『僕のエロ小説物語』
            
 
 1、ツッコミは秋風と共に

 静かな喫茶店の中で、その男が分厚く束ねられた原稿
用紙をめくる音だけが大きく響いていた。


『……青年はある少女――中田あすみに対してのレイプ
計画を確認していた。その計画とは、まず学校の下校時
に車でそっと近づき、道を聞くふりをしてクロロホルム
を嗅がせると云うシンプルなもので、彼の頭の中では何
度も綿密なシュミレーションを行われており、その成功
にもかなりの自信があった。あとは実行だけと云うこと
で、彼は少女の通う中学へと車を走らせた……』


「! ちょっと待てよ」
 暫く黙って原稿用紙に目を走らせていたその男が、急
に声を荒げた。
 突然の大声に僕は慌てて周りを見回した。今は平日の
昼間である。幸い人気の疎らな店内には、こちらに注目
するような物好きな客もいないようだ。
「おたくさぁ〜これはないと思うぜ」
 コンパで一番のブスを押し付けられたような渋い表情
を浮かべ、男は僕が注文したコーヒーをぐぃっと飲み干
した。
「って言うか、中田あすみって誰?」
 うっ、いきなりアイドル小説として暗黙の了解の部分
を指摘されるとは思わなかった。だってそう云う小説は
登場するアイドルのことを読者の側も知っていると云う
前提で話が始められるから…って云う説明はこの際どう
でもいい。そう、そんな事はどうだっていいんだ。
「おい、あんた誰なんだ? 大体さぁ〜何で偉そうに人
の小説を勝手に読んでんだよ!」


『……綿密に練られた誘拐計画はまんまと成功した。隠
れ家へと向かう車の後部座席には、ジュニア・アイドル
として有名な中田あすみが横たわっている。青年はこの
誘拐のために製薬会社でアルバイトをしてクロロホルム
を手に入れたのだ。すやすやと寝息を立てている少女を
振り返り、まず計画の第一段階が無事成功したことに彼
もホッと胸を撫でおろした。
 間もなく車は、彼がこの日のために用意した廃屋の前
に到着した。……』


 そう、こいつ一体誰なんだ? ちょっとトイレに行こ
うと席を立ち…暫くして自分の席に戻ってみたら、全く
知らない男がテーブルの上に置き忘れた僕の書きかけの
小説を熱心に読んでいたのだ。そのあまりに堂々とした
態度に気後れして声を掛けるタイミングを失っていたの
だが、まぁ〜とりあえずは会話のきっかけが掴めて本当
に良かった……って全然よくない!
「まぁ〜名乗るほどの者じゃないけど、ちょっと通りか
かったら原稿用紙の束があったもんだからパラパラっと
めくってたら、おたくが来たわけさ」
 全く説得力のないその説明であるが、せっかくの貴重
で有意義な創作の時間を、こんな変な奴に邪魔されたく
はない。
「ま、何でもいいけど、退いてくれないかな? そこは
僕の席だし…大体さぁ〜何で人のコーヒーを勝手に飲ん
でんだよ!」
 一見したところは背広を着た普通のサラリーマン風の
その男であるが、僕としてはあまり関わり合いになりた
くないタイプである。
「まぁまぁ〜コーヒーの一杯や二杯でケチケチしなさん
なっ。――それよりさぁ〜、この中田あすみって誰?」
 男は悪びれるでもなく気楽にタバコをふかしながら、
まだそんな呑気な質問をしてくる。
「ほら、NHKで毎日夕方にやってる…天才てれびくん
ワイドって番組で、妙に一人だけ背のデカイ女の子が出
てるだろう? あれだよ」 
 ――あぁ〜僕は何を丁寧に説明しているんだ…。
 しかし、男は納得したようにうなづいている。
「あ〜その番組なら知ってる」
 よかった、案外と物分かりいい男のようである。
「ダチョウ倶楽部が司会してる番組だよな?」
 僕は飲みかけたコップの水を思わず吹き出した。
「お前、いつの時代の話をしてんだよ? もうとっくの
昔にそんな司会者いねぇ〜よ!」
「でも、この前の紅白歌合戦に白組の応援で出てたよう
な気が…」
「絶対に出・て・な・い!」
 だんだん頭が痛くなってきた。


