『世界は時折、嘘をつく』
     偽りの終焉     
 
 17.偽りの終焉

 ひとみは夢を見ていた。―――漆黒の闇に
塗りつぶされた音のない世界。
 ふと気がつけば、一人であてのない暗闇を
さまよっていた。あれ、私はここに来る前に
何をしていたのだろう? 記憶の糸を手繰り
寄せ懸命に思い出そうとするのだが、曖昧で
ぼんやりした朝霞のように、それは手で触れ
る前にフッと消えてしまう。
 ただ周りの状況から、なんとなくこれは夢
であるらしいことは分かった。 

 夢と云うことは、いつまでも寝ている場合
じゃないよ、早く起きなくちゃ。そう思った
瞬間――ひとみの口の中に嫌な苦味がじわり
と広がった。
 あ〜もう、薬って苦手なんだよな……えっ
いつ薬なんか飲んだんだろう? 
 次第に、曖昧で断片的だった過去の記憶が
まるでジクソーパズルを組み立てるように、
その本来在るべき姿を取り戻し始めた。

 ――蒸し暑い部屋で知らない男の人たちに
囲まれて呆然としていたら、激しい音がして
ドアが大きく開いた。汗まみれの驚いた顔で
現れたその人を見たら、声を上げて泣きたい
くらい懐かしい気持ちがして…なるみ…鳴海
そう! 幸太郎兄ちゃんが私を助けに来てく
れたんだ。
 ――それからどうしたんだろう?
 不意に背後からガラスの灰皿で殴られ、血
を流しながら床に倒れる幸太郎兄ちゃん。
 周りの男たちは何かに取り憑かれたように
その頭を繰り返し踏みつけた。
 私は狂ったような悲鳴をあげて、男たちに
掴みかかっていく。でもすぐに、口を片手で
鷲掴みにされて、何か変な薬のカプセルを口
の中に放りこまれた。そしたら体の力がフッ
と抜けて急に物凄い眠気に襲われて、男たち
の笑い声を遠い子守歌のように感じながら、
甘い眠りの世界に引きずりこまれていった。
 ――やっぱり、こんなよく分からない世界
は早く脱出しなくちゃ…。まさか私は眠って
いる間に、何か好くない事をされているんじ
ゃないだろうか? いつしかひとみの額には
玉のような汗が滲んでいた。

 とその時、遥かな暗闇の彼方にぼんやりと
黒い人影のようなものが現れた。と言っても
顔までは判別がつかない。
 次第に、映りのよくないTV画面のような
その姿が鮮明になってきた。
 ――それは、全裸で立ち尽くす大きな眼を
した髪の長い少女であった。その傍らには、
その肩より長い髪を人差指に絡ませ、貝殻の
ような耳に舌を這わす男の姿が見える。
 ひとみは、その2人ともどこかで見覚えが
ある気がした。
 その少女の、揺るぎない意志の強さを感じ
させる太い眉毛。すーっと鼻筋は通り、その
下にはほんのり紅く染まった唇。そして静脈
が透けて見えるほどの白い胸元には、小さな
ご飯茶碗を逆さにしたような固く幼い乳房。

 それはまさしく、彼女自身―藤原ひとみの
姿であった。そして、その体にまとわりつく
男は――紛れもなく鈴木に他ならなかった。

 少女は恍惚とした笑みを浮かべ、男の肩に
手をまわし濃厚な口づけを交わしている。
 ひとみにとって、それは信じられない光景
であった。
 まるで恋人同士のように、互いに求め合い
舌を絡ませる2人は、呆気にとられるひとみ
の方に視線をふっと向けると、挑発するかの
ようにニヤリと笑った。

 ――フッと怪しい笑みを残して、2人の姿
は闇の彼方に消えて無くなった。

 嵐のような突然の出来事に、全ての言葉を
失い呆然とするひとみの背後で、今度は誰か
の呻くような声が聞こえてくる。

「…ハアッ……ンンン―ッ……」

 そこには、上半身は白い薄手のブラウスを
きちんと着ているが、下半身には何一つ身に
付けず座り込む――ひとみの姿があった。
 少女は体をピクッピクッと震わしながら、
左手でまだ芯の固さが残る幼い乳房を愛撫し
右手は人差指と中指をVの字に開いて媚肉の
外側をなすりあげている。
 夢と現実の狭間で揺れ動くひとみを尻目に
荒い吐息と共にその淫らな指は、赤い花弁の
ように開いた肉壁の中へ潜り込んでいく。

「……ああ―ン、あンッああン…いいッ…」

 ひとみには目を覆いたくなるほどの光景で
あった。これは私じゃない…こんなことを…
…こんな恥ずかしいことを私はしていない。
 何度も心の中で叫びながら、視線だけは目
の前の光景から離すことが出来なかった。

