『芽以・劇団哀奴留(アイドル)』
  第一章 罠に堕ちた哀奴留  
 
第一章 罠に堕ちた哀奴留

※※ 移籍 ※※

『劇団社長・突然の失踪』
 スポーツ新聞の片隅に、芽以が所属する劇団の社長が、多額の借金を残して突然行方をくらました記事が載った。
 黒河芽以は今年中学生になったばかりの十三歳。母親に勧められて幼い頃から劇団に所属して演技を磨いてきた。最近では端麗な容姿と物怖じしない性格が認められて、映画やテレビドラマに出演するまでになっていた。
 そんな芽以達母娘の元へ失踪した社長の矢沢明から手紙が届いた。
 事務所を潰してしまったことについては触れられていなかったが、芽以の今後の芸能活動については狭山芸能という事務所に委任しているので心配しないようにと書かれてあった。
 そしてその数日後、その狭山芸能の社長と名乗る男が数日の内に黒河家を訪れて来た。
 狭山が言うには、矢沢は同業の狭山興業にも多額の借金があり、その返済の代わりに芽以の営業権を譲渡したと言うことらしい。
 せっかく娘がジュニアアイドルとして有名になりかけていた時に、社長の失踪とともに劇団がつぶれたと聞いて心配していた両親は、渡りに船とばかりに狭山芸能と再契約を済ませてしまった。
 給料制のギャラなどは以前の事務所と同じ条件だったし、新しく設立するミュージカル劇団の主役級の団員として招きたいという条件は、魅力的なものだった。新しい条件として、しばらくの間は劇団の寮に入って、本格的な踊りや演技のレッスンを受けることになったのも、将来的にはスター女優になることを夢見る両親にとって、願ってもないことであった。
 狭山興行の子会社である狭山芸能の事務所は渋谷にあり、新劇団の事務所も兼ねていた。その事務所にほど近いところに、芽以が引っ越してきた劇団の寮がある。
 寮といってもビルの中にあるだけで、部屋の作りはワンルームマンションと同じである。そのビルは、一、二階が稽古場になっており、三階が事務室と食堂に物置、四階から上が寮になっていた。
 寮への引っ越しには劇団の先輩達が出迎えてくれたのだが、その中に顔見知りの人物が居ることを知って、芽以は途端に暗い気持ちになった。
 芽以が所属する予定になっている劇団の座長であり、芽以の演技指導を受け持つ教師でもある斉藤は、三十代半ばであろうか、がっしりした体格で精悍な顔つきの男であった。
 全員、スポーツマンを思わせる立派な体つきとは反対に、芽以のことを舐めるように見詰める陰湿な目つきが気になったが、それより芽以がショックを受けたのは、一人だけの女性のだった。
「お久しぶりね、黒河さん。せっかく有名になったのに劇団自体がなくなっちゃうなんてご愁傷さま。お陰でこんな劇団に移籍させられるなんて、ご同情申しあげるわ」
 皮肉たっぷりに挨拶したのは、葛城アヤという名の女優で、前の劇団では芽以の先輩であった。その後アヤは退団してしまったのだが、それまでの間、何かといえばアヤに虐められていた芽以にとって、彼女は最も嫌な存在であった。
 そのアヤが今度は教師役として目の前に現われようとは、芽以にとって不運な偶然としかいいようがなかった。
『今さらしょうがないわよ。契約書にサインしてしまったんですもの』
 芽以は自分の胸に言い聞かせるように心の中で呟いた。
 芽以が越してきたのは土曜の午後だったが、荷物は先に届いており、タ方までには引越しの後片づけも一段落していた。
「新しいレッスンルームを案内するから、レオタードを持ってついてらっしゃい。九時過ぎには狭山社長や理事の寺井さんが、貴女の演技を見に来られる予定だから準備をするのよ」
 夕食を済ませて部屋の片付けが終わったところでアヤに声をかけられた芽以は、レオタードやバレエシューズを入れたスポーツバッグを持ってくると、アヤの後について裏階段で二階に降りた。
 ドアを開けてレッスンルームに入ると、思いのほか広々とした部屋は、梁が剥き出しになった天井も高く、パイプが組まれていたり滑車や鎖が垂れていて、舞台を組んだ本格的な稽古もできるようになっていた。
