『サイレント・ラプソディ』
        第五話        

第五話

 葉子にとって幸か不幸か、そこから先の記憶は途切れ途
切れになっていて、はっきりとは覚えていない。呆然とし
ていてビデオを直視していなかった事もあるが、記憶が甦
るのを脳が拒否しているのだろう。

 もしかしたら、ずっと目が覚めなかった方が琴子にとっ
ては幸せだったのかも知れない。
 琴子が目覚めるのを待っていたかのように、男たちは本
格的な陵辱へ取りかかっていった。
 地獄は、ビデオテ−プの収録時間の限りまで続いた。
 男たちの欲求はエスカレ−トして、琴子は様々な屈辱を
余儀なくされた。体のあらゆる部分を弄ばれ、苦痛と汚辱
の底に落とされていく。
 悪魔のような男たちは、琴子の怪我や出血や痛みを無視
して華奢な身体を責めたてた。少女を屈服させるために右
手の中指をへし折り、強引な体位を強制した為に股間接を
外してしまった。
 どんなに琴子が悲鳴をあげ、泣き叫んで許しを哀願して
も、誰も責めを止めようとしなかった。狂った目で酔った
ような笑いを浮かべ、か細い玩具をいじり回し、壊そうと
していた。
 やがて、最後には琴子の快楽を引き出し、精神をも支配
することに成功した。
 しかし、そこまでが限界だった。肉体は度重なる陵辱に
ボロボロにされながらも何とか耐え抜いたが、次第に琴子
の目は焦点を失い、虚ろになっていった。男たちの暴虐に
もまるで反応せず、痛みも快感も何も感じなくなったよう
に、ただされるがままに横たわっているだけだ。
 男たちは壊れた玩具に執着しなかった。欲求は満たされ
ているだろうし、悪徳を楽しむ彼らも、殺人の趣味はない
ようだ。
満足した男たちが身体を離し、座席の上に一人残された
琴子の姿を映すと、画面は次第に暗転していく。
 そして、黒い画面に赤い字で「終」と出て、陵辱のビデ
オは終わっていた。

 いつ、ビデオを止めて、デッキから取り出したテ−ブを
どうしたのか、葉子は覚えていない。気がつくとヘッドの
中で次の日の朝を迎えていたのだ。
 警察に届けようとも思ったが、肝心のビデオがなくては
信じてはもらえないだろう。
 結局は、また一人で解決しなくてはならないのだ。
 おそらくは、一生をかけて。

 そして、数年が経った今・・・。
 暗い想念が膨らみ、葉子を圧迫していた。目が冴えて、
神経が過敏になっていく。
 雨雲が消え、窓の外から月明かりが忍び込む。布団が薄
明かりに浮かび上がる中、葉子は空しい気持ちに包まれて
いた。
 どうして、いつまでも・・・こんなに・・・・
 時計の針の音が、妙に神経に触る。
 眠らないと・・・。
 不思議なもので、そう思えば思うほど、眠りは訪れては
くれない。逆に、あの日のことが頭に甦るばかりだった。
 これではいけないと固く閉じた瞼の裏に、あの日、陵辱
された自分の姿が鮮明に映し出される。弄ばれる琴子の姿
が蘇ってくる。
 どうして人は忘れてはいけない事を忘れ、こんな事を覚
え続けるのか。いつまで、こんな夢に思い悩まされるのだ
ろうか。
 誰か・・・誰か、助けて。
 この悪夢を振り払う為には、何度、こんな夜を過ごさな
ければいけないの?
 そんな事を毎回考えると・・・ああ、今日も・・・。
 内股の間の秘められた部分に意識が集まり、葉子は太股
をグッと締め付けた。秘所にムズムズする感覚が訪れる。
 くぅっ・・・駄目っ・・・。
 パンティの中に指を滑り込ませてしまいそうになり、葉
子は声を押し殺した。パジャマのズボンのゴムのところで
留まったものの、太股の間に手をあてがうと、温かく蒸れ
た秘肉を感じずにいられない。
「くぅっ・・・」
 確かに疼いている。どうして、こんな・・・どうしたら
いいの・・・。
 触っちゃいけない。こんな事、認めてはいけない・・・
そう思えば思うほどに、みんなに寄ってたかって刺激され
た時の忌まわしく、それでいて甘美な感触がクッキリと秘
部に甦る。
 頭が混乱してきた。ジリジリとした感覚は下腹部に広が
りを見せ、葉子の心は切実な葛藤に陥った。
太股の間を手が少しつづ這い上がり、脈打つ秘肉へと近づ
いていく。
 このまま触れずに耐えるのは拷問のようなものである。
耐え切れない疼きが、恥裂の奥から漂っていた。
 ああ・・・少し・・・少しだけ・・・。
 駄目よ、そんなの・・・でも・・・くあっ・・・。
 少しだけ触れば、眠れるかも・・・そう、触るだけなら
まだ・・・。
 パジャマのズボンの中に手を滑り込ませ、さらに股間に
しっかりと張り付くパンティのゴムを越える。
「ぐっ・・・」
 葉子の中指が短く整えられた縮れ毛の上を這い、それが
途切れるところでスルリと滑った。肉の割れ目には、やは
り生暖かい粘液が溢れ出ている。その事実に、葉子は軽い
嫌悪を示した。
 何で、こんなに濡れてしまうのか・・・。
 泣きたい衝動が胸から突き上げられ、鼻の奥に鈍い痛み
が走る。
 しかし、指の動きは止められない。恐る恐るながら着実
に陰裂をなぞり、その内側へと進もうとしている。
「ひぐっ・・・!」
 勃起していた肉芽に指の腹が軽く触れただけで、全身に
電撃のような痺れが走った。
「は、はぅっ・・・」
 秘口から滲み出続ける、粘りのある陰液を指にまとい、
さらなる刺激を求めているクリトリスに近付けていく。再
び、突き上げるような痺れが起こり、蜜壷の粘膜に響きわ
たった。
「んふっ・・・」

