第三話 宮本真佐子/小田里美の巻
第一章 対照的な二人
第一章 対照的な二人 午後二時三十分、終業を告げるチャイムが鳴った。 「真佐子と里美の出会いは、中学に入ってからだった。 真佐子は家に戻ると母親の勤め先に電話を入れ、里美の家に泊まることを話した。 「いらっしゃい。わぁ真佐子、可愛い」
授業から解放される安堵感に、それまで静かだった教室内に微かなざわめきが起こる。誠に現金なもので、それまで眠気にドップリと浸っていた生徒たちもチャイムの音を聞いた途端、生気を取り戻している。気の早い者は既に教科書やノートを片付け始めている。
終業の挨拶が終わり先生が教室を出ていくと、それまで静かだった教室が生徒たちの声で一気に騒々しくなる。
生徒たちが挨拶を交わしながら次々と教室を出ていく。そのまま家路につく者、クラブ活動に向かう者と様々である。
宮本真佐子はノートを取るのが遅れていたので、ようやく教科書類をカバンに仕舞い始めたところだった。キラキラと濡れ輝く大きな黒い瞳、キュッとすぼまった小さな口元、おかっぱにしたサラサラの黒髪、畑はきめ細かく、透き通るように白い。この春から中学二年に進級した真佐子だが、顔立ちはまだまだ幼く、身体付きも小柄で華奢なため、時々小学生に間違われてしまう事があるくらいだ。
「真佐子、帰ろう」
すでに帰り支度を終えたクラスメートの小田里美が声をかけてきた。どことなくエキゾチックな感じのする茶色がかった瞳、ぽってりとした唇に、ツンと突き出した高い鼻、セミロングの栗色の髪が健康的な小麦色の肌にマッチしている。真佐子とは対照的にポッチャリとした体型で、大人びた雰囲気の女の子だ。
「うん.....お待たせ」
間もなく支度を終えた真佐子は、数人の友達と挨拶を交わすと里美と一緒に仲良く教室を出た。
偶然席が隣同士になった二人は、不思議なくらいウマが合った。得意な学科から好きなアイドルタレント、趣味など驚くほど互いに共通した点が多く、すぐに打ち解けることができた。だから二年生に進級して、再び同じクラスになった時は二人で抱き合って喜んだものだ。
しかし二人の外見や、性格は全く対照的だった。背丈こそほぼ同じくらいだが、真佐子は色白で華奢なのに対し、里美は健康的な小麦色の肌で、体型もポッチャリしている。性格も真佐子は大人しくどちらかというと内気だったが、里美は活発で姉御肌な面があった。
「真佐子、今日これから何か予定ある?」
帰路を歩きながら里美が尋ねてきた。
「ううん、別にないけど」
「うちパパが名古屋の方に単身赴任してるでしょ?でね、今日ママが届け物とかあって向こうに行っちゃうから、今日の夜誰もいないの。良かったら泊まりに来ない?」
「えっ、いいの?」
「うん、来てくれたら面白いもの見せてあげるわよ」
「何、面白いものって?」
「それは見てのお楽しみ」
里美は悪戯っぽく微笑むと、真佐子にウインクをして見せた。
「分かった。ママにOK貰って来る」
「用意が出来たらいつでも来ていいわよ」
「うん、それじゃまた後でね」
「バイバーイ」
二人は手を振ってそれぞれの家路に向かった。
前にも何度か里美の家には泊まっていることもあって、簡単に許してくれた。里美も真佐子の家には何回も来ていて母親もよく知っているし、親同士も付き合いがあるため、信頼は絶大なのだ。
電話を切ると、真佐子は自分の部屋へ行き、念入りに着ていく物を選び始めた。
いつになく、ワクワクした気分だった。久し振りの里美の家での外泊という事もあったが、里美が見せてくれると言った面白い物の事もあって、何かが起こるという予感がしていた。
着替えを終えた真佐子は、おかしな所がないか姿見に全身を映してみた。襟にフリルをあしらった純白のブラウスに、赤いタータンチェックのミニスカート、襟首の赤いリボンがアクセントになって、真佐子の愛らしさを一層際立たせている。