 レッスンルームの隅には十字架のような柱や、背が尖った台やスチール性のベッドの様な物まで置いてあったが、何も知らない芽以にとッは、舞台道具にしか見えなかった。
 アヤがスイッチを押すと、天井のダウンライトや壁際の床に埋められたフットライトがいっせいに光を放って、窓のないレッスンルーム内は真昼のように明るくなった。
「他の階の邪魔にならないように、ここは防音完備になってるの。正式の入口は反対側のエレベーター寄りだけど、この裏口は寮の部屋から直接来られるし、いつでも使える様になってるから」
 説明しながらレッスンルームを横切ったアヤは、更衣室やシャワー室に芽以を案内した。
「ここで着替えて、準備をしなさい。まだ一時間以上あるから、踊りの練習でもすればいいわ。私は三階に戻るけど、何かあったら連絡しなさい」
 芽以に声をかけたアヤは、ステレオを自動にセットしてレッスンルームから出て行った。
「行っちゃった」
 首をすくめて無邪気に舌を出した芽以は、さっそく更衣室で自前のレオタードに着替えてレッスンルームに出ていった。
 前の芸能ブロダクションよりはるかに広く、設備も整ったレッスンルームは、芽以のそれまでのモヤモヤした不安を吹き飛ばした。三度の食事よりも踊りの好きな芽以は、ステレオのリズムに乗せてのびのびと跳躍し、鮮やかに回転した。
 眩しいライトが、まるで華やかな舞台で観客の注目を浴びながら主役を演じているような錯覚を芽以に抱かせる。
 もっとも、それは錯覚とばかりは言いきれなかった。正面の鏡の後ろでは、狭山をはじめ理事たちが、新しい生贄の瑞々しい肢体に熱っぽい視線を注いでいたのだ。
 三十分ほどしてステレオがとまると、芽以は更衣室で着ているものを脱ぎすてて隣りのシャワー室に入った。
『素晴らしいレッスンルームね、寮もワンルームマンション並だし、前の劇団より待遇がいいわ……葛城さんが先生だなんてやだけど、これもスターになるためだから、がんはらなっちゃ……』
 汗を流した芽以は、タオルで身体を拭きながら更衣室に入ってきたが、そこに脱いだはずのレオタードやタイツはもちろん、着替えの衣類やスポーツバッグまで姿を消しているのに気づいて愕然となった。
『困ったわ。誰かが持ってったのかしら。まさか葛城先生?』
 蒼ざめた芽以は、電話があったのを思いだした。
『そうだわ。あの電話で三階の事務室に連絡するしかないわ……とにかく、何か着るものを持ってきてもらわないと……』
 小さなタオルを腰に巻きつけた芽以は、更衣室のドアをそっと開けて、人気がないのを確かめてからレッスンルームに出た。
 小走りにレッスンルームを横切ろうとする芽以の背後から、不意に声がした。
「どこに行の、芽以ちゃん。服ならここにあるわよ」
 ギョッとして振り向く芽以の前に、衣類やバッグをかかえたアヤが、ドアの陰からのっそり現われた。
「あ、アヤさん……そのバッグ……着替えも……」
 スポーツバッグが見つかってほっとした芽以は、両手を胸に交差させたままアヤにそう言って、返してもらおうと近づいた。
「だから……」
「えッ……」
 嘲笑するようなアヤの冷たい声に、以前の劇団でアヤに虐められていた記憶を蘇らせた。
「ああ……アヤさん……」
「アヤさんじゃなくて、今は貴女の先生よ……」
 名前を呼ばれたアヤは、強い口調で言い正した。
「ごめんなさい、先生……ああ、服を……服を返してください……」
 芽以はまたアヤが悪ふざけをしているものだと思って、丁寧に頼んだ。
「服?……ああ、これね……ふーん、ジュニアアイドルとか呼ばれて、一人前にアイドルしてると思ったのに、子供みたいなパンティを履いているのね……」
 アヤは憎々しげに言いながら、白い綿のパンティを広げながら言った。
「ヒィ……嫌ッ……見ないで……パンツを返して……」
 汗に汚れた下着を見られて、芽以は顔を真っ赤にしながら叫んだ。小さなタオルを腰に巻いただけの姿でなければ、アヤに飛びかかっていただろう。しかし下手に走ればタオルが落ちてしまいそうで、立たずんだまま哀願する。
