほとんどメークはしなかったので、すれ違う人達も彼女が゛倉木法子゛であることに気付いてはいないようだ。陽子が、人混みのある交差点の歩道橋を上がっていった。法子は、階段を上がることで自分の臀部が露わになることを恐れたが、必死でジャケットの裾を引っ張りながらも付いていく。
 歩道橋の中央までくると、突然陽子が歩を止め、法子を振り返る。法子の身体が、強ばる。
「法子。さっきのお前の質問、答えてあげようか?」
 法子は突然の陽子の言葉に戸惑いながらも、軽く唇を噛み俯く。
「はい。お願い、します。」
 法子は小さな声ながらもしっかりと答えた。
「でもね、法子。お前は、質問する権利も、知る権利も、人としての全ての権利を剥奪された奴隷なのよ。お前が持っているのは、義務だけ。本当は質問をしただけで、お前は厳しい罰を受けなきゃならないわ。そんなお前の質問に答えるんだから、私はお前に罰を与える。それでも、聞きたいの?」
 陽子が困惑の表情を浮かべる法子の顔を覗いた。法子は強く唇を噛むと、俯く。やがて、決意を込めた顔を陽子に向けた。
「罰を…、受けます。だから…、教えて下さい。」
 どうしても、自分の辿らされる運命を知りたかった。松元恵のことを聞けば、少しでも知ることが出来るのでは…。そんな想いが法子の胸を支配した。
「分かったわ。教えて上げる。彼女はね、十四歳の頃から、私達に奴隷として仕えていたわ。梅田さんの事務所ではないんだけど…。でも、徹底的に仕込んだつもりだったんだけど、十八歳の時に、彼女、逃亡を謀ったの。私達も油断してたわ。すっかり私達には従順な振りしてたから…。それでも、なんとかあいつを捕まえて、二十四時間、ぶっ通しで拷問に掛けたの。みんなの見てる前でね。それから、取り敢えず芸能界を引退させて、今は、特別会員のところをたらい回しにさせてるわ。」
 法子は陽子の冷酷な瞳を見つめている。人の往来などは、まるで眼に入っていないようである。
「会員から会員のところへの移動は、特別なケースで宅急便で送られるの。浣腸されて、アヌス栓を付けられてね。どんな些細な事でも、すぐに移動させられるから、あいつ、とても従順になったって言ってたわ。どんな命令でも、どんな事でも喜んでするらしいよ。この間なんて、繁華街を全裸で歩かせたって言ってたわ。犬とも、馬とも絡ませたらしいよ。」
 陽子は法子に目を向けた。法子は、その大きな瞳を更に大きくさせて、震えていた。
「あと暫くしたら、変態AV女優として、デビューさせるつもりらしいわ。…ふふ、法子も、AV女優に、なりたい?」
 法子は、陽子の意地の悪い質問に否定出来ず、困惑の表情を浮かべ項垂れただけであった。
「ふふ…。お前が、素直に私達の命令に従ってれば、大丈夫よ。」
 陽子が、法子の頭を撫でた。法子は複雑な笑みを浮かべる。
「さっ、それじゃぁ、約束の罰を受けなさい。」
「は…い。」
 法子は返事をしたものの、不安な表情を浮かべた。
(今…?)