ツヤツヤ輝く黒髪に丹念にブラシを当て、小さな花をあしらったヘアピンを着ける。それでドレスアップの完了だ。
改めて鏡の中の自分を見つめながら、真佐子は不思議な気持ちになっていた。
まるで恋人の部屋を初めて訪ねるような気分なのだ。前に泊まりに行ったときにはこんな気持ちにはならなかった。
まさかね、女の子同士なのに.....。
突然涌湧き上がった説明のつかない感情を胸に仕舞い込み、真佐子は家を出た。
出迎えた里美は、真佐子の愛らしいファッションに感嘆の声を上げた。
里美の住まいは、閑静な住宅街の一軒家である。普通の4LDKだが、両親の趣味か、洋風でシックな雰囲気に統一されている。真佐子の家は公団のアパートなので、ここに来る度にこんな家に住めたらなぁと思ってしまう。
「本当に可愛いわ。まるでオリーブのモデルみたい」
里美は前から後ろから、真佐子のファッションを眺め、しきりに褒めそやす。
「里美ちゃんだって、大人っぽくって凄く素敵よ」
「有り難う、嬉しいわ」
里美は黒いタンクトップに、黄色のホットパンツというスタイルだった。グラマーな肢体がはっきりと分かる服装は、真佐子もドキドキする位セクシーだ。
里美の後へついて真佐子は家の中へ入った。
「今日はこっちなの」
「え、里美ちゃんの部屋じゃないの?」
真佐子が案内されたのは寝室で、どうやら里美の両親の部屋らしかった。部屋の中はカーテンが閉められていて、中は薄暗かった。里美が部屋の電気をつける。
八畳位の洋間だった。窓の方へ頭を向けるようにして、大きなダブルベッドが置かれている。
里美は真佐子を部屋に通すとすぐ出て行ったが、しばらくすると飲物を用意して戻ってきた。
「あ、椅子がないからベッドに座って。はいこれ」
「ありがとう」
真佐子は里美のくれたレモンティーのカップをすすりながら、部屋の中を見回した。白い壁に囲まれた部屋の中は落ち着いた雰囲気のインテリアで統一され、ベッドの横には、母親の物らしい真新しい鏡台と、小さなタンスが置かれている。その上にはアンティークな感じのする、電気スタンドが立ててある。正面には大画面のテレビがあり、その下のラックにはBSチューナーやビデオデッキ、DVDプレイヤーなどの最新のAV機器が入っている。
「ねえ、里美ちゃん。ここお母さんとお父さんの部屋なんでしょ?」
「うん、そうよ」
「いいの?勝手に入っちゃったりして」
実際真佐子たちが座っているベッドなどかなり高そうなものだ。飲み物をこぼしはしないかと結構気を使ってしまう。
「大丈夫よ、今日は二人とも帰って来ないし。それにいい物見せてあげるって言ったでしょ?」
「そう言えば何なの?そのいい物って」
「いいわ。見せてあげる」
里美はレモンティーを飲み干し、立ち上がるとラックの扉を開ける。
「これよ」
里美が真佐子に見せたのは一本のビデオテープである。
「いい?これ絶対内緒にしてね。とにかく凄いんだから」
「うん、でも何が入ってるの?」
「待ってて、今かけるから」
里美はテレビのスイッチを入れ、テープをビデオデッキにセットする。そして真佐子の隣りに座ると、リモコンで再生ボタンを押した。
「あっ、ああっ...」
真っ暗だった画面がパッと明るくなり、悩ましい女性の声が聞こえてきた。
「あっ!」
真佐子は思わず息を飲んだ。画面に映し出されたのが、女性のあの部分のアップだったからだ。しかもボカシが入らずクッキリと映し出されている。
「里美ちゃん、こ、これ.....」
「パパが隠してた裏ビデオよ。どう、凄いでしょ?」
「う、うん」
初めて見る刺激的な映像に戸惑いながら、真佐子は返事する。
「これからもっと凄くなるわよ。見てて」
里美はニッコリ笑うと、何事もないかのように画面に目を移す。