「あら、これは何のシミかしら……」
 アヤは芽以が動けないことをいいことに、パンティの股間に当たる部分を裏返しては、拡げて見せた。
「やだぁ……やめて……かえしてよぅ……」
 芽以は左手で胸を隠して、アヤから下着を奪い返そうと右手を伸ばした。しかし、アヤはスルリと身をかわす。腰のタオルを気にしながら、ヨタヨタとついていくと、突然、その前でエレベーター側のドアが開き、二人の男が出てきて立ち寒がった。
「キャアアーッ……い、いやあッ……」
 芽以はほとんど裸の姿を男達に見られて、悲鳴を上げるとその場にしゃがみ込んでしまった。異性に対しての羞恥心が一番強い年頃の芽以にとって、同姓のアヤにならともかく、腰にタオルを巻いただけの裸を男の人に見られるのは、死ぬよりも恥ずかしいことなのだ。
「なんだもう裸にしてるのか。準備がいいなぁ……」
 男の一人が言った。縄の束を一肩から担いでいるその男は、座長で教師役であるはずの斉藤だった。もうひとりは知らない男で、ビデオ用の三脚を肩からさげ、デジタルビデオカメラと普通のカメラを手にしていた。
「な、なんなの……ああ、見ないで……お願い、出ていって……」
 芽以は恥ずかしさのあまり泣きだしそうになりながら、悲痛な声で叫んだ。
「そうはいかないわ……二人とも可愛い芽以ちゃんを虐めたくって仕方ないって言うから、私が呼んだのよ……貴女にはたっぷり泣いてもらいますからね……」
 うずくまったまま、できるだけ恥ずかしい処を隠そうとしている芽以に、残忍な笑みを浮かべたアヤが言うと、
「へへへ、まずは素っ裸になってもらおうか……早くそのタオルをとるんだ……」
 縄を手にした男が芽以を鏡張りの壁際に追いたてながら言うと、もう一人の男が、その光景をビデオカメラで撮影しはじめる。
「ど、どうして裸にならなきゃいけないのよう……これ以上近寄らないで……ああ、こんな姿……ビデオに撮らないで……」
 両手で幼い乳房を隠して震えだした芽以は、それでも気丈に叫んだ。
「フフフ、貴女も中学生になったんだから、これからは女の子として虐めてあげるわ、死にたくなるような恥ずかし想いをさせてやるから……」
「ヒイイーッ……ど、どうして……どうして、こんな酷いことをするの……私が何をしたって言うのよ……」
 前の劇団にいた頃から、アヤには虐められてきた芽以だったが、これほど酷い仕打ちを受けるとは、想像にすらしなかった。
「何をしたって……惚けるのもいい加減におし……貴女に私がどれほど煮え湯を飲まされたか、忘れたと言わせないわ……」
 突然、アヤが怒りを露わに大声で怒鳴ると、
「ああ……そ、そんな……わたし……」
 と、芽以はアヤの恐ろしいまでの形相に、震え上がりながら言葉を詰まらせる。そんな幼気な少女を見下ろしながら、アヤが殺気だった声で続けた。
「フン、白を切るなら言ってあげるわ……」
 そうして、幼い美少女によって狂わされた自分の青春を、語り始めたのだった。

 アヤは劇団の中でも一、二を争う演技派の女優であった。そしていつか主役に成ることを夢見て、努力を重ねていたのである。
 そんなときに、まだ小学生の芽以が入団してきたのであった。
 人見知りしない性格と、その可憐な愛嬌で、芽以は劇団のみんなから愛されるようになった。
 そしてそれは、座長や事務所の社長を始め、劇団の経営者達も同じであり、芽以は、たちまち劇団のアイドルになっていった。
 しかし、アイドルになったと言っても所詮小学生の演技力は、実力こそが全てと演技を磨いてきたアヤの眼には、学芸会のお遊戯程度にしか映らなかった。
 そんな芽以が、次の公演の主役に決まったのである。
 しかも、次の公演と言えば、アヤが主役となったミュージカルを公演する予定だったものが、急遽変更されたのだ。
 やっと主役になれると思っていたアヤにしてみれば、青天の霹靂である。
 しかも、密かに恋心を抱いていた若き演出家の三宅まで、芽以にぞっこんになり、完成間近だった脚本を全て書き直して芽以のために新作を起こしたのであった。
『好きだと云う事を告白すれば、三宅の心を自分に向けられる……』