 琴子のビデオを見た夜から、再び男の視線が恐くなって
いた。視線だけではない。男に触れられる事にも嫌悪感を
感じるようになっていた。
 ファンとの握手・・・ああっ、離してっ!
 水着姿の撮影・・・嫌っ、見ないでっ!
 芸能人であるがゆえに苦悩は高まり、自分で望んだはず
の、充実して楽しいはずの日々も、苦痛と憂鬱の日々へと
変わっていた。
 最近になって、少しずつ克服の兆しを見せていたという
のに、また・・・

 もう、いくつの眠れない夜をこうして過ごしてしまった
のか・・・。何度、恥穴に指を埋めてしまったのか。
 魔性の時間を終えるたびに、自己嫌悪に陥り、もう二度
とこんな事はしない、と誓ってきた。それなのに・・・。
 恥ずべき行為とは思いながらも、自分の性器にこうして
触れていると心が落ち着いた。忙しい毎日も、嫌なことも
忘れられた。このまま永遠にこんな気分の中で浸れたら、
どれだけ幸せか。
 まさに、麻薬のような快楽だった。
 肉芽を人指し指と親指でそっと摘み、少しずつ圧迫して
いく。高まっていく快感が、螺旋階段を駆け登っていくよ
うに体の中を貫き、頭の先まで伝わっていった。
 きっと、今の自分の顔は、人には見せられないほどクシ
ャクシャに歪んでいるのかもしれない・・・。
 ああ、どうして、こんな事を・・・こんなに・・・こん
なのって・・・。
 やはり、今朝の事が影響しているのか。気持ちが不安定
になっているから、心に隙が・・・。
 数年前のあの日、あの女子高生たちに受けた指での陵辱
を、葉子は無意識に真似ていた。あの時に感じてしまった
感覚を呼び覚まそうとしているかのように。
 秘唇や肉芽を激しく擦られた記憶が、脳裏に何度も浮か
んでは消え、また浮かぶ。消し去ったはずのあの屈辱はし
っかりと脳に刻まれていた。
 肉芽を押し潰すように、陰裂の中をかき回していく。湿
った肉襞がよじれるのが、何とも甘美な感触だった。
「ぐっ・・・ふふぅ・・・」
 どうしよう・・・やめられない・・・。
 恥部をいじる指は、既に葉子の意志を離れたように激し
く蠢いた。一度オナニーに入ってしまった以上、引き返す
のは容易ではない。何度も経験して分かっているはずだっ
た。行為が終わって我に返った時の嫌悪感も知っているは
ずだった。しかし、毎回、行為の最中は夢中になってしま
うのだ。

 あの日の地獄の初体験から数年、異性に秘所を見せた事
もなければ触らせた事もない。既に処女膜も復元している
かもしれない。セカンド・ヴァ−ジンというやつだ。
 皮肉なことに身体の成長に合わせて、性的欲求も高まり
続けている。それを抑え込むのは無理な話である。
 男に触れさせない以上、頼れるのは・・・自分の指先。

