『芽以・劇団哀奴留(アイドル)』
   序章 悪魔の企み    
 
序章 悪魔の企み

 狭山泰造が社長を務める狭山興行は、戦前から続く老舗の興行主で、都内で多くのストリップ劇場や風俗店を経営する傍ら、アダルトビデオやヌード写真集を出版したり、またそれらのタレントを管理するための芸能事務所まで持っていた。
 しかし、裏では裏ビデオを作成したり、非合法な買春施設や素人やタレントのたまごを誘拐してマゾ奴隷として調教し、会員に提供する秘密SMクラブまで経営する準暴力団的な会社であった。
「おい、佐川先生はまだ上がってこないのか」
 秘密SMクラブの事務室で、狭山が部下に尋ねた。
「ええ、もう丸一日籠もりっきりですよ……」
「あの先生にも困ったものだ……これじゃ女の子をいくらあてがってもきりがない……」
 先生と呼ばれた佐川宗一郎は、表向きはスポーツ振興財団の会長であるが、裏では政府をも動かす裏社会の総帥であった。戦時中、特高と呼ばれる秘密警察で思想犯に対して数々の拷問を行ってきた彼が、非情なサディストになっていったと云うことは、仕方のないことでもあった。
 当時、特高の尋問は醜惨を極め、容疑者本人だけではなく、その家族や恋人までが拷問の対象となった。特に妻や恋人そして娘に対する拷問は悲惨なもので、肉体的な苦痛よりも性的に辱め陵辱することが多かった。
 そして一度でも特高の尋問を受けた者は非国民と呼ばれ、人間としての尊厳を剥奪されてしまうのだ。特高の拘置所で嬲り尽くされ、命をおとす者はまだ幸せと云えた。
 非国民の烙印を押され特高から戻された者は、町の有力者の保護観察下に置かれ、性奴隷のように町中の人間から虐待を受けたのである。
 たとえそれが女になりきらない幼い少女であったとしても、保護観察官や自宅尋問と称してやってくる特高の警察官に性的奉仕を強いられのである。そしてもはや人間ではない彼女たちは、たとえそれが町中の人前であろうとも、公然と恥部を晒され陵辱されたのであった。
 当時、特高が持つ権力は絶対的なものであった。多少の冤罪事件は闇に葬られ、体制を乱す大罪人を検挙するためには、多少の無実の人間の誤認逮捕ごときは、問題とされなかった。
 そんな状況下では、好みの女や少女を、全くいわれのない罪を着せて性的に嬲り抜き、人前で辱める特権を行使する者までいた。佐川もその一人で、清楚な女学生を何人もその毒牙にかけてきたのであった。
 その異常な快感を覚えた佐川が、特高時代に不法に没収した財力を元に、戦後裏の世界で暗躍したのも、すべて自分の性癖を満足させるが為であったのかもしれない。
 そして、そんな佐川と、非合法に女の性を売り物にする狭山とが、裏の世界で結びつくのは当然とも言えた。裏社会での営業権を保証される身代わりに、笹山はタレント志望の家出娘を言葉巧みに騙しては、佐川への生贄として提供してきた。時には、可憐な少女のいる家庭を借金地獄に落とし、その少女を取り上げることさえやった。
 そして、佐川から狭山へとんでもない注文が出されたのだ。いくら可憐な少女をあてがあっても、それだけでは満足できなくなったらしい。
 齢八十を越えた佐川だが、未だに性的能力を失っていなかった。しかし、その衰えは顕著なもので、普通のセックスでは勃起することすらなくなっていたのだ。
 若いころに経験した倒錯的な陵辱こそが、失った性欲を奮い立たせることを可能にしていた。それだけに陵辱される対象への注文が、昂まっていったのかもしれない。
 今すでにテレビや雑誌で有名になっていて、万人が認めるタレントを性奴隷として嬲り抜きたいと言い出してのである。
 しかも対象として汚れを知らない少女を要求したのであった。世間ではジュニアアイドルと呼ばれる中学生以下の美少女タレントで、まだ大人の身体になりきらない少女である。
 そして選び出されたのが、黒河芽以であった。
 芽以は子役役者として劇団に所属し、その可憐な容姿から舞台だけではなくテレビや映画でも活躍するジュニアアイドルである。
 まだ中学生になったばかりの芽以だが、最近では写真集も発売され注目度ナンバーワンの美少女であった。
 将来を切望される美少女が、その本人も知らぬ間に過酷な運命が決定されてしまったのである。それは、キスさえも知らない芽以にとって、死ぬよりも恥ずかしく恥辱に満ちた運命の始まりであった。


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