 陽子は冷たい笑みを浮かべると、法子を後ろ手にし、歩道橋の手摺りの笠木の部分に手錠を絡ませ、法子の両手を拘束した。1mを越える高さに拘束されたことにより、肩の骨が軋み、自然に前屈みになる。そして、法子の胸元は大きくはだけ、あやうく小さな乳首まで露出してしまいそうである。その時法子は、往来の多さに改めて気付く。露出度の高い装いと、後ろ手に拘束される羞恥に、法子は全身を紅潮させ俯いた。すれ違う人々が、すらりと伸びる法子の肢体と、その奇抜な格好に好奇の視線を向ける。
「これも、入れちゃおうかなぁ。」
 陽子は無邪気な声で、法子にイチヂク浣腸を見せつけた。法子は縋るような目つきで、陽子に無言の懇願をする。
「入れて、欲しい?」
 どうせ入れるつもりなんでしょ…。法子に諦めの想いと逃れたい想いが交互に去来する。しかし、罰を享受することを自分から懇願すれば、いくらかでも与えられる罰が軽くなることを身体で覚えさせられた法子は、小さな溜息を吐くと、陽子に哀しい表情を向けた。
「あ…の、浣腸…、して、下さい。…先程の、質問した失礼を、償わせて、下さい。」
 法子は自分の体内を襲うであろう痛みの恐怖に途切れ途切れになりながらも、罪を受けることを懇願した。陽子は物凄い笑みを浮かべると、法子の頬を撫でながら諭すような口調で言う。
「ふふ。だいぶ、分かってきたみたいね。そうよ、ちゃんと自分の犯した罪を反省して、自分からそう言えば、少しは罰も軽くしてあげるんだから。…いいわ、じゃぁ、浣腸は許して上げる。…でも、お前さっき、古宇田社長の前で裸になること、躊躇ったでしょ。」
 安堵しかけた法子に、再び不安が走る。
「それって、お前が、奴隷だっていう自覚が足らないからだと思うの。…だから、ここで、大声でね、゛私は、淫乱で、マゾで、露出狂の、変態奴隷です。゛って、怒鳴るのよ。お前は、奴隷なんだから、大勢の人に嗤って頂くのも、大切な使命よ。…分かった。」   法子は余りのことに周囲を改めて見回す。サラリーマンや賑やかな女子高生などの学生達が、途切れることなく往来している。女子高生などは、あらかさまに法子に侮蔑と好奇の視線を向け、わざわざ振り返る者もいた。
(こ…、こんな、人がいるとこで、そんな、恥ずかしいことを?…只でさえ、こんな格好、してるのに…。)
 苦悶の表情で法子を仰ぎ見るが、陽子の表情は冷たく、この罰は許してくれそうもない。法子の心臓は壊れそうなほど激しく脈打ち、息も荒くなる。しかし、先程古宇田の店で一度冷やされた身体が、またも妖しい熱を帯び始めた。
「は…い。…分かり…ました。」
「じゃぁ、私は少し離れるから、ちゃんと私に聞こえるように、大声で叫ぶのよ。声が小さかったり、俯いたりしたら、何時までも叫ばせるからね。…私が、いいって合図するまで、何度でも言うのよ。」
 陽子が唄うように言うと、法子の元を離れた。そして、30mほど離れると法子を振り返り腕を組む。手摺りに拘束され、奇抜な装いのままひとり残された法子に、行き交う人々が好奇の視線を投げかけた。しかしその視線は、法子の被虐心を刺激し、法子の身体のあらゆる箇所を湿らせ、妖艶な色香を放たせた。
(私…、感じてるんだ…。)
 法子はまるで他人事のように、淫らな血を色濃く流す自分の身体を思った。そして、被虐に潤んだ顔を起こすと、大きく息を吸う。
「私はぁ…、淫乱でぇ…、マゾでぇ…、露出狂のぉ…、変態奴隷ですっ。」
 行き交う人々が、みな驚きの表情を浮かべ卑猥な叫び声を上げる法子を振り返る。大衆の刺すような視線の刺激が、法子に狂おしいまでの羞恥心を与える。そして、それらの視線を振り払うかのように、また大きく息を吸うともう一度叫んだ。
「ちょっと、なに、あれぇ…。」
「ふっ、変態、だろ。」
「嫌だぁ、こんなとこで…。それに、なぁに、あのカッコ…。」
「でも、あれ倉木法子に似てない?」