『……まだ薬で眠ったままのあすみの体を地下室の湿っ
たベットに下ろし、青年は大きく深呼吸をした。少女が
眼を醒ます前に全てを終わらせなければならない。
 気弱で内向的な彼にとって、眠っているはずの少女が
急に眼を醒まし逃げ出そうとすることが一番怖かった。
 13才という年齢から考えてもベットに横たわり眠っ
ているその姿はかなり大柄に思えたが、その公称167
cmの立派な肉体を自分だけのモノに出来る興奮の方が
彼の恐れや迷いの気持ちを大きく上回っていた。
 彼は止め度なく震えるその手で、少女の胸の膨らみに
そっと触れてみた。……』


「でもさ、中田…あすみだっけ? そんな聞いたことも
ないガキの名前出されたってさぁ〜、読んでる野郎には
分かりっこないって」
 まぁ〜確かにコイツの言うことも一理あるかもしれな
いな。僕も少しはその言葉に納得した。
「分かった、その辺りはもう少し書き加えた方がいいか
もな……って何を勝手にサンドイッチなんか注文してん
だよ!」
 まったく…油断に隙もあったもんじゃない! しかし
男はそれを気にする素振りもなく、僕にとって一番聞か
れたくない嫌な質問をしてきた。
「ところでさぁ〜何でおたく、昼間からこんな喫茶店で
エロ小説なんて書いてんの?」
「うッ…」
 思わず言葉につまってしまった。
「まぁ〜会社でもリストラされて、どうせなら組織に縛
られない仕事でもしようなんて変な理想を抱いちまって
それならばって、手っとり早くエロ小説なんか書いてる
わけでもないだろうけど……」
 ――男の適当な推測は、ほぼ正解であった。
 つまらない事で上司と喧嘩をして会社を辞め、もっと
自分に合った仕事を模索した結果…小説家と云う仕事を
急に思い付き、まずは小手調べにと安易な気持ちで書い
てみた小説をこの男に発見されたのだ。


『……青年は少女の柔らかく温かい胸の膨らみを堪能し
ていた。すでに22才と云う立派な成人男性でありなが
ら女性と殆ど交際をしたことのない彼にとって、眼の前
で安らかな寝息をたてている13才の少女の乳房は、嘆
息が出るほどに魅惑的で慈愛に満ちた存在に思えた。
 誰にも渡したくない――これは自分だけのモノだ。
 ずっと自分を押し殺し生きてきた彼の心は、天使のご
とく愛らしい寝顔を見せる少女――あすみを目の前にし
て少しづつ狂気の度合いを強めていった。……』


「お〜〜い、いつになったらエッチなシーンが始まるん
だよ!」
 青年があすみの胸を揉みしだき悶々とするシーンまで
勝手に読み進め、男は原稿用紙からパッと顔を上げて僕
をたしなめるように睨んだ。
「あのなぁ〜こう云う話はすぐにSEXをやっちゃった
ら面白くないの。少しくらい冗長な文章で引っ張って読
者をモヤモヤとした気持ちにさせてから、女性が淫らな
快感に目醒める描写を入れて雰囲気が盛り上がったとこ
ろで、おもむろに……」
「もうどうでもいいから、早くヤラせろよ!」
 まったく…この男の頭の中にはエロ小説における文学
的な官能表現を楽しむと云う考えはないのか?
「あ〜分かったよ。もう2枚くらい先を読めば、Hな描
写が始めるから――」
 いつの間にか、男が勝手に小説を読んで文句を言う事
をかなり慣れてしまい、もう真面目に反論することさえ
投げやりになっている自分に気づいていた。


『……上半身を裸にしたあすみの体に覆いかぶさり、青
年はその汚れを知らない幼乳を、荒れて乾ききった唇で
丹念に愛でていた。心なしか、静かに寝息を立てている
はずの少女の吐息が、彼の愛撫により甘い湿り気を帯た
ものに変わり始めているようでもあった。
 淫らな口辱によって赤く染まったあすみの乳房は、そ
の大人並みの立派な体格にも関わらず発育途中であり、
片手で鷲掴みにしてもかなりの隙間ができるくらいの半
お椀型で小さく可愛らしいモノであった。
 その鮮やかなピンクに色づいた乳輪部分を、青年が泡
立つ唾液に塗れた舌先で軽く砥め擦ると、眠っているは
ずの少女が切なく哀しいような表情になるのが、余計に
抑えきれない欲情を掻きたてた。
 あすみの肉感的な唇から微かに洩れる小さな喘ぎ声に
満足気な笑みを浮かべながら、青年は更に乳房を……』