 少女がスリットの上部にある小さな肉芽を
強く擦るように愛撫していくうちに、蜜壷の
中からこんこんと愛液が涌き出し始め、太股
を伝って床に水溜まりが出来た。

「もう…もう、やめてッ!」
 とうに我慢の限界を越えたひとみが、両手
で頭を抱えて涙ながらに大声で叫んだ。

 ―――淫らな少女の姿は、暗い闇の彼方に
フッと消えていった。
 
 急に大声を出して、ひとみは僅かに息切れ
と眩暈を感じた。胸を押さえてうずくまろう
としたそのとき―――
 激しい力で背後から首をグッと締められ、
無理やり床に押し倒された。鈍い音を立てて
頭が床に叩きつけられたが、ひとみには痛み
を感じる余裕さえなかった。

「ひとみ〜お前にはまだ肝心な事をヤラして
もらってなかったよな」
 ヘラヘラしながらいきなり馬乗りになって
きた男の顔を、ひとみはため息と共に見つめ
ていた。黒い眼鏡をかけ痩せた背の高い男。
 忘れもしない3人組のヤクザの一人、田中
であった。その後ろには津田の姿も見える。

 田中はひとみの頬を軽く平手打ちすると、
鮮やかなチエック柄のスカートをまくり上げ
力ずくで脚から白いショーツを抜き取った。
 ひとみの恥裂が露出した。まだ産毛さえも
生えない乳白色の皮膚に、真っ直ぐな縦筋が
見える。筋の両脇は柔らかそうな膨らみ。
 全てが、触れたら壊れそうな危うい美しさ
を内包した少女の秘めたる場所であった。

 しかし男たちにそんなことは関係ない。
 田中は待ちかねたようにズボンのジッパー
を下ろし、ブリーフの穴から己の浅黒い肉棒
を出した。片手にペッと唾を吐くと、それを
ひとみの恥裂に執拗に擦りつけ、ぷっくりと
膨らんだ亀頭をスリットにあてがった。
 ひとみはいびつな男性器が自分の中に挿入
される様を、抗うことすら出来ぬまま見つめ
ていた。

 ズボッ――
「うゥッ……いゃああああ―ッ」
 ひとみは悲愴に満ちた叫び声を上げた。

 ずぶ、ずぶ、ニュグッ……。
 田中の肉棒で幼い割れ目が串刺しにされて
いく。
「くゥッ…やめて…いやや、あ、あうゥ…」
 少女の胎内で、田中が激しいピストン運動
を始めた。

 ズコッ、ズコッ、ズブッ!
 ひとみは恥裂から脳天まで、雷に打たれた
ような激痛を感じた。
 とても甘い快感など感じる余裕などない。
 激しい絶望感に苛まれ、苦痛に歪んだ顔で
ふと視線を横に向けると――そこには自分と
同じように津田の肉棒に貫かれる彩香の姿が
あった。

「う、うッ、いやァァッ! ああうッ――」
 張り裂けんばかりの悲鳴を上げて、彩香は
身をよじっている。頭を大きく振りたくり、
小さな眼に大粒の涙を浮かべるその姿を見て
救いの手すらも差し伸べられない自分自身を
ひとみは心の底から恨めしく思った。

「ああ、っ、いたいッ、あッ!」
 津田の肉棒は、彩香の僅かに濡れた小陰唇
を巻き込んでその胎内に埋まっていく。

「ダメ…アアアッ、やめてッ……助けて」
 そんな彩香の悲痛な呻きを我が事のように
感じながらも、ひとみは激しい痛みとわずか
ばかりの疼きを感じていた。

「いやいやァッ! ウンッ…アアア――ッ」
 哀しいほど華奢な体が小刻みに痙攣する。
 彩香は背中を大きくクッとのけぞらせ、頬
ろ伝う涙と共にアクメに達した。
 
「も、もう、やめてよ……あ、あう、くっ…
…ンうううゥ―ッ……こんなの絶対おかしい
嘘に決まってる……いやァァァ―――ッッ」
 耳を両手で強く塞ぎ、ひとみがあらん限り
の声で叫んだ瞬間―――果てしない闇に包ま
れていた漆黒の世界が、痛いくらいに目映い
ばかりの光の洪水に飲み込まれた。もう目を
開けていることさえ出来ない。

「…とみ…ひ…ひとみ…」
 どこか遠くで自分の名前を呼ぶ声が聞こえ
ひとみは振り向こうとするのだが、あまりに
眩しい光の放射の中では目を閉じたままで声
の方向に歩いていくしかなかった。

「誰?」
 ゆっくりと手探りで歩き始めて少しすると
大きな壁のような物にぶち当たった。

 何だか優しくて懐かしい匂い――。
 忘れかけていた心地よい安心感にひとみは
包まれた。 

「ひとみ…もう大丈夫だ…心配しなくて…」
 耳元で囁くような優しく温かい声が聞こえ
――ひとみはパッと夢の世界から目覚めた。

 見覚えのあるシミだらけで色褪せた天井。
 汚れた窓ガラスから降り注ぐ春の陽射し。
「おはよう」
 そして、頭を包帯で幾重にもグルグル巻きに
して優しく微笑む幸太郎の姿がそこにあった。