「えっ?…まっさかぁ、あの子がこんなとこで、あんなことしてるわけないじゃん。」
「うん…。でも、すっげぇ美人だなぁ。」
「やだ。あんな変態がいいの?」
 法子の奇抜な装いと行動がかえって倉木法子と気付かれないようだ。しかし、法子を軽蔑する会話が、法子の耳に入る。法子を蔑む視線が、法子の眼に映る。想像以上の羞恥の極限に、法子の身体が激しく震えた。陽子に眼を移しても、以前腕を組んだままなんの合図も無い。そして、何度も声を上げているうちに、法子のそれが次第に涙声に震える。
「法子、もういいわよ。」
 陽子の声に、ピクリと反応し陽子を見つめる。ふいに法子の瞳から涙が滲んできた。身体の震えは、歯の奥にまで及んでくる。
「いいわ、その表情…。お前のこと見てると、ほんと、とことん虐めたくなるわ。」
 陽子の瞳も妖しく光る。陽子が、ふいに法子の秘部に手を伸ばした。
「あぁ…ん。」
 そこはかつて無いほど、熱く濡れていた。法子自身、自分の身体と精神が一体どうなってしまったのか、分からない。
「ふふ…、本物の、変態ね。」
 法子の表情は、苦悶に満ちているのか、それとも被虐の悦びに歪んでいるのか分かりかねた。陽子は法子の秘部をまさぐりながら、耳元で熱く囁く。
「法子。いい、私達が、虐めてあげるから、変態のお前が、感じることが出来るのよ。だから、お前は、恥ずかしい命令をして頂いたときには、感謝しなくちゃね。」
 二人は、そこが公衆の面前であるにも関わらず、それらの好奇な視線をも刺激に変え淫らな行為に耽る。嗜虐の炎と、被虐の炎は、お互いに熱を扇ぎ合い、その温度を更に上げていった。
「は…い。ぁあ…、恥ずかしい、ぅん…、御命令を、頂いて…、ぁっ、有り難う、御座いました。」
 熱のこもった言葉で礼を言った法子は、これまで感じたこともない程の絶頂感を味わいながら、官能の頂きに上り詰めた。
(あぁ…、いっちゃった…。こんな…、トコで…。)
 絶頂を極めるまで晒していた淫靡な影は身を潜め、可憐で無垢な童女に豹変した法子は、それまで見せた狂態を恥じるようにその華奢な身体を縮めると、羞恥に全身を震わせた。
(ふふ、さっきまで、あんなに厭らしかったのに…。一度いくと、まるで何にも知らない乙女になっちゃうんだから…。抱きしめたくなっちゃうじゃない。でも、この落差が、いいわねぇ。)
 陽子は、法子に妙な感心を抱くと、羞恥に俯く法子の頬を撫でた。

 二人は次の会員への移動にタクシーに乗っていた。法子は、ずっと俯いたまま、自問自答していた。
(私、…本当に、…変態に、…なっちゃったの?…違うわ。そんなんじゃ…、ない。…じゃぁ、どうして、…あんなに、…あんなとこで、…いっちゃうの?)
 いくら反芻しても答えの出ない自分に、法子は小さな溜息を吐く。
「法子、なに、考えてるの?」
 陽子が法子の顔を覗き込んだ。法子は苦悩の表情で陽子を上目遣いに見る。
「ふふ、なぁにぃ、そんな顔してぇ。」
 法子は軽く歯に噛むと、再び俯く。
「後悔、してるの?」
 法子は俯いたまま頭を振る。
「いい、法子。お前は、もっと変態になっていいのよ。もっと淫乱になっていいの。」
 陽子が熱い息を吹きかけながら法子の耳元に囁く。
「だって、お前はもう人間じゃぁないのよ。…奴隷っていうのは、この世の中に存在する全ての物より、その身分は低くて、卑しいの。犬とかぁ、虫けらとか、そんな物より、お前の身分は低いのよ。…お前、早紀、知ってるわよね。」         
 法子は、陽子を振り返るとコクリと頷く。
「あいつはね、命令されればどんな事でもするのよ。人様の便器になったり、灰皿の変わり、それにゴミ箱の変わりもこなすのよ。…でもね、それってお前達奴隷にとって、とても幸せなことなのよ。」
 法子の顔から次第に血の気が引いてくる。