 もう押し殺すことのできない欲求に衝き上げられ、葉子
の左手がパジャマのズボンにかかった。純白のパンティご
と一緒に、焦った手つきで引き下ろす。
 裸の下半身が、窓から差し込む月明かりに浮かんだ。太
股や尻は熱で蒸れ、一面に汗が滲んでいる。
 右手全体を股間にあてがい、五本の指を総動員する。
「ひ、ひぁ・・・くふぅ・・・」
 行為の深まりにつれて、ますます息は荒くなっていく。
 秘口からは新たな蜜液がどんどん涌き出る。指の動きに
合わせて、媚肉全体へ淫液が塗り込まれていった。その心
地よいヌメりに、自分の淫らさを恥じながら肉唇を震わせ
るしかない。
 イ、イヤァッ・・・今日はいつもよりも・・・。
 ・・・どうして・・・こんなに恥ずかしい事に・・・。
「ひ、ひぃっ・・・あうふっ・・・」
 肉芽の頂点を中指の爪で弾くようにいたぶる。汚らわし
い行為なのに、あの日の感覚を探るように、葉子はさらに
大きく太股を広げてしまった。腰を浮かし、股間を天に突
き出すように背中を反る。
 M字に折り曲げられた両脚の付け根が、さらに淫らに口
を開かれる。すっかり充血して膨らんだクリトリスが、さ
らなる刺激を求めて震える。葉子はその肉芽を指の股に挟
み、小刻みな振動を与えた。
「いひっ・・・か、感じるぅ・・・」
 中指と薬指を陰唇に沿って這わせ、時折広げて中の粘膜
を擦りあげる。溢れる陰液がピチュッと音をたて、恥ずか
しさを煽った。
 いまや、葉子は半泣きだった。破廉恥な行為に没頭して
指は性器をなぶるのに夢中だった。快感に麻痺した淫肉は
極限を求めて、指の動きを駆り立てる。その一方で自分を
許せないもう一人の自分がいて、涙が目尻からこぼれ、頬
を伝う。
 あの時の、あの瞬間が来るまで・・・。
 身体も心も、すべてを忘れ、空を駆け巡るような、あの
快感を欲していた。
 もう少し・・・あと少しで・・・。
 肉芽を摘み、恥肉を擦りながら、葉子は小刻みに腰を振
りたてた。剥き出しの下半身の下で、ベッドのシーツが大
きく乱される。
 五本全ての指が、ネットリとした陰液にまみれていた。
指が蜜壷をかき回す淫らな音と、切迫する喘ぎ声が部屋の
中に響く。ほの暗い室内に、女体が発する生々しい熱がこ
もっていった。
「くうぅぅぅっ・・・あぁぁん・・・」
 むせび泣くような切ない喘ぎだった。こんな自分を認め
たくないと思う一方で、固くしこった陰核や溢れる陰液は
認めざるをえない事実だった。
 下半身全体が痺れに覆われつつあった。あと少しで、ゴ
ールに辿り着けそうだった。
 今度は両脚を揃え、股を軽く閉じる。爪先まで突っ張る
ように力をこめ、狭まった陰肉を縦に擦りあげていった。
「ひ、ひぃあ・・・ふふぅ・・・」
 熱に浮かされたように、葉子はオナニーに没頭した。尻
の溝に汗が溜まり、湯気が出そうなほどに火照っている。
身体中が細かく震え、陰部の痙攣が、溶けるような感覚を
目指して活発化した。
「ああああっ、もうっ・・・!」
 ついに、全身の血液が逆流するような感覚が込み上げて
きた。恥肉の奥から熱いものがほとばしり、両脚が激しく
突っ張る。背中は自然と反り返り、身体は海老反りにしな
った。
 それは、目もくらむような瞬間だった。身体が全ての物
事から解放される時でもあった。
 葉子は固く目を閉じた。一呼吸おいた後に身体を静かに
横たえると、自分の血流がドクッドクッと速い脈を刻んで
いるのが分かった。収縮する秘肉から発する脈が、手足の
先まで伝わっていく。
 行為が終わると、今度は一気に後悔の念が津波のように
押し寄せてきた。
 ああ・・・また、こんなに・・・。
 葉子は枕元のティッシュを取ると、陰液にまみれた股間
を拭った。一刻も早く、恥ずべき行為の跡を消し去りたか
った。夢中になった自分を忘れたかった。
 汚れたティッシュを始末すると、とめどなく溢れ出てく
る涙を拭おうともせず、パジャマのズボンとパンティを履
き直した。シーツも整え、再びベッドに横たわる。
 乱れる心模様にもかかわらず、絶頂を迎えた直後の葉子
の体は、今度はスムーズに眠りに落ちていった。何も考え
たくなかった。ただ、いい夢を見ることだけを祈った。

 真緒は足音を忍ばせ、自分の小屋に向かった。
 激しい胸の高まりは、おさまりそうもない。自分の目で
見た事が、未だに信じられなかった。
 風邪で寝込んでいる葉子の事が気になり、様子を見にき
たところで、葉子がオナニーをしている場面を目撃してし
まったのだ。
 ドアの前に立った時、中から呻き声のような声がするの
が聞こえた。葉子が熱でうなされていると思った真緒は、
側にいてあげようと思い、鍵のかかっていなかったドアを
開いた。
 しかし、呻き声は苦しみの響きではなく、甘い響きを含
むものだったのだ。
 葉子は夢中になっていて、部屋に入ってきた真緒の姿に
は気づいていなかったようだ。しかし、真緒の瞳には、月
明かりに浮かんだ葉子の行為の全てが映し出された。
 仲良く一緒に行動してきた友達の、普通は決して見せな
い姿は、真緒には刺激が強すぎた。
 下半身に奇妙な疼きを感じていた。 
 自分が動揺しているのに加え、女友達のオナニーを見て
興奮をしている自分に、真緒は戸惑っていた。
 自分のベッドに戻り、小刻みに震える手で自分の股間に
触れてみる。
 微かに湿った陰部が、速い鼓動を刻んでいるのが指先に
伝わってきた。鈍い快感に、背筋を電撃が走り抜ける。

 ああ・・・眠れなくなる・・・。

(つづく)

 


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