          @

 事件は意外なほどにあっけなく幕を閉じた。

 幸太郎が桑原に背後からガラスの灰皿で殴打
され、それを追うようにひとみも睡眠薬を口に
ねじ込まれ意識を失った。たぶん、意識が混濁
したひとみに対して、更なる凌辱が計画されて
いたのかもしれない。しかしそれも、予め連絡
を受けていた警察の突入により、全てが未遂に
終わった。腕力に全く自信のない幸太郎には、
一人でヤクザを叩きのめし人質を救出する考え
などなかった。あくまでも自分はオトリに徹し
相手が油断した隙を見計らって、警察が突入を
する運びとなっていた。
 一人前に探偵の名乗りを上げたにしては情け
ない話ではあるが、捕らわれの子供たちの安全
さえ確保できれば幸太郎は満足であった。

 ひとみに事件の詳しい説明をする彼の横を、
手錠をされた田中がうつむいたまま警察に連行
されていく。桑原、津田、鈴木の3人も今ごろ
は警察署に向かうパトカーの中である。
 
 一見したところは、ただの営利目的の誘拐に
思われたこの事件。
 しかし現実は違った。その背後には大がかり
な少女専門の売春組織が存在していた。
 なし崩しに採択された「児童買春、ポルノに
係わる行為等の処罰及び児童の保護等に関する
法律」―俗に云う「チャイルドポルノ規制法」
が出来たことで、全国に点在していた少女性愛
者の一部はアンダーグラウンドの方向に活路を
見いだした。インターネット等を使って画像を
共有するくらいで満足できる者は、まあそれで
よかった。しかし中には、性へのはけ口を失い
「本当の少女と何とかSEXしたい」と考える
輩も存在した。そして、それに目をつけたのが
桑原たちの組織であった。
 誘拐した中学生前後の少女たちの体を弄び、
ビデオ撮影したテープをネタに売春を強要する
その悪質な手口は警察も十分に把握していた。
 また撮影したビデオは、客が少女を品定めを
する際に参考資料として使用されていたことも
証言で明らかになった。
 しかし犯人たちが最も狡猾だったのは、彼ら
の行為が営利目的の児童誘拐、及び未成年者に
対する売春の強要、暴行未遂にしか当たらない
と云うことだった。彼らは誘拐した少女たちの
商品価値を高めるため、肝心のSEXを自らの
手では行わなかったのである。
 つまり少女売春の顧客たちにとって、処女を
相手に初めてのSEXが出来ると云う特権は、
法外な金額を提示されても独占したい魅力を秘
めていた。
 そう考えると、桑原たちがビジネスに徹した
お蔭で、ひとみや彩香は処女を失うこともなく
無事に救出されたとも言え、それだけが僅かな
救いであった。

          @

「早く助けに来てあげられなくて……ごめん」
 幸太郎には、いくら謝っても謝り足りない程
後悔の念があった。簡単な事情聴取を終えて、
一路帰宅の途につくパトカーの中である。笑み
を浮かべるひとみの横には、眠っている彩香と
康太の姿があった。

「まお〜そんなに何度も謝らなくていいよ」
 ひとみは片手を軽く顔の前で振ると、大丈夫
と言うようにニッと笑った。
 その笑顔が幸太郎にとって、何よりの救いに
であった。きっと口には出来ないくらいに辛い
思いをしたであろうに…。何はともあれ今回の
事件は一先ず解決に漕ぎ着けた。警察の話によ
れば、屋上にいた鈴木と云う男だけが妙に警察
の尋問に協力的で、こちらが聞く前に組織内部
の詳細な情報を白状しているらしい。それは、
以前に鈴木が犯したある失敗が原因であったが
その解明は警察の手に委ねることにした。
 幸太郎にはもうどうでもいいことであった。

 パトカーの車窓を流れていく街の景色を眺め
ながら、幸太郎は小さくため息をつく。
 本当に事件は終わったのだろうか? たしか
に主犯格の桑原を含めた4人の男たちは無事に
逮捕された。しかし、彼らが裁判で量刑が確定
して刑務所に入ったとしても、10年以内には
確実に出所してくるのである。それくらいの罪
にしか問えないのだ。
 あと10年経ってもひとみは22才、彩香に
至っては21才である。復讐を誓って出所した
犯人たちが彼女たちの居場所を突き止め、再び
乱暴をしないと云う保証はあるのだろうか?
 それは幸太郎にも分からない。その時までに
もう少し立派な探偵になっていて、彼女たちを
守ってやれる自信は…あまりない。
 まぁ―あまり不幸な未来ばかりを心配しても
仕方がないし、今は無事に事件が解決したこと
を素直に喜ぼう。
 ―――春の暖かい陽射しと車の心地よい揺れ
で、幸太郎は眠くなってきた。ふと横を見ると
ひとみも可愛い寝息を立てている。あどけない
その寝顔を見ているうちに、幸太郎のまぶたも
段々と重くなってきた。
 どんな悲しいことも時間が解決してくれるさ
そう、この子たちは…まだ若いの…だから…。
 大きく欠伸をして、幸太郎は穏やかな眠りの
世界に落ちていった。

                    終

 


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