「かぁ――っ、もうオッパイなんてどうでもいいんだ。
一体いつになったら、SEXするんだよ! 早くヤッち
まえばいいだろ」
 男は周りを気にすることなく思いきり大声で叫ぶと、
テーブルに原稿用紙を叩きつけた。
 いい年をした大人が、真っ昼間の喫茶店で人目もはば
からず叫ぶような言葉ではない。
「わ、分かったから静かにしろよ。もう少し我慢して読
み進めてくれればSEXシーンも出てくるからさ…」
 ひどく下手に出ている自分自身を感じたが、また大声
でも出されて恥ずかしい思いをするのは御免である。
「そんなにオッパイの話が書きたければ、今度は乙葉の
話を書けよ。知ってるだろう? あの胸のデッカイ乙葉
だよ。ほら、グラビアによく出てる――」
 男のその言葉を聞いて、もっと頭が痛くなってきた。
 確かに乙葉は知っているけど、何故ここで乙葉の名前
が出てくるんだ?
「やっぱり乙葉のオッパイは最高だよなぁ〜。ぜひ今度
は彼女を主役にして物話を書いてよ」
「はいはい分かりました。だから、もう間をとばしても
いいから、SEXシーンだけを読めよ――」


『……青年は白いショーツを剥ぎ取られ無惨にも露わに
なったあすみの秘割れに、己の硬直した肉棒の先端を軽
く押し当てていた。柔らかい恥丘に広がる疎らな産毛も
その下の細いスリットも、その稚拙な愛撫と少女の僅か
な愛液によってほんのりと濡れているのが分かった。
 彼はゆっくりとペ○スを少女の処女孔に埋め込んでい
く。あすみの口からは戸惑ったようなか細い喘ぎ声が洩
れる。秘裂の中で直に感じる温かさに何とも言えない安
堵を感じつつも、欲望に灼けた硬直は一気にヴァージン
ホールの中へと飲み込まれていった。
「くっ、アアア―――ッ!」
 まだ眠ったままのあすみの口から、悲痛な叫び声が上
がった。
 生まれて初めて味わう処女膜が破れた衝撃に、少女の
秘芯が痙攣するように激しくひくつくのが感じられた。
 あすみの美しい顔が苦痛が歪む様子に青年は複雑な笑
みを浮かべ、結合部分の隙間からわずかに溢れ出る赤い
鮮血を潤滑油にして、ゆっくりと小刻みなピストン運動
を始めた。
 理不尽な痛みに耐えるように、あすみは頭を左右に大
きく振り、手足は痙攣したようにピクピクと動いた。
 あおむけに眠っている少女のプッシーを灼けた硬直が
何度も貫いていく。そのたびにあすみの口から、しゃく
りあげるような喘ぎ声が洩れた。
 ――女性とのSEXの経験に乏しい彼にとって、もう
我慢の限界が近づいていた。
 クチュッ、クチュッ、クチャッ……
「むあああ―――ッ!」
 彼の中で強烈な何かが爆発した。
 
 ドピュッ、ドピュッ!
 
 青年のペ○スの先から、抑えきれない熱い液があすみ
の胎内に注ぎ込まれた。

 ――息を荒らく弾ませたまま今だ夢の世界を漂う少女
を横目に、彼は缶コーヒーを一気に飲み干した。
「もう少し僕に付き合ってよ、お願いだから……」
 そう言いながら青年は、あすみの長い黒髪を愛おしむ
ように優しく撫でた。
                       終』 


「やっと終わった。――まぁ〜こんなもんかな。何だか
物足りない気もするけど、初めて書いたにしては面白か
ったと思うよ」
 男は勝手な感想だけを残し、さっさと帰ろうとする。
「おい、何で初めて書いたって知ってんだよ? そんな
事はまだ一言も……」
「そんなのちょっと読めばすぐに分かるさ。文章の表現
は稚拙だし、所々に本屋で売ってる官能小説の受け売り
みたいな書き方が見えるんだよ。大体さぁ〜あすみって
云う子が一体どんな女の子なのか最後まで理解できない
もの。もう少し作品の数をこなしたら、もっとまともな
話が書けるようになるかもな――」 
 急に最後になって、とても的を獲た率直な意見を言わ
れ、僕は返す言葉を失ってしまった。
「じゃぁ〜まぁ頑張れや!」
 追いかける間もなく男は喫茶店を颯爽と出ていき、冷
たい秋風の吹く街を人ごみの中へと消えていった。
 呆然と立ち尽くすばかりの僕は、無造作にテーブルの
上に置かれた伝票にふと視線を向けた。
「ん? サンドイッチ=580円、コーヒー=250円
……って、くそぉ〜あの野郎、今度見つけたら絶対タダ
じゃおかねぇ〜ぞ!」
 
 これが彼との初めての出会いであった。
                      つづく

 


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