「だって、この世で一番身分の低いお前達が、一時でも、便器や灰皿っていう、お前達にとってとても尊い物の変わりを務めることが出来るんだもの。…兎に角、お前には、もう人権だとか、人間の尊厳だとか、そんなものもう無いんだから、自分の相手をして頂ける人間様に、常に感謝の気持ちと、自分の身分をよく自覚して、どんな命令にも素直に従うのよ。」
 法子は小さく返事をすると、車窓から表を見つめた。陽子に諄々と諭されると、街の風景が今までとは違う物に見えてくることに、法子自身躊躇いを覚えた。

 それから二人は、計三組の会員のところに挨拶に行った。みな社会的には地位の高い者達のようで、一様に法子の美貌と均整のとれたスタイルに大満足のようであった。いずれのところでも、法子はその瑞々しい肢体を晒し、挨拶代わりに白濁を飲み込まされた。そして、結局梅田の事務所に帰ったのは深夜であった。二人は梅田の部屋に向かった。
「只今帰りましたよ。」
「おぉ、ご苦労。…法子、どうだった?」
 法子はどう答えて良いか分からず、俯きその華奢な身体を更に縮ませた。
「ふふ、ほら、ちゃんとご報告しなさい。」
 陽子につつかれ、法子は羞恥に頬を紅くさせながら梅田と別れてからの報告をした。
「あの、…先ず、古宇田様に、奴隷の私に、相応しい装いを、選んで、頂きました。…それから、聖液を、ご馳走して、頂きまして、…私も、いかせて、頂きました。…」
 法子は、羞恥に声を震わしながらも今日一日の出来事を、言葉を選びながら報告した。梅田も陽子も、そんな法子をにやにやしながら見つめている。法子が陵辱の全てを報告すると、梅田が満足そうな表情で頷く。
「法子。良かったなぁ、皆様に、可愛がって頂いて…。」
 法子が小さく返事をする。
「さて、それじゃぁ、と…。」
 梅田が書類を取り出す。
「喫茶店で言ってた、陽子とお前との契約書だ。サインして、判子、押すんだ。」
 法子は気付かれぬよう小さな溜息を吐くと、言われるままにサインをした。
「それからな、お前はまだ半人前の奴隷なんだから、今日、お前の相手をしてくれたみんなに、教育費と謝礼を払わねばな。飲ませて頂いたミルク代と併せて、一人五十万、それから、その服代と、移動費、全部で五百万でどうだ?」
 予め古宇田の店で陽子に陵辱代を払う事を告げられていたので、法子に驚きの顔は無かったが、このままこの事務所でみなに陵辱を受ければ受けるほど、自分の借金は増えることになる。屈辱にまみれ、羞恥にまみれ、みなに嗤われ、その代償が借金だとは…。法子は、哀しく屈辱の想いに胸を熱くする。しかし、そんな想いを必死で胸の奥にしまい、法子は頭を垂れる。
「は…い。申し訳、有りませんが、私が、立派な奴隷に、なって、沢山お金を稼げるまで、貸しておいて、下さい。」
 自分でも驚くほど身に染みた卑屈な奴隷根性で平伏する法子に、梅田が陽子と眼を合わせ、不敵な笑みを浮かべる。
「法子。いい、一日でも早く立派な奴隷になって、お金返せるように、頑張ろうね。」
 陽子に言われ、本当に頑張ろう、そんな想いになっている自分に、法子は呆れ自嘲気味になる。
「あっ、それからなぁ、法子。亜希なんだが、実はさっき倒れて、救急車で運ばれたんだ。お前のマネージャーを陽子に任せると言ったら、あいつヒステリー起こしやがってな。今から、俺もちょっと様子を見に行くけど、お前はもう、休め。」
 法子は愕然とした。聡を失い、達夫と法子の淫靡な写真を見つけ、法子に復讐することで精神のバランスを保っていた亜希が、法子を四六時中虐められるマネージャーを断られ、その事で一気にそのバランスを崩したのだ。法子にとっては嬉しい知らせである。しかし、自分に関わったことで松田家の聡が死に、そして亜希が倒れた。法子にとっては嫌な存在であったが、自分のせいで…、そう考えると、法子はなんともやり切れない暗澹たる想いが込み上げてきて、法子の小さな胸を苛ませた。

 


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