画面はゆっくりと引いていき、女性の全身を映し出していた。上半身だけセーラー服を身に着けた高校生位の少女が、椅子に腰かけてオナニーに耽っている。
「あああ...あんっ」
大きく開いた脚の中央に、淡い恥毛が逆三角形を作っている。少女は両手でその部分を刺激して、悩ましい喘ぎ声を漏らしている。と、再び画面はアップに代わり、濡れて光っているピンクの谷間を移し出す。指が行き交う度に微かにクチュクチュと秘肉が粘るような音をたてている。
裏ビデオ、話は聞いた事があるけれど、見るのは当然初めてだ。真佐子は動揺を覚えながらも、画面に目を引き付けられてしまっていた。
幼く見られてしまうことの多い真佐子だが、やはり年頃だけに人並みにセックスに対しては興味を持っていたし、オナニーだって既に経験済みだ。
真佐子は無意識のうちにビデオの少女に自分を重ね合わせていた。
画面では少女のオナニーが終わって、新しく現れた家庭教師の男に勉強を教わっている。最初のうちこそ真面目に勉強をしている風だったが、少女が男を誘惑するような素振りを見せ始め、雰囲気が段々妖しくなってきた。案の定、耐えきれなくなった男が少女に抱きついた。舌を絡ませ合い、唾液をまぶし合う濃厚なキスを交わす二人。その間に少女は段々と服を脱がされていき、やがてパンティ一枚の姿にされてしまった。
真佐子は横目でチラッと里美を見た。何事もないかのように画面を見続けている。
まだ幼さの残る胸の膨らみを揉まれ、パンティの上から股間の恥ずかしい部分を指で愛撫されて、愛らしい喘ぎ声を上げる少女。そんな場面に刺激を受けたせいか、真佐子は段々と変な気持ちになってきた。
どうしよう。あたし、何だか.....。
下腹部の奥から熱い物が溢れ出て来るのが自分でも分かった。きっと画面の少女のように、パンティには溢れ出る蜜で染みが出来ているはずだ。
「あっ!...」
真佐子は思わず叫び声を上げていた。愛液に濡れてピンクに光る少女の秘密の谷間がアップになり、男がそこを舌で舐め始めたからだ。
そんな所を舐めるなど、真佐子には思いもよらぬ事だった。興奮の余り口の中がカラカラに乾き、胸が高鳴って息苦しいほどだ。
ふと視線を感じ、真佐子は横を向いた。すると里美が潤んだ様な瞳でじっと見つめている。
「どうしたの、里美ちゃん。あっ...だ、ダメッ!」
制止する間もなかった。里美はいきなり真佐子の肩を抱き寄せ、アッという間にスカートの中に右手を滑り込ませてきた。その手はパンティのゴムをかい潜って、真佐子の恥ずかしい部分を捕らえる。
「やっぱり、真佐子のここ、ビチョビチョ」
里美は中から手を抜くと、真佐子の目の前で指を付けたり離したりした。愛液に濡れた指が糸を引き、ネチャッという音をたてる。
「さ、里美ちゃん。だって.....」
どんな顔をすればいいのだろう。真佐子は恥ずかしくて里美の顔をまともに見る事が出来なかった。
「恥ずかしがらなくていいのよ、私だってそうだもん」
里美は優しく真佐子の手を取ると、自分の下腹部へ導いた。熱いヌルヌルした物が指先に触れる。
「里美ちゃん.....」
「ねぇ真佐子、一緒に気持ちいい事しよう。本当はね、あたしずっと真佐子ちゃんとこうしたかったの」
里美に潤んだ瞳で見つめられ、真佐子の胸はキュンと疼いた。言われてみれば、真佐子だって里美に友情以上のものを感じる事がたびたびあった。レズビアンと言われてもピンと来ないが、そんな事はどうでも良かった。恋人との初体験を迎える様な気分だった。
「里美ちゃん、あたしも里美ちゃんが好き.....」
里美を見つめ返す真佐子の瞳も潤みを帯び、キラキラと光っている。胸に何か熱いものが込み上げてきて、真佐子の胸をキュンと締めつけた。
「嬉しいわ。じゃ、いいのね」
里美の言葉に真佐子は無言で頷いた。
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