 そう思い、意を決した愛の告白も、ロリコン趣味だった三宅に、にべもなく断られたアヤは、主役への夢と共に恋まで失ったのだ。
 それが芽以に対するいびりとなっていった。アヤは幼い芽以をいわれもないことで、何度も泣かしたのである。
 そして決定的な事件が起きた。アヤとプロデューサーとの不倫事件であった。
 十人並みの容姿しかないアヤにとって、主役の座を手に入れるためには、人並み外れた努力をしなくてはならない。それでも容姿が優先される世界では、制作者側の人間に気に入られないと駄目なの事が解った。
 若く男前の演出家への恋は、計算高いアヤにとって一石二鳥をねらったものだったが、それを芽以に邪魔されて、アヤはプロデューサーを誘惑するという、安易な方法を選んだのだった。
 しかし、それさえも芽以に邪魔されてしまったのだ。
 家族で食事に訪れたホテルで、芽以はアヤの不倫の現場を目撃してしまい、不倫とはいかなるものかも知らない芽以は、楽屋で無邪気にしゃべってしまったのだ。
 すでに噂になりつつあった不倫疑惑は、芽以のおしゃべりで火がついてしまった。
 スキャンダルを恐れる劇団側は慌ててアヤを追放した。有名な劇団を追われたアヤは役者への道も閉ざされ他も同然であった。
 芽以としては悪気があってしゃべったわけではないのだが、一度ならずも二度までも芽以に邪魔され、挙げ句の果てには演劇界から追放されたアヤにとっては、幼い芽以は憎んでも憎みきれない存在になった。

「どう、自分がいかに罪深い女だって事を思い出したかい……」
 恨みの全てを言い切ったアヤが、全裸のまま震えている芽以に怒鳴った。
「そ、そんな……知らなかったんです……それに……私が、悪い訳じゃ……」
 アヤの不幸を聞かされて同情こそするものの、それを全て自分のせいだとされるいわれは無かった。これでは逆恨みもいいところである。
「フン、まだ解ってないようだね……この劇団に移籍してきたのが運の尽きよ……女の子に生まれてきたことを後悔するぐらい、いびり抜いてあげるから、覚悟をおし……」
 アヤは、芽以に向かって言い放つと、今度は縄を手にした男に向かって、
「早くこの生意気な小娘を縛り上げてしまいな……うんと恥ずかしい格好にね……」
 と、哀れな少女を縄で縛るように命じた。
「へへへ、まってました……さあ、おとなしく裸になりな……おじさんが、うんと恥ずかしい姿に縛ってあげるよ……」
「ヒーッ……嫌よッ……縛られるのなんて……ヒイイーッ……来ないで……恥ずかしいッ……見ないで……」
 じわじわと男達に詰め寄られて芽以は悲鳴をあげると、男たちの間をすり抜けて裏口のドアのほうへ逃げた。
「ほお、意外と威勢がいいじゃないか。やっぱり縛りあげないと観念できないらしい」
 男達は芽以がドアのところまで逃げても、余裕の口調でふざけている。それもそのはずだ、芽以がドアを開けようとしても鍵がかけられていて開かなかった。
 逃げ場を失った芽以に、再びアヤ達が近寄ってくると、芽以は悲鳴をあげて正面の鏡のほうに逃げだした。
 タオルを腰に巻いただけの裸で逃げ惑う芽以を、アヤと縄を手にした男が追いまわし、もう一人の男が、逃げ惑う芽以をビデオカメラで撮影している。
 露わな胸を手で隠し、腰のタオルを押さえながら逃げまわる芽以を追いつめるのは容易なはずであった。だが、撮影効果を考えてのことか、男たちは、猫が鼠を嬲るように余裕をもってネチネチと追いまわした。
「腰にタオルなんか巻いてるから、早く走れないのよ。ほら、素っ裸で逃げてみな……」
 アヤが追いすがってタオルを荒々しくむしりとり、
「もっと早く走らんと、捕まえちまうぞ」
 全裸にされた少女のプリプリ弾むお尻を、斉藤が後ろから縄の束でピシャッと叩く。
「ヒィッ……た、助けて……」
「だ、誰か来て……ヒィッ!」
 突然の悲劇に、芽以は哀切な悲鳴をあげて、空しく救いを求めつづけるしかなかった。


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